就活や留学、海外旅行に備えて本格的に英語の勉強に取り掛かりたいけど、どう勉強したらいいのかわからないという人は多いのではないでしょうか。
このコラムでは、大学生に最適な、実践的な英語力を身につけるための学習法をご紹介します。
まず教材ですが、音声とスクリプト付きの、時事ネタを扱ったものが望ましいです。ニュースやドキュメンタリーの形式を取っている英語教材は、より実践的で広範なボキャブラリをカバーしています。BBCやCNNなどの著名な英語メディアや日本のNHKも英語学習者向けのニュースを出しており、時事英語教材は無料のものから有料で使いやすいものまで巷に溢れています。また、FRONTLINE(フロントライン)などのPBS(Public Broadcasting Service)も、質の高い動画教材として使えるのでオススメです。1時間前後の長いものが多いのですが、興味のあるドキュメンタリーを見つけて何度も聴き込むのには最適です。テキストとCDで勉強したいという方は、「The Latest NEWS in English(茅ヶ崎出版)」などを試してみると良いでしょう。1分半ほどのオーディオニュースにスクリプトと和訳が付いており、長さも教材の仕様も非常に使いやすく作られている教材です。日本や世界のニュースを200語前後でコンパクトにまとめてあり、最新の時事を英語で扱えるようにもなります。
また、同じく茅ヶ崎出版の「英語教本(初級~上級Ⅱ)」もオススメです。CDの付いた例文集のような仕様なのですが、全ての例文が過去に日本や世界で起こった事件についてのもので、カバーしている語彙や文章の構成がニュースに即していて極めて実践的です。1日にこれだけ暗唱する、と決めて取り組めば、語彙力が見違えるほど鍛えられるでしょう。
まだまだ上記の教材に手を出すのは早いという方は、「みるみる英語力がアップする音読パッケージトレーニング(森沢洋介・著)」がオススメです。レベル別にシリーズになっているので、自分の英語力に合わせて無理なく学習できます。冒頭に非常に丁寧な学習ガイドも載っているので、英語が苦手な人でも取り組みやすい教材です。
どんな教材を使うにしても、学習は基本的にリスニングから始めましょう。
何度も繰り返し聴いて、これ以上はもう分からないという段階になってから初めてスクリプトに目を通すのが効果的です。スクリプトを見る前にシャドーイングしてみるのも良いトレーニングになります。聴き取れている箇所とそうでない箇所がよりハッキリしますし、英語の発話・リズムに慣れるのにも一役買ってくれます。 シャドーイング中に知らない単語が出てきたときも、スクリプトは見ずに聞いた音を頼りに真似して発音してみましょう。「スペルは知っているが発音できない」より「発音は分かるがスペルが分からない」ほうが英語学習者として健康的です。英語ネイティブの子供が単語を覚える順序も「発音→意味→スペル」です。英語は書き言葉に表音文字を使用する言語なので、リーディングも基本的に「形(スペル)→発音→意味」と、発音を介して理解が進められているはずです。発音を欠いた語彙習得がいかに不自然かよく分かると思います。
十分に聴いてシャドーイングもこなしたら、最後にスクリプトに目を通しながら聴いてみましょう。このときも注意してほしいことがあります。 自分の耳に聞こえた音と、実際に話されていた英語のギャップに注意しながら聴いてみましょう。英語が「聴けない」というのは、単に英語でどう発音されているか知らなかったから、ということが多いです。「この単語はこう発音されるんだ」「ここでリンキング(語尾と語頭が引っ付いて発音されること)が起きていたんだ」「この音が聞こえてなかったんだ」という発見がたくさんあるはずです。特に、アクセントの前の音は要注意です。例えば”approve”は”o”にアクセントが来るためその前の”a”の音は微弱になり、聞き落としがちです。これらを一つ一つ潰していくことでリスニング力は着実に伸びます。 また、視覚に頼らず何度も聞いて口に出すことで、最後にスクリプトを見たときのインパクトがより大きくなり定着率も向上するでしょう。
