企画提案を聞いてくれない!?インド人上司との仁義なき戦い。

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みなさんなますて。庄山です。庄山さん3-8ー ラクダに乗る筆者とEngels from Columbia

日本にいるとインドは年から年中暑いと思ってしまいがちですが、実は場所によって気候が大きく異なります。南インドの都市バンガロールやチェンナイは1年中暑く、時期を問わず最高気温は30度以上になることがほとんど。一方で僕が住んでいるインド北部にあるデリーでは、12月と1月が非常に寒い時期となります。最高気温は20度近くまで上がるのですが、最低気温は10度を下回り朝晩はかなり冷え込みます。庄山さん3-11ー Cyber Hub, 外資系の企業やおしゃれなお店が集まっています

寒さの底は12月末から1月初めにかけてで、その後は徐々に気温が上がっていきます。ここ最近は朝の冷え込みも緩やかになり、非常に過ごしやすい気温になってきました。インドの観光シーズンは2月ですので興味のある方はお早めに。3月以降はHot, Hotter, Hottest といった具合に気温が上昇していき5月になると最高気温が50度近くになる日もあるそう。日本の夏も暑いですが、インドの夏は気温で見ると日本のそれを上回ってくるので要注意です。庄山さん3-10ー 水の宮殿 @ジャイプール

さて今回のコラムでは前回のコラムでも少しお話ししたように、インターン中に感じた「インド人を説得する難しさ」について書きたいと思います。今回書くコラムは僕が自分で考えた企画を通そうとする過程で起きたインド人との議論、及びそこから考えられるインド人の時間感覚や上下関係、ものの見方や考え方に関するものとなっています。

インドに来てから最初の2ヶ月(9・10月)は会社ウェブサイトの日本語訳をひたすらやっており、それが終わると営業の仕事へと移行していきました。うちの会社の営業スタイルは2種類あって、アウトバウンドマーケティングとインバウンドマーケティングです。前者は、メール等で自分からお客さんに連絡を取り自社の商品を購入してもらうというもの。後者は、お客さんが自社の情報を自ら手に入れウェブサイトを訪問して商品を購入するというもの。僕が最初に取り組んだのはアウトバウンドによる営業でした。

インド人の上司によると、日本のゲーム開発会社に対してメールで営業活動をして欲しいとのこと。会社からファーストメールのスクリプトを受け取り、それを日本向けにアレンジしてメールを送ることにしました。ちなみにお客さんにあたる企業は大きく分けて3種類あります。1つは大手ゲームメーカー、もう1つは新興企業、そして個人でゲームを開発している方々です。個人開発を行っている方々はインディ開発者と呼ばれ、趣味で開発を行っている方も含まれています。

実は僕もメールを送る前から薄々思ってはいたのですが、メールはほとんど返ってきませんでした。インディ開発者の方からたまにメールが返ってくることはあっても、大手ゲームメーカーや新興勢力企業から返信を受け取ることはありませんでした。インド人の上司にこの現状を報告しても、メールを送り続けることが大切だと言うだけで他になにか策があるわけではありませんでした。しかし彼の言うようにこのままメールを送り続けても、それが開封されて読まれることなくゴミ箱の中へ捨てられるだけだと考え他に策を考えました。

メール以外にLinkedInを使って個人的にメッセージを送ってみましたが、こちらも効果が全くありませんでした。定期的にメールやメッセージを送るのに時間はさほどかからないので、これらの仕事と並行してなにかできないかと考えました。そこでアウトバウンドではなくインバウンドの方に注目しました。自社のFacebookやTwitterに日本語で情報を流し、そこからうちの会社のウェブサイトにアクセスしてもらえないかと考えました。 FacebookやTwitterを管理しているインド人のところへ日本語の情報を流していいかと相談すると、自分だけでは判断しかねるから上司に相談して欲しいと言われました。上司のもとへ話しをしに行くと、明日ミーティングを開くから企画書を作って来いと言われました。案の定、その明日開くと言われたミーティングは3日後に開かれることになるのですが。いつものことです。ご愛嬌ご愛嬌。(笑)庄山さん3-2ー 喧々諤々な議論を交わすインド人たち

