日本ではあまり馴染みのない大学間の編入システムですが、僕のいるアメリカでは結構一般的です。実際に僕も今、他の大学に編入しようと画策中です。
今回はこの編入学というシステムについてお話しさせていただきます。
現在、日本の大学からアメリカの大学へ編入を考えている方にも是非読んでいただけたら嬉しいです。
ー Columbia University Commencement 2014 NY, NY
アメリカだとジュニアイヤー、つまり3年次からの編入が一般的です。
では「なぜそんなことをするのか」、「編入のメリットとは何なのか」について説明したいと思います。
1.学費を浮かせるため
アメリカは格差社会です。それに加え、すべての生徒が親からの援助を受けられるわけではありません。これは日本でも同じだと思います。アメリカの2年制大学(コミュニティカレッジ)は学費が4年制大学と比べて格段に安いです。
しかし得られる単位自体は4年制大学に卒業必要単位として移行が可能なのです。 よって多くの学生がコミュニティカレッジで2年を過ごした後、4年制大学への編入という道を選びます。うまくいけば4年間で学部過程の学位が取得できる上に4年間まるまる4年制大学に通うより学費がだいぶ浮きます。
更に、多くの4年制大学が近くのエリアに設置されている2年制大学と提携プログラムを組んでいたりするので、そのプログラムに沿って進めば更に学位取得はスムーズです。 ですが、そんなに上手くいくものなのか?
もちろんすべてのケースがスムーズに進むわけではありません。それについてはもう少し後でまとめて説明します。
2.行きたい大学に入るため
日本の大学受験と同様、もちろんみんながみんな行きたい大学に入れるわけではありません。アメリカの大学受験には日本でいうセンター試験にあたるSATもしくはACTと呼ばれる全国統一テストのスコアに加え、高校時代の4年間の成績、課外活動の記録、また出願者の親族がその大学の卒業生かどうか、その大学に多額の寄付をしているのかどうか、ということも合否のファクターに含まれます。
しかし編入学の場合、大学の成績を提出することができ、高校の成績は提出を求められたとしても高校の成績より大学の成績が重要視されるケースもあります。
更に、編入学の場合SAT/ACTの点数の提出が必須でないことが多いです。高校時代に成績が振るわなかった、もしくはSAT/ACTの点数が及ばなかったために高校卒業後すぐに行きたい大学に入学するチャンスがない場合、まず学費の安い2年制大学もしくは他の4年制大学に一旦入学し、大学でのGPAを上げることで自分の理想の大学に編入学という形で滑りこむという道を選ぶ学生も決して少なくはありません。
3.学びたいことが変わったため
日本の大学生と同様、アメリカの大学生も高校卒業時点で将来の夢が定まっているわけではありません。
最初は自分の学びたいことがわかっているつもりでいても、学部過程を進めていくうちに自分の学びたいことが変わることもあります。はっきり自分の学びたいことが変わった時、大学内での学部の変更はアメリカの大学だと驚くほどスムーズです。
ですが、自分がもともと在学している大学に自分の学びたいことがない場合、もしくは他の大学に自分の学びたいプログラムが充実している場合、編入学というシステムが学生を助けます。他大学に編入する場合、今自分が在学している大学の専攻を引き続き専攻とする必要は全くありません。ですので、編入を機会に自分の在籍する学部、専攻丸ごと変えてしまうことも可能なわけです。ー Central Park NY, NY
いま僕が上にあげた編入学のススメ的な項目は、悪い言い方をすれば、建前というか、編入というシステムのいい部分だけを無理にむしり取った感じで、もちろんこのシステムは完璧ではないですしデメリットも存在します。
しかし、日本に出回っているアメリカ留学を推している書籍や機関が編入学に触れる場合、大抵僕があげたような良い面ばかりを紹介している気がします。
もし今この記事を読んでくださっている人が4年制大学に編入しようとお考えなら、今から僕が書くことについて真剣に考えていただきたいです。
1.学費は実際に浮くのか
実際に2年制大学に通って4年制に編入する場合、学費は浮くのでしょうか。
格段に浮くケースもあるとは思います。でも確実ではありません。むしろ、どの大学に編入するのか、いつ編入するのか、そのためにはどの2年制大学がベストか、編入までに2年制大学でどんな授業をどんな順番で履修するのか、ここまで決めておかないと学費を大幅に浮かせることは難しいと思います。なぜかというと
