ーーなぜ日本に来られたのか、そしてなぜ留学先に日本を選ばれたのかを教えて頂けますでしょうか?
日本に来るのは大きな選択でした。日本に来た理由は幾つかあります。
実は親戚が日本人と結婚していたんです。その方が日本に住んでいて、中国に帰ってくる時に日本の文房具などを買って来てくれていたんです。それを見たときに絶対に中国では買えないものだと感じていました。素晴らしいものだなと。その時から日本に憧れを持っていましたし、素敵なイメージを抱いていました。いつか行けたらいいなと思っていたんです。高校を卒業してからは、色んな経緯があり、すぐには大学には入りませんでした。
まずは親の会社に入り、1年半ほど働きました。父は物流と不動産のコンサルティングを行っている起業家なんです。自分が実際に親の会社で働いてみて、自分の足りない部分が見えてきたんです。自分にとって全てが新しいことですし、なかなかついていけなかったんですよね。仕事も全然分かりませんでしたし、そもそも知識が無かったら何も出来ないと思ったんですよね。ひょっとすると、高卒で大学に行かず4年間会社で働き続ける方が知識・スキル・経験は得られるかもしれないですが、扱える分野が狭くなってしまいそうでした。大学に入れば色んな分野を学べますし、「実はこういう分野に興味があるかも」という新たな発見があるのではないかと思い、大学に入ろうと思ったんです。そこで中国の大学も考えたのですが、とりあえず大学に入って遊ぶ、という友達をたくさん見てきたので、それは絶対自分の為にならないなと確信したんですよね。中国では単位を落としても、お金を支払えば単位を回収できるんですよね。卒業しても何も得られないと思い、海外に行く必要があると思いました。海外の大学への進学を考えた時に、自分がものづくりが好きだったこともあり、先進国のドイツ、アメリカ、日本の3つの選択肢に絞りました。日本以外の国って結構英語を話せる人が多いんですけど、これからは英語に加えてもう一つの言語を話せることが必要な時代になると思ったので、新たに言語を学ぶという意味で日本はプラスでした。地理的に近い事もあって、日本に来るという選択をしました。早稲田大学って中国ではとても有名な大学なんです。中国では東大より早稲田のほうが有名なんですよね。中国の政治家は早稲田大学出身の方が多いんです。そういう理由で早稲田大学を選びました(笑)
日本と中国の違い
ーー中国で思われていた日本のイメージと、実際に日本に来て思ったイメージとどれくらいギャップがありましたか?
僕は上海出身なのですが、一番最初に日本に着いた時の第一印象は、意外と田舎だなと思いました(笑) 上海は一戸建てはあまりなくて、高層マンションがたくさん建っているんですよね。その環境に慣れていたので、日本は一戸建てばかりで驚きました。
それに、ものすごく静かだということにも驚きました。日本は世界でも1,2を争う経済大国なので、高層マンションばかりで賑やかなイメージだと思っていたんです。そこが一番のギャップでしたね。ただ一番の大きな違いは「人」が全然違うことですね。性格や態度がまるで違います。日本の方が断然住みやすいと思います。
ーー具体的に中国人と日本人はどう違うのですか?
中国の店員には腹が立ちますね(笑) でも給与の面で見ると仕方ない部分もあります。中国は1日8時間働いても月に5万円も貰えないんですよね。時給に換算すると100円ほどなんです。日本と10倍も違うんですよね。こんな安い給料では、態度が良くなるわけないですよね。自分の仕事と店の利益があまり繋がってないんです。別に自分の態度が良くても悪くても全然関係ない、店の利益は店のものだし、みたいな感じなんです。だからとにかく適当な店員が多いです。日本と中国では、サービスの質は何十年もの差があると思います。日本は本当に優しいと思います。逆に日本人は優しすぎるので、「何か企んでいるんじゃないか」って思ってしまう事もありますね(笑)
ーー王さんが日本に来られた時は特に日中関係は良くなかったと思うのですが、そういった面で苦労された事はありましたか?
日本に来て中国人だから苦労したりトラブルになったりした事はなかったですね。自分の考え方も日本人っぽいですし、よく日本人に間違えられます。どちらかというと最近は日本人の立場から中国を見ている感じです(笑)
中国人のこういうところが嫌だなと思うときがあるんですけど、ふと考えると自分も中国人だなって思う事がかなりあります(笑) マナーの悪い中国人は帰って欲しいですね(笑) 実際、学生同士で遊んでいるときも日中関係について話す事も多いです。皆と笑いながら「日中関係ヤバイね」みたいな話をよくします。でも「お前は中国人だから嫌」という人はいないですね。若い人はそういう悪い印象を持っている人は少ないんじゃないかと思います。中国人もそれぞれ個性が異なるので、「その人がどういう人なのか」ということが大事なのではないかと思います。
ーー中国人は実際に日本人のことをどう思っているのでしょうか?
