ステイ先のハウスメイトが宿題をさせてくれない話

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こんにちは!ボストンでホームステイをしている若尾和紀です。 先々週の日曜日の話です。若尾くん3-1 私のクラスでは、毎週月曜日に、前の週のトピックについてのニュース記事を探し、その内容について簡単なプレゼンをするという課題があります。 日曜日の夜9時半頃にキッチンのテーブルについてラップトップを開くと、サウジアラビア人のガリーブもキッチンにやってきました。 ここで私は、 (うお、まじか) と身構えるわけです。 (…まずい) と思いながらもChromeを開き、ロイターのニュースサイトで記事を探しはじめます。 私の嫌な予感は的中します。彼は席に着くやいなや、開口一番、 「Hey Kazizy(私のニックネーム), whataaa, whataaaa, this and these?」 と叫びました。

日本人に足りないもの

若尾くん3-3彼はA1クラス(CEFR規格で最も初等のレベル)の学生で、まともな英文はほとんど話せません。しかし言いたいことは充分わかります。要するにthisとtheseの違いについて私に尋ねてきているのです。 彼は質問が大好きなのです。一度彼の宿題を手伝ってあげたことがあり、それ以来よく英語について質問してきます。たまにものすごく面倒臭いのですが、「My English teacher!」と言われると邪険にできなくなってしまいます。

余談ながら、彼はほとんどまともに正しい英語の文章を発することはできません。今はまだ単語を並べることしかできませんが、それでも持ち合わせの知識を総動員して必死に言いたい事を伝えようとします。そのあたりは、とても私には真似できないことだと尊敬しています。日本人は他国の生徒に比べて圧倒的に豊富な語彙と文法の知識を持っているのですが、間違うことを恐れて発話することに消極的な生徒がやはり多いです。日本人に足りないのは間違いなくこういった部分であると私は思います。完璧な英語でないと話すのは恥ずかしい、「発音が…」「文法的に間違ってるから…」と、言うべきことがあっても口を噤(つぐ)んでしまうのは非常に勿体ないことです。先の記事でも書いたことなのですが、こちらの参加型授業では発言すること、意見を持つことがなにより重要です。留学を考えている人は、意見を持つこと、完璧でなくてもとにかく口に出してみることを習慣にしていると現地での学びがより充実するでしょう。 ガリーブの貪欲さと厚かましさは、いつもそのことを思い出させてくれます。

進まない、宿題

話がそれました。 彼はthisとtheseの違いについて日曜日の夜9時半に質問してきました。 時間があるときなら喜んで教えるのですが、翌朝は5時起きなので11時には宿題を終わらせたいと思っている私には迷惑な話です。 私は無愛想に、 「”This” is singular and “these” is plural. (”This”は単数形で”these”は複数形やねん。)」 と、彼に分かる筈もない文法的な説明を一言吐いて再びスクリーンに目を移します。 彼は諦めません。 「This near? These far?(Thisは近くでtheseは遠く?)」 と彼は自分の仮説を述べ始めました。 (どないしたらそんな意味になるねんw) と脳内でツッコミを入れつつも、 「When there’s just one, you say “this.” When there are more than 2, “these.”(一つだけのときはthisで、二つ以上のときはthese。)」 ともう少し親切な説明をしますが、彼は理解していない模様。 なおも質問は続きます。 「That? Those? Whataaa whataaa deferent?」 ThatとThoseをも巻き込み、さらに話をややこしくして攻め立ててきます。 宿題は一向に進みません。 彼の根気になかば呆れ果てた私は、席を立ってキッチンの引き出しを開けてフォークを2本取り出し、 「This fork, these forks」 と叫び、次にフォークを遠くに1本置き、これを指差して、 「that fork」 もう一本追加して、 「those forks」 と言いました。ようやく理解してくれたようで、常に質問していないと気が済まないこのアラブ人も一旦はおとなしくなりました。

救世主アブドラ

若尾くん3-2そうしていると、ルームメイトのアブドラ(同じくサウジアラビア人)もキッチンにやって来ました。彼は他のアラブ人たちと比べて驚くほどしっかりしていて、私はアブドラが本当に大好きです。彼は日本が大好きで、彼の夢は日本やアメリカの素晴らしい点を宗教と共存できる形で取り入れ、石油に頼らない立派な国を作ることです。そんな彼に感動して、すでに彼の夢のためならどんな協力もしてあげたい気分になってしまっています。この前も、「どうしたらサウジアラビアの教育を改善できるかな?」という彼の質問から始まり、寝るのも忘れて夜通し語っていました。

また余談が過ぎました。 彼を見て私はホッとしました。アブドラがいてくれる限り、ガリーブが私に集中砲火を浴びせることはないはずです。アラブ人同士、仲良くお話していてくれることを望みました。

再びパソコンに目を移して記事を読み始めた私ですが、ホッとしたのも束の間、またもや妨害を受けます。 次の質問は、こうです。 「How much …… sleep?」 これは理解するのに少し時を要しました。 「You mean, how many hours?(何時間?ってこと?)」 「Yeah, how many hour ummm good … sleep?」 やっと分かりました。適切な睡眠時間を訊いているみたいです。 「Okay I got it. You wanna say "How many hours of sleep is good for your health?” Am I right?(あれやな『何時間寝るのが健康的か?』って言いたいねんな?合ってる?)」 「Yeah, Yeah(そうそう!)」 「They say 7-8 hours is the best(7、8時間が良いって言うよね)」 「Kazizy, How long … you ummm sleep?(かずのりは何時間寝てるの?)」 「Me? 5 hours, usually(おれ?基本5時間かな)」 「Ohhhhhh it’s not gooood!!!(ええええそれは体に良くないよおお!!)」 「知ってるわ、誰やねん今おれの睡眠時間削ってんの(日本語で全力ツッコミ)」 彼は意に介さず「You sleep more!!(もっと寝なよ!)」と全力で心配して全力で気遣ってくれました、はい。

ようやく鳴り止んだガリーブを横目に、私はアブドラに、 「I cannot do my homework here」と苦笑気味に言いました。 「よっしゃあ!やっと勉強できるぞっ!」とスイッチを入れ直した途端、鎮まっていたはずのガリーブがまた喋り始めました。 「Kazizy, How old are you?(かずのりは何歳なの?)」 何故いきなり年齢を訊いてくるのか、というのはまったくの愚問です。 彼の質問に脈絡というものはありません。 私が「宿題できない」と嘆いた直後のこの質問だったので、私もアブドラも顔を見合わせて爆笑しました。 アブドラ「He doesn’t understand what you said(あいつ何も聞いてへんな笑)」 私「He doesn’t(みたいやな笑)」

私はようやく解放され、それからはガリーブとアブドラの会話でした。 ガリーブ「明日の天気は?」 アブドラ「知らん」 ガ「雨?」 ア「さあ」 ガ「雪?」 ア「知らんて」 ガ「霧?」 ア「知らん言うてるやろ」

いつまでもこんな調子なので気が散って記事を読むのも一苦労。結局課題が終わったのは0時前でした。

この記事を書いた学生ライター

Kazunori Wakao
Kazunori Wakao
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「英語教育を通してアンビシャスな人たちの夢を叶える力になりたい」という夢を実現するため、日本人に最適な語学教育のあり方を求め米国ボストンに留学。現在は日本に帰国し、語学教育事業に注力中。帰国後も執筆の機会を頂けたことに感謝しています。大阪大学4年生。

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