1).編入によって失う単位があるため。 2).編入先の大学で履修しなければならない授業を2年で履修し終えてしまうのは難しいため。
です。
大抵の場合、一つの大学から他の大学に編入する場合、すべての単位が移行されるということはまあありません。学校によっては編入につき移行される単位数の上限が決まっていることもあります。そしてその上限いっぱいの単位が移行できたとしても(稀です)、2年間で編入先の卒業要項をすべて満たすことはかなり頑張らないと無理レベルから、絶対無理レベルまで分かれます。
絶対無理な場合、最悪編入先で3年間(=6セメスター)を過ごす必要が出て来ることもあります。2年制大学での2年間+4年制大学での3年間 = 合計5年間の時間を要するわけです。
つまり編入先の大学での1年間の費用が2年制大学での2年間の費用より低い場合、編入を選んだほうが、4年制大学に直接進学して4年で卒業するより時間もかかる上にお金が浮くどころかさらにかかっていることになります。損です。
飽くまで最悪のケースですが、これに近いケースはよく聞きます。
2.行きたい大学に入れるのか
保証はないです。“当然だ”と言われると思いますが結構シリアスです。
2年制大学をスタート地点として選ぶということは、最悪、最悪ですが4年制大学にどこにも進学できないかもしれないというリスクを負うということです。
きちんと自分が最終的に行きたい大学と提携関係を結んでいる2年制大学を選べばまあ回避できる問題ですが、最悪それでもあり得る問題です。 特に、とても学問的にレベルの高い大学への編入を画策している場合、2年制大学からの編入を形式上“認める”という体をとっているものの、実際にはめったに2年制からは編入を認めないと“言われている”大学もあります。
例えば、コロンビア大学などの名門大学に編入したい二人の大学生がいるとします。二人とも大学のGPAは完璧の4.0、課外活動も同レベル。 しかし片方は地域の二年制大学に在学中、もう片方は名門のNYUに在学中。編入学の合否を決めるAdmission Officeにとってどちらが魅力的に見えるでしょうか?
僕がどちらかと選ぶならNYUからの出願者を取ります。体裁上、どんな大学からの出願者も分け隔てなく見ると“言われている”大学でも、実情はわかりません。わからないからリスキーなのです。
3.学びたいことが変わったため編入する、なんてことは可能なのか。
もちろん可能です。可能ですが、3年次から編入する場合、メジャーに直接入学するのが基本です(アメリカの大学では3年次から専攻の授業中心の履修となるため)。その場合大学個々が設ける、専攻ごとの要項を編入前にすでに満たしている必要があります。違うメジャーを違う学校で専攻しながら編入先の大学のメジャーに入るための要項を満たすことが出来るのかというと、現実的とは言えません。
ですので、「学びたいことが変わったから編入しよう」とする場合、その“気付き”が早ければ早いほど、編入という道は現実的になります。もちろん三年次まで待たずとも二年次からの編入も可能です。しかし3年次直前になってメジャーの変更を他大学でしよう、というのはシステム上可能ですが実際非現実的ですし自分の望んだ大学に、というのはかなり難しいと思います。ー Brooklyn Bridge NY,NY
ー Washington Square NY, NY. 近くにはNYUの校舎ビルが並んでいます
もちろん、編入システムのいい部分を全て否定するつもりはありません。 僕自身編入を考えている学生としてこの編入学自体を否定してしまっては元も子もありません。卒業にある程度余分に時間がかかっても勉強したいことを追求したい人や、大学でのGPAをあげて希望する大学に入学しようとする学生にとってはこのシステムはやはり魅力的です。
ですが、アメリカの大学に行こうと考えてらっしゃる方、“編入すればいいや”と、“安いから”という理由で安易に二年制大学を選ぶことや、自分が無難に入れるであろう4年制大学をテキトーに選ぶことを僕はお勧めしません。先ほど説明したリスクを背負う覚悟があるなら問題もないと思いますが、この道を選ぶと長期的に見て損をする可能性もあるということを心に留めておいて欲しいです。
以上、編入学についてでした。
アメリカまではるばる来て早3年目突入。 ニューヨーク州立大学フレドニア校にて経営/経済学を専攻し2013〜2015年まで在学。2015年秋学期からは イリノイ大学アーバナシャンペーン校でマーケティングを専攻しています。このブログを通じて自分の留学生活にも新しい目標や意義を見出していけたらと思います :)