スクリプトに目を通し内容を十分に理解したら、次は暗唱に取り掛かりましょう。 多くの学習者は、リスニングやリーディングの教材を、解いて理解したあと何もせずにそこで勉強を終えてしまっています。これほど勿体ないことはありません。むしろ、英語力をつけるための本当の勉強は理解してから始まると言ってもいいでしょう。
理解した教材は、もれなく暗唱してしまいましょう。 「暗唱」と聞くとギョッとするかもしれません。私の英語教室に通ってくれている生徒たちも「暗唱しろ!」と言うと揃って地獄でも眺めているかのような表情をします。 確かに左脳を酷使して暗記しようとすれば地獄かもしれませんが、イメージ脳と言われる右脳に働きかける学習をすれば負担もなく長期的な記憶として大量の英文を脳に留めておくことができます。 それにはやはり音読です。 ピアノや何か楽器をする人は想像しやすいかもしれませんが、練習を重ねた曲はもう指が動きを憶えてしまっていて、何か別のことを考えながらでも弾けるようになります。同じように、外国語も口に出して練習し続けることで記憶がより潜在的なものになります。
以下に音読学習と暗唱のメリットを挙げてみましょう。
①語彙を文章・フレーズごとに憶えられる
単語だけを単体で憶えるのは実用的とは言えません。使われる文脈、コロケーション、よく一緒に使われる目的語なども併せて習得するのが望ましいです。例えば”cease”という単語が出てきたときは、「終わる」という意味だけでなく”cease fire(停戦)”というフレーズで覚える、といった感じです。意味だけ知っていても、会話の中で適切な語彙を繰り出すことはできません。また、フレーズや文章ごと憶えておけば、仮に単語の意味を忘れてしまったとしても、文脈から遡って意味を思い出すことができます。
②発話が明瞭かつスムーズになる
日本語と英語は、話すときに異なる筋肉を使います。音読を繰り返すことで英語の発話に必要な口周りの筋肉が鍛えられるので、自然と明瞭かつスピーディーに話すことができるようになるでしょう。
③英語のリズム・抑揚が身につく
英語は日本語に比べ、非常にリズミカルな言語です。英語独特のリズムを耳や口で憶えていれば、リスニングが容易になり発話もより流暢になります。
特に、「どこで休止を取るのか」「どこでスピードを上げ、どこでゆっくり話すのか」「どのように抑揚を取っているのか」に注意して、できる限り音源を真似て音読してみましょう。発話が見違えるほど英語らしくなります。
次に、具体的な音読学習の手法を紹介します。
①シャドーイング
よく知られた学習法です。スクリプトを見ずに、音源にワンテンポ遅れて、聞こえた通りに音声をコピーして口に出します。シャドーイングができるためには、⑴聴き取れ、⑵音源のスピードに発話が追いつき、⑶聞き取りと発話が同時にこなせなければなりません。逆に言えば、学習のゴールとしてはこれ以上ないので、これを音読学習の主軸に据えます。いきなりシャドーイングから入るのが難しい場合は、適宜以下の手法を用います。
②オーバーラッピング
テキストを見ながら、音声に合わせて音読する手法です。シャドーイングをスクリプトを見ながらするものと考えればわかりやすいでしょう。シャドーイングから「聞き取る」作業が取り除かれる分、余裕を持ってリズムや発音、アクセントに集中できます。また、スクリプトを見ながら聞き、発話することで、単語の形(スペル)と発音・意味を頭のなかで強く結びつけることができ、スペルを覚えたりリーディングの速度を上げるのにも一役買ってくれるでしょう。
③緩急読み
