今回はリクルートホールディングス内定者、東京大学、学際情報学府の修士二年生である前島恵さんにインタビューさせて頂きました。 学生時代に二度起業し、リクルートへの就職を選んだ彼の"生き方"について迫りました。
現在運営しているCredoを始めたキッカケ
ーーCredoを始めようと思ったキッカケを教えてください
実は以前から個人でブログを書いていたり、Webメディアには興味があったんです。2013年の東京都知事選の時に、政治に関する話題が結構好きなので候補者に関する解説記事を書いてみました。候補者選びの基準を提供するような記事ですね。そしたらそれが若者にうけたんです。東京に住んでいる友達から「実際に候補者を選ぶために参考になった」という感想を貰ったりしました。そこで、若者は社会の出来事に関心がないと言われているけれど、そうではなくて単に情報のソースがなかったり、あっても難しすぎるのではないかと感じたのです。
最近の統計を見てみると、政治に関心がある若年層はどんどん増えていて、若者の60%以上が関心があると答えているんですが、実際に国政選挙になると投票率が30%強になるわけです。その30%のギャップは何に起因しているかというと、やはり”わからない”ことであると。つまり、何を基準にして誰に投票したらいいのかが分からないんです。そのギャップを埋めたいというのが最初の動機ですね。こうした若者の関心と情報ソースのギャップは至るところに存在しているのでCredoでは政治以外にも経済やテクノロジーの話題についても扱っています。
また、大学院に入ってみて感じたのは、知の閉鎖性です。ある分野に関してすごい知識ある人はいるのに、その人は全然関係ないような会社にいってしまって、その知識が無駄になってしまうとか、論文を書いても教授以外には誰にも読まれないという状況があるわけです。そうした「知識を持っている人」と、「関心はあるんだけどわからない人」を結びつけられたいと考えています。今話した二つがCredoを始めた主な動機ですね。
大学二年の終わりから一年間やってきて、行政の方、企業の方、NPOの方達と色々と繋がりも増えてきて、それでまだまだやれる事も多そうなんだけど、学生団体という形には限界があると感じました。契約を結ぶということができなかったり、お金のやり取りができなかったりという制限があったのです。活動をさらに加速させるために会社化しました。だからたまに「とにかく起業したいんです」って相談に来る人がいるんですが、それには違和感を感じていて、必然性がなければ会社でなくてもただの集まりでも良いですし、学生団体やNPOなどやれる形態は色々とあると思います。
ーー実際に始めて、起業されて感じた事や思ってた事と違っていた事はありましたか
厳しい現実を色々と経験しましたね。四人で会社をはじめたのですが、やはり四人が完全に食べていくっていうのはなかなか大変だなと、思いました。やりたいことがあっても会社を維持する為に日銭を稼がないといけないわけで、会社の第一の目的である地域活性化っていうだけではなかなか食べていく事は難しかったです。特に一年目は信用がないことによる大変さがありました。行政相手の仕事は信用が命なので。5年とか10年とかそのくらいの時間がかかるんだと思います。そういう中で一期目は行政向けの仕事が少なくて、webの開発受託とかをやって理念と日銭をかせぐための仕事をやったりしてました。もちろん、面白い事もそれ以上に沢山ありました。
正直、僕の場合は途中で辞めていますし、起業したという事実自体は全くポジティブなものではないと思います。又、起業して何も得たものがなければその後面接をしてバレますからね。当たり前の事ですが、自分で事業をやって何を経験として抽出して、糧にしているかというところが重要だと思います。僕の場合は、起業してみて自分に足りないものが色々と見えてきたということを面接で話しました。自分に足りないものを埋められる会社を探して、リクルートがそうだったということですね。「起業して自分に足りないものがわかったので、それを埋める為に就職したい」というのはシンプルですが経験に基づいたロジックなので、わかりやすくかつ疑問を持たれづらいものだったと思います。
就活というよりも自分自身の人生にとって良かったと思うのは、しっかりと人生の選択をしたと思えるところですね。起業したり、修士過程に進学して学問の世界にどっぷり浸かってみたり、自分の関心がある領域を経験してから選択をしているので、その分時間はかかっていますが、行動に迷いが無くなってきました。昔から言い続けているのですが「学問も事業もうまくやっている」自分を目指したいので、時間はこれからもかかると思います。
ーー起業して分かった弱みは何なのか知りたいです。そしてそれをどうリクルートで埋められると思ったのでしょうか?