さてここからいよいよ企画を通すためにインド人との議論に入ります。会社にはミーティングルームがいくつかあり、その1つを使って議論が行われました。日本人1人がインド人4人に対して自分の企画を提案するという絵でした。その4人というのが、

・D氏(VP Sales & Marketing)← アウトバウンドマーケティングのトップ ・S氏(VP Innovation and R&D)← インバウンドマーケティングのトップ ・M氏(Innovation and R&D)← Facebookを管理 ・S氏(部下)(Innovation and R&D)← Twitterを管理

です。ここでのキーパーソンはVP(Vice President)であるD氏とS氏の2名で、彼らを説得すれば僕の企画が通ります。一方、彼らの部下に当たるM氏やS氏(部下)をどれだけ説得しても意味はないのです。このあたりの上下関係は非常に強固なものがあります。仮にM氏と企画に関して上手く話しが進んでいても、彼の上司にあたるS氏がだめだと言った途端にM氏はさきほどまでの態度を翻して僕の敵となります。

インドでは1950年にカースト制度に基づく差別が禁止されましたが、それから60年以上経過した今日でさえカースト的な地位や身分を重んじる風潮が色濃く残っていると感じています。会社内で部下は上司に対して非常に従順ですし、部下から上司に意見することはタブーのような印象さえ受けます。従って一般的にインド人は、上から言われたことをこなしている傾向が強いのです。庄山さん3-4ー ミーティング中

話を戻しましょう。ミーティングの最初に僕の方から、アウトバウンドの現状を報告した上で、FacebookやTwitterを使って日本語の情報を流したいと提案しました。もちろんやりたいことをただ提案するだけでなく、会社の今期売上高と来期目標売上高を踏まえ、来期の売上高に占める日本企業の売上割合及びアウトバウンドまたはインバウンドによる売上比率を提示した上で企画を提案しました。ここではアウトバウンドから8割、インバウンドから2割の売上を確保することを提案しました。

実はこの売上に関する情報を聞くだけでも苦労しました。うちの会社はIPO(株式公開)をしていない会社なので会計情報が一般公開されていません。そこでSales & Marketing VPのD氏にそれを見せて欲しいとお願いすると、機密事項であるから見せられないと言われました。会社の会計情報を見ることができるのは会社の上層部と一部の投資家だけだそうです。

それならせめて今期の売上と来期の売上目標、またそれらの国別売上構成比だけでもいいから教えて欲しいと頼みました。一般的に日本の会社の会計期間は4月1日から3月31日ですが、うちの会社は1月1日から12月31日です。2014年1月1日から12月31日までの売上高と2015年の目標売上高、そして国別売上構成比が分かれば、会社として日本市場からどの程度の売上を得たいかが分かるはずだと考えました。

ところがD氏tは最初それすらも教えてくれませんでした。それはお前の仕事ではないとお決まりのセリフを繰り返すのみでした。これはあくまで僕の想像ですが、D氏はSales & MarketingのVPにも関わらず会社の会計情報を把握できていなかったのだと思います。インド人と一緒に働いていて思うのは、目の前の仕事には夢中になって取り組んでいても、その仕事がどのような効果をもたらすのかについての関心が薄いです。 つまり目標を設定して、それを達成するためにどのような努力をするのかを考える力が弱いと思います。というよりむしろ目標を意識していないと言った方が正確でしょうか。目の前のディールの進行に最大限の注意を払い、それ以外のことをないがしろにしてしまうケースに往々にして出くわします。このように感じたので、D氏に情報を教えてもらえるよう交渉を続けました。最初はお前の仕事ではないと言って相手にしてくれなかったのが、次第にデタラメながらも数字を言うようになり、最終的にまともな数字を教えてくれました。庄山さん3-5ー 仕事中

さて企画の提案の話に戻ります。インバウンドに関する企画を提案し終わると、VPの2人からそれはお前の仕事ではないとお決まりの文句を言われました。上司2人が提案に対して反対の立場ですから、当然部下の2人も反対の立場なわけです。日本人1人に対してインド人4人が様々な反対意見を並べてきます。ただしだからといって4人全員を相手にする必要はありません。ここで重要なのは、あくまで上司の2人を説得することなのです。