もっとセンスのある名前を募集中です。上記2つのように音源には合わせず、非常にゆっくりはっきり読んだり、逆に発音には目をくれず猛スピードで読んだりする練習のことです。ピアノでテンポの速い曲を練習するときの手法を応用したもので、速く弾いたりゆっくり弾いたりを繰り返すことで、弾きたいテンポで安定して弾けるようになります。速く弾く練習ばかりしていると、終いに指が暴走し始めて正確さが失われてしまうので、それを抑えるために適宜スローで弾く練習を挟みます。同じように、音源が速すぎて発話が追いつかない場合は、これを試してみましょう。猛スピードで読む練習を繰り返すことで口が速く回るようになり、ゆっくり読む練習で、速く読んでいたときには無視していた発音やアクセントが正され、噛まずにはっきり話せるようになります。
教材の解きっぱなしは最悪です。理解したあと、定着させるための音読をして始めて使える英語力が身につきます。音読学習のゴールは、基本的には暗唱です。暗唱がきついという人も、「テキストを見ずに完璧にシャドーイングできる」ようになるまで続けましょう。暗唱とシャドーイングは実は紙一重ですし、継続できるやり方で学習するのが望ましいので、シャドーイングをゴールにしても十分に効果があります。
わかっています。次はこう言いたいのでしょう。(出典:http://blog.lingualbox.jp/)
「語彙知ってても、それをスラスラと文章にして口に出せへんから困ってるねん!」
当たり前です。 実は、一度も話したことのないトピックについて話すときというのは、母語でもスラスラと話すのは難しいものです。あまり意識しないので気付きにくいことなのですが、私たちは母語でも言葉を探し、休止を多用しながら話しています。これは英語ネイティブでも同じです。
母語ですら詰まりながら話しているのに、ましてや第二言語でいきなりスラスラ話せるわけがありません。歩けもしない幼児に無理やりスキー板を履かせてゲレンデのてっぺんから突き落とすようなものです。
これを解決する方法は単純です。 「英語で話したことがある」話題を増やすことです。 これは先に述べた音読を用いた学習法にも通じる話です。
たとえば、福島の原発事故について英語で説明しなければならなくなったとしましょう。説明に必要な語彙を知っていたとしても、そこからいきなり英語を紡ぎ出してよどみなく話すのは不可能に近いです。 ですが、一度事故についての記事を英語で読んだことがあり、何度も音読していたとなれば話は別です。何度も口にして頭に染み付いている文章をコピペして話すだけでも十分な説明になり得ます。さらに相手の反応を見ながら自分の見解やプラスαの情報を付け加えていけば、それはもう立派なコミュニケーションです。 効果的なあいづちも同様です。洋画などで、上手い返しだなと思ったら、シーンごと真似して練習してみましょう。ニュアンスをより正確に掴みながら、英語でのユーモアを磨くことができるかもしれません。 このように、一度話したことがあるか否かというのは、言語をスムーズに運用する上で非常に大きなポイントになります。そこでも、やはりリスニングと音読を中心にした学習が威力を発揮します。
以上、私が英語教室の生徒や英語サークルの参加者に実践している学習法をご紹介しました。簡単に要点をまとめます。
⑴学習はリスニングから ⑵解きっぱなしはダメ!理解後の音読を忘れずに ⑶音読は暗唱(少なくともシャドーイング)できるようになるまで ⑷英語で話したことがある話題を増やそう
英語が話せるようになるために、特別な才能や機会は必要ありません。ここで紹介したような音声寄りの学習を続けているだけで、英語力は見違えるほど向上します。そして何より、英語の勉強それ自体を存分に楽しんでください。リズミカルな英語の文章を音読しているだけでウキウキした気分になればしめたもの。"You speak English well!”と言われる日を妄想しながら無理せず楽しく頑張ってください!
「英語教育を通してアンビシャスな人たちの夢を叶える力になりたい」という夢を実現するため、日本人に最適な語学教育のあり方を求め米国ボストンに留学。現在は日本に帰国し、語学教育事業に注力中。帰国後も執筆の機会を頂けたことに感謝しています。大阪大学4年生。