自分に足りないものはあげればキリが無いと思います。具体的な技術だったり、マネジメントに関する知識や経験だったり、性格的な問題だったり。もちろん、それらの能力が自分の満足がいくレベルで身に付く日は一生こないと思いますし、足りないものがあるからといってチャレンジしないでいたら一生チャレンジできませんよねだから、足りないものを充填しつつ、早いスピードでチャレンジし続けられる環境に身を置きたいと思ったのです。リクルートはさっき言ったようなナレッジが蓄積していることに加えて、いざチャレンジしようと思ったら人やお金の融通が柔軟にきく環境だと判断したのです。入社後の生活としては、日々の業務をしっかりやりつつ、社内には新規事業立ち上げのための制度がかなり整って来ているのでそういったものを活用しつつ日々チャレンジするという感じになると思いますもちろん、Credoも続けていきます。
ーー研究者と起業と就活をして社会人になるという三つの選択があるとおっしゃいましたが、なぜ社会人になる選択をしたのでしょうか。
タイミングという点が大きいです。今僕が属している研究科もそうなんですが、社会人の方が凄く多いんです。一回社会にでてから大学の先生になるために戻ってこられた方や、好奇心を追求するために戻ってきた方です。そういったキャリアも日本ではかなり一般的になってきていると思います。また、起業も自分が二度自分で事業をやってきて、いつでもできるということがわかりました。もちろんある事業がうまくいくタイミングというのはあるのですが、事業を立ち上げること自体はすぐにできてしまう。一方で、新卒採用というのは、基本的には一生に一度しかない。新卒が頑張れる、裁量が大きく力を発揮できる会社に入れば、かなり早いスピードで成長できると思っています。もちろん、会社に依存するつもりは全くなくて、むしろ自分のやりたいことのために会社を使い倒していきたいという気持ちが強いです。
読者へのメッセージ ーー前島さんのようなタイプは一般の学生からすると珍しいタイプだと思います。 普通の学生からすると起業はハードルが高くて自分には無理だと固定概念的に思っている人が多いかと思うんですが、どうしたら一般の学生達に対して起業も選択肢の一つだと認識してもらえるようになるのでしょうか? 無理して自分で事業をやる必要はないと思います。もちろん働きたくもないのに企業に入って働くみたいなのは最悪です。しかし、会社に就職して働くことの代替手段として起業しかないというのは視野が狭いと思います。人を集めて何かやろうと思ったら学生団体、NPO、特定非営利法人、などなど手段は他にも色々あると思うんですよね。
固定観念の話に移りますが、僕田舎に二年間ほど住んでいたんですけど、田舎に行くと、生活レベルを多少落とせば企業に勤めなくても案外簡単に生活できるんですよね。まずは自分の従っている常識が自分にとって本当に大事なのかということを考えるのが重要だと思います。常識や規範に従って生きることと、それを破ることのどちらが自分は楽しいのか、一度考えてみることは大事だと思います。だから、挑戦をしない方が楽しい人は別にしなくてもいいんですよね。僕は嫌な事はあんまりやらない方がいいんじゃないかって思っているので、楽しく生きるにはどうしたら良いのかってことをいつも考えています。周りがやってるからとか、常識だからといった理由で行動するより「人生一回だから楽しい方が良い」っていう当たり前のテーゼから始める事が大事なんじゃないかな。
ーー何かしたいけどできていない人達はまずどういう事(きっかけ作り)を普段からしていけばよいのでしょうか?
さっきも言ったように、無理に行動する必要はないと思います。行動しなければいけないと思って、なかなかできない自分に落胆するのは不幸ですからね。やれないならやらなくて良いと思います。それでもやりたい事業があるなら、関連する人の記事や本を読んでみて、実際に会ってみてインターンしたりっていう風に、いきなり行動するんじゃなくて階段を上っていくように行動していくとハードルが下がって行動しやすくなるのではないでしょうか。ですから、こういった記事は最初の入り口としては意味があるのではないですかね。
ーー最後に読者に一言お願いします。
僕自身は常に自分にとって何が幸福なのかを考えながら生きています。先ほども話しましたが、世の中には常識や規範といったある種の縛りが存在しますが、それらをかたくなに遵守することが正解なのかということにはいつも気を払っています。現実的な話すると、僕の学部時代の友人は今新卒二年目なんですよね、昨日も友達に会ってきたんですけど、残念ながら辛そうに仕事をしている同世代は多いですね。残酷な言い方かもしれませんが、就活の時に人生や自分の幸福についてよく考えないで、知名度や年収だけを基準に就活をしていまうとマジで人生つまらない事になるので、本当に本当に一生懸命考えた方が良いと思います。「面接でどのような受け答えをしたら受かるか」といったことよりも、まずは自分にとって何が幸せなのかを考えた方が良いと思います。そういった思考過程から生まれてきた言葉を面接でも話せば良いのです。
大学一年次よりスタートアップに興味を持ちアプリ開発/ベンチャーでのインターンシップを経験。 現在、学生の視野を広げるco-mediaとインターンシップから築く新しい就職の形InfrAを運営する株式会社Traimmuの代表。 サッカー観戦とジム通いが趣味。