イスラエルから植野です。前回ご紹介した、「京大生 VS 早大生稼げるのはどっちだ?」 の完結編をお送りいたします。
学生の皆様のキャリアや働き方等の一助になればこれ幸い。ではどうぞ。 (以下Million Times Mediaより転載)
二人の闘いが始まった初日、井上と内田はお互いに様子見をしているようで、すぐに動き出すことはなかった。
そのまま日が暮れてしまったので、イスラエルメンバーとの親睦も兼ねて夕食に行くことにした。
テルアビブで最も美味のイタリアンと噂のALLORAでの食事。ここのシーフードパスタ ”Fettucine Allora Seafood” は絶品なのでイスラエルを訪れる際は是非ご賞味いただきたい。
和気藹々と食事をして、1日目が終わった。
▶所持金途中経過 井上:100NIS 内田:100NIS
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いよいよ本格的に勝負がスタートする。 井上とこれからの方向性について話してみた。
寺田: 「もう半日経ったけど、どういう作戦でいくの?」
井上: : 「色々アイディアはあるのですが、ビットコインの取引とかはどうですかね?」
寺田: 「うん…まあイスラエルでしかできない、日本人の強みを活かしたことをしてほしいな。」
井上: : 「…」
~ 30分後 ~
17NISの画用紙を購入し、侍姿で準備万端の井上は颯爽と外へ出て行った。
~ 2時間後 ~
井上: 「…寒かったです。雨で全然でした。 物乞いと思われたのか、通行人の人が7NISくれましたがorz」
寺田: 「ナイストライ!PDCAを回そう!」
一方の内田、よく考えると今日はオフィスで見ていない。 心配になって連絡してみるとしばらくして返信が。
昨日の食事がアタったのか、慣れない環境での生活の疲れか、一日中トイレに篭っていたらしい。
そうこうしているうちに、2日目の夜も更けていった。
▶所持金途中経過 井上:90NIS 内田:100NIS
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あまり動きがないまま残り1日を迎えたが、昨日は全く身動きが取れなかった内田も無事オフィスに現れいよいよ勝負を決する時が来た。
このまま終わってしまうのだろうか…そんな不安を抱えつつ2人の様子を見守る。
寺田: 「今日の作戦は?」
井上: 「昨日は書が売れなかったんで…バイナリーオプションとかに一発ぶち込んでみるのはどうでしょうか?」
寺田: 「うーん…口座開設に時間がかかるでしょ。限られた時間、限られたリソースの中で、自分の強みを最大限活かして、最高のリターンを得られるようにしないと。」
井上・内田: 「…」
寺田: 「制限時間は今日の18時までだし、とにかく動いてみよう。」
「商売の基本は、安く買って高く売るですよ!」
井上・内田: 「よし!あれだ!!!」
~ 数分後 ~
内田は、あるスーパーでジュースを購入。これをビーチで売る算段のようだ。
ジュースと現地で人気のスナック菓子”バンバ”を袋一杯に入れて店から出てきた。 見てくれは力士だ。
限られた時間を無駄にしないために、看板を持って歩きながら販売を試みる井上。注目はされるがなかなか売れない。
イスラエルでは、普通に銃をもった兵士が歩いている。その横で信号待ちをする井上。
一方の内田は、ビーチにいち早く到着。
とりあえず供給が早くできるようにと全てのジュースをコップに注いで待つ。
横では、素晴らしい砂のお城が一言も発することなくお金を稼いでいる。
砂浜というプラットフォームに、人目を惹くコンテンツを置き、ペイメントシステム(箱)を設けて自動的にマネタイズしているのだ。
これもスタートアップ大国イスラエルの成せる業か。
そして雨。
しかし、「メイドフォーユー」をしなかったばかりに内田のジュースは殆ど駄目になってしまった。
ロケットの中に入り考える内田。
独特の赤と青の服装にMのマークの帽子は、やはり注目を集める。
そう呟いた内田は、
“I’ll do anything for you!” (「あなたのニーズにお応えします!」)
という触れ込みで広場に立った。
一方の井上もビーチに辿り着いたのだが、あいにくの天気で人が少ない。
通りかかった子どもにジュースを勧める。興味を持つ子ども。
しかし、上手く魅力を伝えきることができなかったのか。結局親子連れは立ち去ってしまった。
井上: 「ジュース一杯売るのがこんなにも大変なのか…」
立ち尽くす井上。 そこに、自転車で通りかかった現地の青年A
井上: 「イエース!って日本語!?」
青年A: 「はい。日本人珍しいですね。何してるんですか?」
井上: 「日本語を話せるんだね!!今ジュースを届けてるんだ!一杯どう?」
青年A: 「もちろん!いくらだい?」
井上: 「気持ちだけでいいよ!」
青年A: 「これが僕の気持ちさ。」
青年Aが手渡したのは、なんと20NIS札!
