「トビタテ!留学JAPANって何がいいんですか?」 「面接ってどんな感じなんですか?どんな選考があるんですか?」
と、よく聞かれます。久保まりなです。
私は、「トビタテ!留学JAPAN」というプロジェクトから奨学金をいただいて、インドへ留学しています。
最初に言いますが、私はこのプログラムにメッチャお世話になっています。
地面に額こすりつけすぎて温泉掘り当てるぐらい感謝しています。トビタテは私の留学の背骨です。日本史上最も学生の利益になるプログラムなのではないかとさえ思っています。
昨年からスタートしたとはいえ、インパクトのあるプログラムなので、名前はすでに学生間でよく知られているようです。
しかし、肝心の内容やメリットなどがイマイチしっくりきていない人が多いらしい、ということでくぼっちは、トビタテ第1期生として、しっくりくる手助けをしたいと思い、この記事を書きます。
トビタテ外部で最も詳しくトビタテのことを説明している記事となるように、プログラムの概要から利用者としての感想まで、よく質問される内容を網羅したつもりです。詳しく書いて長くなってしまったので、必要ないところは飛ばしてくださいね。
「トビタテ!留学JAPAN」とは、2013年に文部科学省を中心として始まった官民協働の海外留学支援制度です。その大枠の中で、奨学金を出して学生を海外へ送るプログラムが「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」というものです。2020年までの7年間で約1万人の高校生、大学生を派遣留学生として送り出す計画です。
こんなプログラムに取り組むということは、官も民も海外経験のある人材を求めているということです。
そういうわけで、トビタテ側から留学生に期待していることは、「支援企業と共にグローバル人材コミュニティを形成し“産業界を中心に社会で求められる人材”、“世界で、又は世界を視野に入れて活躍できる人材”として育成されること」、そして「帰国後は海外体験の魅力を伝えるエヴァンジェリスト(伝道師)として日本全体の留学機運を高めることに貢献すること」です。
わたしもそういうひとになりたいです。
利用者側からみると、「自分メイドの留学プログラムを応援してくれる」というところも1つ大きな特徴だと思います。
・自然科学、複合
・融合系コース
・新興国コース
・世界トップレベル大学等コース
・多様性人材コース
・地域人材コース
この中から自分の留学計画に相応しいと思われるコースを選んで応募します。各コースごとに定員が決まっており、選考はコースごとに行われます。
「地域人材コース」のみ、運営主体が参加地方自治体なので、そこで審査が行われます。ちなみに私は、インドが新興国であるという理由から「新興国コース」に応募しました。
選考プロセスは2つです。
留学計画書による書面審査に通ったあと、面接審査を受けます。第一期の審査では、留学計画書はA4用紙4枚分が用意されていました。面接審査は個人面接が30分、グループ面接が約1時間でした。面接官は協賛企業の人事部の方々です。
留学計画書はその名のとおり、自分の留学計画について熱く語る紙です。私は「具体性」が一番大事なんじゃないかと感じています。自分はこれがやりたくて、目的はこれで、この時期にこれをやって、そしたらこういう結果が得られて、それは日本やトビタテのためにこんな良い事があるんです!と、超具体的に書くのです。
結果とかそりゃまだわかんないですけど、とにかく書くんです。コイツなら応援してもいいぜ、と思わせられる計画書は、読む側が書いた人の留学をイメージしやすい計画書なんじゃないですかね。ちなみに私が事前研修で出会った99%のトビタテ生が「すげえ盛って書いた」と言っていました。
今はもうオフィシャルHPにアドバイスが載っているので、私の腹の足しにならん話よりもそれを参照するのがよいでしょう。 (参考: 「留学計画作りのコツ」 )
個人面接は留学計画書に基づいて色んな質問をされます。すげえ盛った人はちゃんと根拠を用意しておかないとここで死亡します。
「それではどんな質問をされるのだ」、というのがこれを読んでいる方の疑問だと思うのですが、くぼっちの脳みそはビー玉ぐらい、肝っ玉はBB弾ぐらいの大きさしかないため、面接終了時に安堵で内容が全部吹き飛びました。ただひとつ憶えているのは、面接官(女性)がイモムシを食った経験をジェスチャー付きで話していたことです。アバンギャルドですね。
グループ面接は5~6人一組でディスカッションとプレゼンを行います。それを面接官1人にじーっと見られ続けます。 ディスカッションのテーマは、「トビタテを日本一のコミュニティにするにはどうしたらよいか」でした。40分ぐらいみんなで話し合って、最後に他グループに向けて発表します。 プレゼンは、グループ内で自分の留学計画を5分で発表するというものです。特徴的なのは、発表時にパワポ以外のどんな資料を使っても良いということです。私は「パワポのない環境でどうやってプレゼンをするかも試されているのかもしれない・・・!」と予想し、画用紙にクーピーで描いた絵を使ってプレゼンをしました。「これで差別化やで(笑)」と思っていたら、みんな創意工夫に富んだ資料を作ってきていました。さすが。
後に関係者へ合否判定の基準をたずねたところ、「パッション。」という答えが返ってきました。
1.お金がいっぱいもらえるゥ!
