今回は、キャンディ・チャンというアーティスト・デザイナーをしている女性のTEDトークを紹介します。テーマは「死ぬ前にしたいこと」。
といっても、これは彼女のストーリーではなく、彼女の周りにいるたくさんの人々のストーリーです。
彼女が住んでいるのはアメリカのニューオーリンズという町で、アメリカに少し住んでいた筆者からすると、そこまで都会ではない印象があります。
そんなニューオーリンズに住んでいた彼女はいつも、近所の人にアパートの家賃を聞いたり、ドアをノックせずにものを貸し借りできるような関係になりたかったり、と周りにいる人ともっと関わり、交流したいと思っていたそうです。
しかし、残念ながら、今までそういった機会はありませんでした。
ー「同じ場所に住んでいても、皆のところに行って会えるわけではなく、多くの知恵が受け渡されないまま時間が過ぎていく」
どうにかしてこの現状を変えたい、と問題意識を持ち始めた彼女は、ある日、あることに気付きました。
「ニューオーリンズはアメリカの中で空き家の数が一番多い」ということです。
(Photo By http://fellowsblog.ted.com/)
そこで彼女は、こういった捨てられた家や空き家を、自分たちが必要なものや自分たちの夢を反映させられる素敵な場所に変える方法を考えました。
しかし、そんなことを考えているとき、彼女は母のような存在だったジョーンという女性を亡くします。
その死はあまりにも突然で、それからというもの、彼女は死について考えることが多くなりました。
生きるということのありがたみ、自分の人生で大切なものは何か、などをいつも考えていたそうです。 それと同時に、日常の些事なことの中でその視点を維持することの難しさも感じていたそうです。
そのような出来事に着想を受け、彼女は友達の助けを借りて、空き家を伝言板に変えました。
そこに「死ぬ前に私は______したい」というような穴埋めの問いを書いて、通りがかった人が誰でも書けるようにしました。
個人個人が自分の人生を振り返り、何を望んでいるのかを考え、公共の場で共有できるようにしたのです。
次の日にはたくさんの回答で壁がびっしり埋まっていました。 その中には、
「死ぬまでに海賊(になった罪)として裁かれたい」 「死ぬ前に日付変更線をまたぎたい」 「死ぬまでに自給自足生活をしてみたい」 「死ぬ前に本当の自分になりたい」
などたくさんの答えがあったそうです。
そこには今まで交流がなかった地域の人や、本当に通りすがりで書いた人が1つの場所で交流し、共有している姿がありました。 それは地域の中で人々の繋がりを増やしていきたい、と考えていた彼女にとってまさに人生が変わった瞬間でした。
この壁を作ったあとに、「自分のコミュニティにもこの壁を作りたい」というメッセージが何百通と彼女のもとへ届きました。 そこで、彼女はこれをツールキットにして、世界中へ送ったそうです。 カザフスタン、南アフリカ、オーストラリア、アルゼンチンなど世界のあらゆる場所でこの活動が行われました。
彼女は言います。
「私たちの持つ一番大切なものは 時間と周りとの関わりです。気をそらされる要素の多いこの時代に惑わされず、人生がもろく短いことを忘れずにいるのはすごく大事だと思います。死というものについて話すのはもちろん、考えることすら避けがちなものですが、死に備えることはこれ以上なく力を与えてくれるものだと気付きました。 死について考えることは、自分の人生について明確なビジョンを与えてくれます」と。
今の時代、ご近所さんだけではなく、学校や職場でもそこまで親しくない人ばかりが増えているように思えます。「見たことはあるけど・・・・・」や「話してみたいけど・・・」ということもよく聞きます。 そういったときに、これを見て人々がつながることの大切さと、そこからどういったことが自分の人生に活きてくるかをふと考えたり、思い出していただければ何よりです。
・Before I die I want to... By Candy Chang 「死ぬ前にしたいこと」 By キャンディ・チャン
海外ドラマ・映画に影響されて15歳でアメリカ留学へ。現在大学では海外から来た生徒と一緒に授業を全て英語で受けています。最近はイベントで通訳をしたり、韓国語を勉強したりと忙しい日々を送っています!主に海外の記事を参考にオリジナル記事を作成していきたいと思います!