仕入れ値5NISのペットボトルのジュース一杯についた高値。
これがジャパンブランド、侍衣装の付加価値か。
さりゆく青年Aを見送る井上。
初めてジュースが売れた余韻に浸りつつも、雨が降ってきていることに気付きすぐさま雨宿りをする井上。
井上: 「に、に、に、虹。」
これは勝利の予兆か。 そして、井上も次なる一手に動き出す。
帰り道に出会った子どもたちには皆大好きスナック菓子バンバを授ける。 さすが、セキュリティ大国イスラエル。子どもに話しかける怪しい侍は警察がしっかりマーク。
井上: 「ECの時代やでー!」
いきなりの関西弁に気合いを感じる。 人気サービスBASEでジュースを売ることにしたようだ。 チャネルを拡大すれば売上が上がるはず。プロモーションはコストを掛けずにSNSで。
サイト名は、
”テルアビブジュース”
なんとも潔いネーミング。シンプル・イズ・ザ・ベストとはこのことだろうか。
1時間色々な方法でプロモーションを試した井上。 PVはなんとすぐに1,000を超える勢い。 それはすごいのだが、一向に売上が上がらない。
絶句し考える井上。 Googleに聞いても答えは出ない。
井上: 「そうだ、オフィスにいる人にテルアビブジュースを提供しよう!!!」
幸先良く、オフィスにいた一人がジュース一杯を5NISで購入してくれた。
そして、次に居たのがホリさん。 ホリさんは、IBMで長年セールスの経験を積み、シンガポール駐在を経て2015年よりイスラエルでzerobillbankを創業した起業家である。
ホリさん: 「おー井上っち!それは押し売りだよ。営業的には、まず何かお困りのことはありませんか?とニーズを把握するのが大切。しっかりとコミュニケーションを取って、信頼関係を築いてからビジネスの話をするといいよ。ちなみに俺は昨日から腰が痛いって言ってただろ。だったらマッサージしましょうかとかいう提案があれば買ったな!」
井上: 「なるほど、勉強になります!出直して来ます!!」
~ 残り時間30分 ~
日が暮れたロスチャイルドストリートを歩く井上。怪しい。
何かできることはないか…
とりあえずフローズンヨーグルト屋の前で写真を撮ってみる井上。
しかし、突破口が見えないまま時間は過ぎ。遂にタイムオーバー。
結果は…
井上 41NIS (売上32NIS 費用91NIS)
内田 44.7NIS (売上4.5NIS 費用59.8NIS)
どちらも赤字だったのは残念だが、一生懸命にトライした姿勢に敬意を払いたい。
最後に、2日半の振り返りをしてもらった。
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井上 ・侍姿で書を売る (売上7NIS 費用17NIS) ・ジュース&スナックを売る (売上 25NIS 費用74NIS) ・ECサイト構築 → Facebookで拡散 (売上0NIS 費用0NIS) ・イスラエルの人々と心温まる写真を撮影 (プライスレス)
内田
・コスプレでジュースを売る (売上 4NIS 費用59.8NIS)
・広場で踊り人々のニーズに応える (売上 0.5NIS 費用0NIS)
井上: 「やはり、手に職を付けるのは大事だなと痛感しました。例えば、道で大道芸をやって稼いでいる人とかもやはり凄いと思います。ゼロからイチを生み出すのは予想以上に難しいことだと。なので、今後自分も価値創造をしてお金を稼げるようなスキルを身に付けていきたいと感じました。また営業について、相手のニーズを把握して提案をしていくことの重要性をホリさんに教えてもらいました。また、在庫の抱えすぎが良くないということ、天候はビジネスに大きな影響を与えるということ、事前リサーチの重要性等経営の基本的な観点も学ぶことができたのは大きな収穫でした。」
内田: 「まずは、行動することが大切だということは切に感じました。そこでの反省点を次に活かすことで改善のサイクルができるので。また、体調を崩して動けなかったことは反省です。身体が資本だと身を以て体感しました。あとは、何事も楽しむことが大切だと。笑顔で取り組んでいるとやはり人が寄ってきてくれました。どんな仕事も笑顔で、やりがいを見出して取り組んでいこうと改めて思います!」
井上: 「イスラエル発祥のSABONやMAX BRENNER等の有名なブランドの商品を日本の友人にオススメして代理購入してマージンを貰うというアイディアを考えました。やはり、顧客ニーズを掴むこと、地の利を活かすこと、在庫を抱えないビジネスモデルを構築するのが重要だというのが今回の学びなので、それを反映したビジネスをしたいです。」
内田: 「イスラエルにいるという強みを活かして、こちらの情報を仕入れて日本に売るということができればと思います。情報商材は高く売れますし、何より個人的にスタートアップの話を聞き、情報収集するのが楽しいので。」働き方の多様化がどんどん進んで行く中で、どのように独自性のある仕事に取り組んで価値を生み出していくのかを問われる時代が訪れる。短期間でゼロからイチを生み出すために奮闘した2人の取り組みから未来の働き方を考えるヒントが得られただろうか?
まずはアクションを起こすこと。そこから学び改善していくこと。そして何より価値創造の活動自体を楽しむこと。これは、どんな機械にもできない生きるということだ。 最も多くの時間を費やす仕事を楽しみ、仕事を通じて社会に貢献していくことが益々重要になってくるだろう。
(Aniwo CEO 寺田彼日、原文はこちら)
京都大学法学部2013年卒業後、オイシックス株式会社入社。リスクマネジメント、社内改善業務を担当後、EC事業部異動。マーケティングを担当後、大学時代の先輩である寺田彼日の誘いを受け、イスラエルに渡りAniwo共同設立者として参画。現在はマーケティング、採用などを担当。学生時代の活動はTeach for Japan、政策勉強会、居酒屋のキャッチなど。24歳独身。