良いところの8割はこれです。お金がないと何もできません。トビタテからは、留学先の授業料(上限30万円)、毎月の生活費、渡航費の一部、事前・事後研修の交通費と宿泊費、壮行会の交通費がいただけます。返済不要です。
ちなみに生活費や学費の支給額は渡航先によって変わるので、自分で調べてみましょう。参考までに、インド・デリーに留学しているくぼっちの支給額を書いてみます。
・留学先の授業料 5万円 ・毎月の生活費 12万円/月 ・渡航費の一部 10万円 ・事前研修の交通費と宿泊費 約5万円
こんな感じです。アメリカなどの先進国へ行く人は支給額がもっと上がります。
「おいインドとかもっと少なくても生活できるだろ」、とおっしゃる方がいるかもしれません。わたしも最初は「ちょっともらいすぎじゃないか」と思っていました。
しかし来てみて分かったのが、デリーは思ったよりも物価が高いということです。値段が上下の2層に分かれています。完全なインド人生活をするならばかなり安く済みますが、それよりちょっとでも上を取ろうもんなら日本の地方都市に住むぐらいの出費はあります。
例えばデリーにおいて、インド料理以外のご飯の値段は日本と同じくらいです。ですので、おなかを壊しまくりカレーを避けて生きていた私のエンゲル係数は、必然的に日本よりも上がりました。お金があったから、カレー以外のものが食べられました。このような、日本では予測のつかないことに対応できるため、お金が多めにもらえるのはありがたいことです。また保険や予防接種の代金約20万円も、生活費の余剰から支払えます。
常日頃から感じているのですが、発想力が豊かでアクティブに活動している方々は、おうちがある程度裕福な方が多い気がしています。経済的な余裕と脳みその余裕は、基本的には比例しているのではないでしょうか。究極なことを言えば、その日を生きることに必死な人からクリエイティブなアイデアが生まれる確立は非常に低いでしょう。
だから留学資金を援助してくださるということは、自分の学習だけに脳みそを使って良いよ、と言っていただけるということです。しかも家族には迷惑がかからない。こんなにうれしいことはないです。私の留学は、トビタテありきです。
2.留学計画への極厚サポート!
トビタテの派遣留学生に選ばれた人は、留学前に事前研修を受けます。1日か2泊3日か、大阪か東京か、選べます。私は2泊3日の東京研修に参加しました。
この事前研修の目的は、「派遣留学生へトビタテの意義を理解する」「派遣留学生同士のコミュニティ作り」「留学計画のブラッシュアップ」の3つです。
これらの目的のために、特濃のプログラムが用意されます。すばらしいゲストの講演、自己理解セッション、そして留学計画のプレゼンと意見交換。文字にするとなんだか味気ないのですが、本当に濃いです。ずっとワクワクしっぱなしです。たっぷりの刺激を受けたおかげで自分に対する考え方が変わり、留学の軸が「政治と宗教」から「ファッション」に移りました。そこから留学計画もかなり変わりました。
それもそのはず、これは一流の研修会社が数社タッグを組み、多大な労力を費やしてつくられたプログラムなのです。まあそんなわけで詳しい内容を公にすることは出来ないのですが、この研修を受けられただけでも、トビタテ生になったかいがあったってもんです。間違いないです。
ちなみに事前研修の前には、その期の全トビタテ生が参加する壮行会という催しもあります。
私はそういった類の催しに楽しい思い出がなく、また札幌から東京まで行くのが面倒だったので出席しませんでした。しかしふたを開けると参加率は90%を越え、しかもソフトバンク・孫正義氏の生スピーチまで聞けたというから、行かなかったことをとても後悔しています。後悔ついでに、私が聞きそびれたそのスピーチがYoutubeで公開されたので、留学を志す皆さんはぜひご覧ください。
・孫正義氏のスピーチ
必見です。
留学中には、「メンタリング」という支援も受けられます。これは支援企業で人材育成に関わったことのある方が、留学中のお悩み相談に乗ってくださるというものです。生活面の悩みだけでなく、留学計画に関する相談にも親身に意見をくれます。トビタテのことを理解している人なので、こういった相談がしやすいです。トビタテ生とメンターのマッチングはトビタテ事務局が行ってくれます。私にはインド勤務経験のある方がメンターとしてついてくださいました。