彼らは僕の企画の中身に意見することはなく、企画に取り組もうとする行為に対して反対意見を述べてきます。

・それはお前の仕事ではない ・上司がだめだと言っているからだめだ ・ビジネス経験のないやつが偉そうなこと言うな

これらの言動を耳にすると、インド人が地位や身分を重視していることが分かるかと思います。また割り当てられた仕事のみを自分の仕事とすることは、カースト制度において職業が生まれたときから決められているということを彷彿とさせます。インターン先はIT企業でありカースト的な伝統とは比較的縁遠いと言われていますが、ここ数十年の歴史だけではインド人の考え方の根底を変えるまでには至っていないように思います。

こちらは企画の中身に関する議論をしたいのに、インド人側は企画を提案するという行為に対して意見してくるのでどうしても論点がずれてしまいました。議論は平行線のまま第1回のミーティングは終了し、結論は第2回のミーティングに持ち越しとなりました。現状のまま次回のミーティングに突入しても、第1回の二の舞になるだけだと思い対策を練ることにしました。

その第1歩として、VPから見ると部下にあたるM氏とS氏に売上高や国別売上構成比のことは知っていたかと尋ねました。彼らは全く知らなかったと答えました。馴染みのないことを正社員より立場が下の日本から来たインターン生が発言していたとすれば、彼らがその企画に賛成するはずがありません。彼らを説得することはあまり重要ではありませんが、第2回のミーティングを前に状況を知っておいてもらって損はないだろうと考え企画の内容をもう一度彼らに説明しました。

また次のミーティングでは企画のメリットを押し出した上で、会社に貢献したいということを伝えようと思いました。あくまでこの提案は会社のためにやっていることであり、相手の考えを否定しているわけではないことを伝えることで、不毛な議論になることを避けたかったのです。そして上司がだめと言っているから、ビジネスの経験がないから議論が終了では身も蓋もないので、その方向に議論が流れないようにすることを心がけました。ちょっとした裏工作と議論の方向性に関する心構えを作り第2回のミーティングに挑みました。案の定、第2回のミーティングが開かれるまでに多くの時間を要するのですが。いつものことです。ご愛嬌ご愛嬌(笑)

長期戦を覚悟して臨んだ第2回のミーティングでしたが、以外にあっさりと結論が出ました。とりあえず2週間お試しでFacebookとTwitterに日本語でメッセージを流して、その効果を計測した上でそれ以降の方針を決めようとなりました。裏工作が功を奏したのか、貢献したいという思いが伝わったのかは分かりませんが無事に企画を通すことができました。以前はあれほどまでに反対していたのですが、良くも悪くも以前言ったことを忘れてしまうのがインド人の性なのでしょうか。庄山さん3-9ー 社内研修後の1枚

長くなりましたのでそろそろまとめます。インド人とのミーティングでは予期せぬことがしばしば起こります。ミーティングの予定が急遽変更になったり、以前発言していたことと今発言していることが違ったり、議論が本質とは違う方向に進んだりと大変です。その中で「企画を通すためにVP 2人を説得する」というゴールを常に意識して議論を進行していくことが重要になってきます。

インド人はとにかくよく話します。一度話し始めると独特のなまりがあるインド英語でマシンガンのごとく話します。全て真面目に聞き取るのは少なくとも僕の英語力では不可能なので、相手の主張を理解したらそれに対する返答を考え主張以外は流して聞きます。また返答を考えていないと自分の意見を言うチャンスを見失ってしまうので、できる限り相手が話している最中に自分の意見を考える必要があります。当たり前のことかもしれませんがこれが難しい。意識していてもできないことがよくあります。

今回のコラムではあるインドのITベンチャー企業で働いている中で体験したことや感じたことを素直に書きました。インドには数多くの企業がありますので、あくまで参考程度にインドの企業のことを知っていただければ幸いです。長らくお読みいただきありがとうございました!失礼します。

この記事を書いた学生ライター

Jun Shoyama
Jun Shoyama
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【大阪大学 経済学部 経済経営学科 4回生】 小学校3年生から野球を始め、大学時代は体育会準硬式野球部で主将そして捕手としてチームを引っ張る。大手金融機関から内定をもらうも、自身のキャリアを本気で考えるために内定を辞退し、1年間休学をしてインドでのインターンシップを決意。インターン先のShepHertz Technologiesでは、日本企業への営業と日本市場のリサーチに従事。

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