語学留学に期待するな!言語習得に必要なのは環境ではなく努力。

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留学は紛れもなく素晴らしいものです。異国の地で長く暮らすというのは貴重な経験ですし、その中で、様々な成長があるでしょう。しかし、こと「語学学習」という側面に焦点を当てたとき、現代において留学をする意義は薄れているのではないかと思います。しかし、学生の多くはその意義を見つめ直すことなく、語学留学を敢行する。そして、語学力が伸び悩む。そう珍しい話ではないと思います。我々はどういった心構えで留学に臨むべきなのでしょうか。小田切さん1(出典:https://www.flickr.com/)

今回のコラムでは、「留学でどのように過ごしているか」や「いま留学している場所で何が起こっているか」というような流動的なところからは一歩身を引いて、「現代において、語学留学に意味はあるのか」という、足元の部分に焦点を当てたいと思います。

現代における語学留学の意義

小田切さん2(出典:http://arabiansinbad.com/store/index.php)

現代での「語学留学」の意義については、少し考えるだけでもたくさんの疑問が噴出してきます。こうしてたくさんの疑問が出てくるのは、私が斜に構えていることも手伝っているのでしょうが、それ以上に、「語学留学」の価値が時代の変化とともに失われていっているにも関わらず、「意義」の問い直しに多くの方々が無頓着であった、このことのほうが大きいと思います。誰もが留学は価値あるものだと話し、信じている。それにも関わらず、いざ煎じ詰めて聞き質してみると、今まで疑ってこなかったものがどうにも盤石でないと。 皆様も私も同じ時代に生まれた日本人で、高等教育を受けてきた身で、グローバリゼーションの波や技術の進歩を目の当たりにしてきた世代ですから、内心同じことを感じている方も多いと思うのです。

はっきりと申し上げれば、「語学の修得が目的ならわざわざ留学する必要あるの?」という問いに明確な答えを持っている方は、意外に少ないのです。答えを持てないから、他の動機に逃げたくなってしまい、本来の目的を見失いがちになるのです。疑問を解決できないまま、大学の勉強をそれなりにこなして、遊んで、観光して、活動して、いろんな経験をする。あー楽しかった!けれど、さあ日本に帰りますよ、となった時にふと思う。語学力が思ったより伸びていない、本当にこれでよかったのだろうかと。日常会話はできるけど、少し話が難しくなると話せないし、相手の言いたいことは分かるのだけれど、こちらから自分の言いたいことを思うように伝えることが出来ない。日本に帰って、周囲からはデキルものだと思われているけど、そうでもない。あの留学で自分が得たものって何だったのだろう(楽観的な方はこれに、まぁ楽しかったからいいやと付言するかもしれません)と独り言ちる。たびたび聞く話です。過半数の人が陥るかもしれません。どうしてこのようなことが起こるのでしょうか。

1.日本でも出来る

私が思うに、現代では留学での学習環境と日本でのものに、さしたる違いがありません。よく留学の最大のメリットに、学習言語に触れる機会が圧倒的に多くなる、というものがありますが、これは非常に疑わしいものです。昔でしたら、学習言語に触れる機会というのは非常に限られていました。インターネットもない、DVDもない、本も少ないの≪ないない尽くし≫。一方、技術が発達した現在では、遠隔地の人間と無料で通話ができる、マスメディアを通じて大量の言語資料を手に入れることができる、あるいは日本に住むネイティブスピーカーを探すことができる、通販がある、何でもできます。学習者の意思次第で日本に居ながら、いくらでも言語に触れられるのです。大変恵まれた時代です。確かに、留学をすれば日本にいるより遥かに楽をして言語に触れることができますが、語学において、楽しく学ぶうちに力が伸びることはあっても、楽をして伸びることなどまず有り得ません。留学に楽をさせてくれる面が実際あるにせよ、楽をしながら語学力が伸びるだろうという楽観的な見通しは慢心でしかありません。この慢心は留学において最大の敵なのですが、意外に見落とされることが多いのです。とにかく、日本でも言語に触れることはでき、留学がこの点において特別優れているわけではありません。