インドは生活面での悩みが多く、住んだことのある人にしか分からないこともたくさんあるので、このチョイスはファインプレーでした。エクストリーム根暗な私は友人に悩みを相談することを躊躇するため、「相談できる人をつくる」というこの制度にとても助けられました。だって留学先でできた友人なんてどうせ出会って数ヶ月なんですよ。そりゃ孤独ですよ。
さらにトビタテは、これからの留学を考えている人に向けて、留学相談会を各大学で行っています。これ、1期の事前研修で「やろうと思っています」と言われていたことなのですが、どうせお役所だから時間かかるんだろうなあと思っていたら、すぐに実行されてすごく驚きました。トビタテ生をサポートする万全の体制と、アイデアを実現するフットワークの軽さも、トビタテの魅力の1つです。
3.珍獣との出会い・・・
トビタテ生は粒ぞろいの珍獣ばかりです。トビタテの特徴は「セルフメイドの留学を応援する」というところにもあります。だから、「おいらはこれがやりたいんじゃ~」という意思を持つ、活き活きとした人たちが集まります。1つの場所にとどまっていてはなかなか出会えない魑魅魍魎だと思います。話しているだけで、ドキがムネムネします。事前研修がインスピレーションに富んだ濃厚な時間だったのは、彼らと過ごしたからというのも大きな理由です。
トビタテ生のコミュニティは結束がかたいです。1人が何かやろうと言い出すと、国を越えて協力者がたくさん集まります。そのようにしてトビタテのコミュニティそのものをもっと良いものにしようと活動する人はたくさんいて、学生主導で始まったプログラムがいくつかあります。
全世界のトビタテ生の所在を地図上に表示し、トビタテ生同士でカウチサーフィンが出来るようにした「ヤドカリプロジェクト」、トビタテ生の生態を赤裸々につづる「トビタテ珍獣図鑑」、47都道府県全て、またSkypeで留学相談会を行う「100発説明会」。最後のものは、トビタテの公式プロジェクトになりました。
・変更届の受理が遅すぎる
トビタテ応募時と留学の期間が少しでも変わると、期間変更届を提出しなければならなければなりません。留学の準備は思うように進まないもので、私は出発日が申請したものから2週間遅れました。そこで出発前に変更届を提出したのですが、何せその受理が遅いのです。ここに来てお役所仕事です。そのせいで留学に出発してからの4ヶ月間、一度も奨学金が振り込まれませんでした。これは、奨学金を出す制度としてはあってはいけないことだと思います。私は別の奨学金も受給していたため全く困らなかったのですが、トビタテのお金だけを頼って留学を決めた人にとっては致命的な出来事でしょう。あとから聞くと、多くのトビタテ生が同じ問題に直面したようです。
トビタテは昨年から始まった新しい制度なので、特に1期生の対応については事務局側も手探りの感があります。この欠点も、制度が熟していくにつれて解消されることを願ってやみません。
最後にもう一度、トビタテの理念に戻りたいと思います。
トビタテは政界と経済界がタッグを組んで、海外経験のあるグローバル人材を育成しようという目的の元に始まったプログラムです。潤沢な資金、自分の価値観と向き合う機会、そこから留学計画をより良いものにする機会、そして計画の実行へのサポート。なぜここまで手厚いのかというと、トビタテ生は日本から投資されている存在だからです。留学によって得た経験を、色んなカタチで日本に還元する役割を担っています。
私の大学の教授はよく「アンパン精神を大事に」と仰っています。外はパンでも中はあんこなのです。
つまり海外の経験や知識を身につけていても、心に日本のアイデンティティを意識し続けなさいよ、ということだそうです。
この理念に共感し、自分オリジナルの留学テーマがある人にとって、トビタテは最高のプログラムとなるはずです。特濃の留学を経験したいアナタ、トビタテに応募してみてはいかがでしょうか?
北海道大学法学部からインド・デリーへヒンディー語留学しています。政治思想への興味からインドへ来たが現在はインドで古着屋をやることを夢見ています。 ブログ・「Saagar Select」をぜひご覧ください。