2.10ヵ月

大抵の語学留学派遣の期間は2セメスター分、つまり10ヵ月です。異国の地で10ヵ月生活するというのは、大きな経験になるのですが、こと語学学習に関していえば、非常に短い期間と言わざるを得ません。まだまだ時間があると思うと、ついつい物事を先延ばしにしてしまう、誰もが経験することでしょう。あと6ヵ月あるから大丈夫、あと4ヵ月、3ヵ月、まだ大丈夫。そして残り2ヵ月くらいになったところで、目標を達成するのは無理じゃないかと気づく。そうして、もう勉強は諦めて、残りの留学生活を精一杯楽しもうという気になってくる。これでは「語学習得」という当初の目標は大失敗です。10ヵ月は、「来週から」をたったの40回言うだけで、終わってしまうのです。「来月から」なんて絶対に言っては駄目、10ヵ月というのは本当に短い。10ヵ月現地で過ごせば出来るようになるというのは幻想です。

3. 留学という環境

もう一つ見落としてはならないのは、留学という環境が、学習言語へ触れる機会を“想像しているほど”≪与えて≫くれない、ということです。もちろん能動的に動けば、可能性は無限大です。しかし、どうしても日本人コミュニティーは出来上がってしまうし、同じフラットで暮らすヨーロッパ人とは英語を話すかもしれないし、現地の友達といつも一緒にいるわけにはいかないし、道行く人々とおしゃべりするわけにもいかない(これも国次第ですが、一般的に言って)。留学というのは学習言語に浸れる環境なのかと思いきや、意外にそうでもない。

では語学留学とは?

こと「語学習得」という点に限っていえば、わざわざ留学する意味は殆どないと言っても過言ではないでしょう。留学先の語学学習でやることの殆どはやる気があれば日本でも出来るし、暮らして修得するには期間が短すぎるし、暮らしの≪言語環境≫の質もそれほど高いわけではない。

では語学留学とは何なのか。

ありきたりな結論になりますが、ただの「機会」でしょう。

当然、機会は生かすものであり、それ自体が何かを与えてくれるわけではない。ですから、留学それ自体に大きな意味を見出し、目的化するのは本末転倒です。「留学できれば~」というような、環境を盲目的に信じる他力本願な態度ではうまくいかない。 肝心要は当人の努力であり、環境ではない。「留学するだけで出来るようになるだろう」という考えは、あまりに楽観的で、自信過剰、傲慢とまで言えるでしょう。慢心せず自分を見つめ、謙虚に毎日努力することで初めて、語学留学は意義あるものになります。小田切さん3(出典:http://www.autismmind.com/)

最後に

留学できるという幸運や、その幸運に尽力してくれた方々への感謝を惜しんではいけません。しかし、だからこそ留学という恵まれた環境に驕るのではなく、自律的な努力を続けていく必要があります。語学学習は一週間に一回や一月に一回で済むようなものではない。少しずつでも毎日取り組んで、それをずっと続けていく。そういう作業が必要な、気の遠くなるようなものです。まさに「涓滴岩を穿つ」ですね。 その代わり、続けさえすれば出来るようになるのだから、いま出来ないからといって悩むことはありません。結果を焦らず、じっくり、自信をもって続ければ、必ず花開くときが来ます。

最後にロシアの諺をひとつ。

Учиться никогда не поздно.

意味は、学ぶに遅すぎることなし、です。「ウチーツァ ニカグダー ニ ポーズナ」と読みます。 留学が終わりに差し掛かって、後悔なさっている方がいるとしても、これから頑張ればいいのです。日本に帰ってからも勉強できるし、留学を通して絶対に何かを得ています。それだけのアドヴァンテージがあるのだから、目標を諦めさえしなければ大丈夫です。

私もロシアに留学をしている身ですが、初心を忘れてしまうことがよくあります。自分に厳しく、頑張っていきたいです。頑張りましょう。 ここまで読んでいただきありがとうございます。拙文、浅見失礼いたしました。 またお会いしましょう。

この記事を書いた学生ライター

Yosuke Odagiri
Yosuke Odagiri
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大阪大学外国語学部ロシア語専攻の3年生。現在、ロシアはサンクトペテルブルク大学に留学しています。寒いです。趣味は芸実鑑賞、ボードゲーム、将棋。将来の夢は高等遊民。自分の感じたこと、考えたことを飾ることなく紹介していきたいです。犬派。

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