場所にもよるのですが、中国南部の人は日本のことが好きな人が多いと思います。ただ、中国北部や西部の人たちはあまり好きじゃない人が多い印象です。経済的に日本と関わっている人たちは日本のことが好きな人が多いと思います。
ただ、経済的に豊かではなかったり教育が行き届いていなかったりする層が、固定概念として日本のことを嫌っている人が多いんだと思います。北部や西部の人たちはどちらかというと経済力がないので、日本製の物を買えないんですよね。
そういう貧富の格差があって日本の物を買えないから、トヨタのような日本車を買っている人たちの車を破壊するトラブルも起こるんだと思います。ただ報道される時は、そういった人たちが暴動を起こしている時なので、日本人も中国人に対する印象が悪くなっていくんだと思います。日本に来ている中国人は日本のことが好きで来ていると思います。
最初から起業したかったわけではないんですが、いつか起業したいなとは思っていました。実際に日本で起業できたのは、色んな要素があったからですね。小さいビジネスをやってみたり、ビジネスコンテストに出てみたりという取り組みの積み重ねで気がつけば起業していたという感じですね。一言で言うと、興味のあるものをとりあえず覚えてみたんです。とりあえずパソコンを触っている時に興味のあるサイトがあればすぐに登録するという姿勢を続けていたんです。その中で「このサイトはこういう仕組み」なのか、みたいなものを次第に理解してきたんです。僕はそんな大きいことを続けてやっていかなくていいと思いますね。”さあプログラミング覚えるぞ”みたいな大きいことをやっていくのではなくて、自分の目の前にある行動範囲を広げていくうちに面白くなってきた感じですね。2年生の時に起業家スーパーカンファレンスでリブセンス社長の村上太一さんが、”いきなり起業ではなくていい、小さいビジネスから初めてみればいいのではないでしょうか?”とおっしゃっていました。例えば、ブックオフで本を買ってAmazonで売ってみるみたいなことですね。それでビジネスの仕組みが分かるようになるんじゃないかと思います。
ーー今やられているサービス「痛部屋」を始めるきっかけは何ですか?
さきほども言ったのですが、いきなり起業しようと思って始めたわけではないんですよね。コスプレ衣装の販売など色んなことをやってきたんです。WCSのコスプレの代表をやったりとか。その過程でオタクコンテンツに大きな市場があることが分かったんです。オタクグッズも飽和しているので、オタクが喜ぶもの、まだ作らていないものを考えて、家のインテリアやリフォームがいいんじゃないかと思ったんですよね。
最初のキッカケはオタクの友達にコスプレのイベントに誘われたことです(笑) 男の役が一人足りないから来てと言われたんです。そこでコスプレのサイトでグッズを見ていたら、日本のサイトは非常に値段が高かったんです。そこで、中国のサイトを見たところ、日本の5分の1ほどの値段で買えたんです。そのときに買った衣装は会場で使った後、そのまま家に放置していたんです。そうしたら、ある日もったいないなと思うようになったんです。そこでヤフーオークションで売ってみたら4000円くらいで売れたんですよね。
そういう部分では留学生は扱える言語を二つ持っているので、海外で事業をする時の強みだと思いますね。価格などを自国のサイトと容易に比べることができますし。外国人って一見別の国で起業するのは難しいように思われますが、別の角度から見るとメリットになることもあると思います。
ーーいま中国人留学生は日本にたくさんいると思うのですが、どういうところにチャンスがあると思いますか?
色んな視点があると思うのですが、例えば、貿易ビジネスでいくと国と国の価格の差が違うという視点があると思います。中国では日本製の物の品質が良いので、とても需要があるんですよね。日本でiPhone6が販売された時に、中国のバイヤーがかなり並んでましたよね。あれは中国と日本のiPhoneの販売時期が違う点に注目しているビジネスですよね。ビジネスチャンスはたくさんあると思います。ちなみに僕はiPhoneケースの販売もしていました。ケースは中国だと10円で売っているんですよね。
最近だとセルフィー棒をアジア人は皆持っています。日本で調べたら2000円くらいなのですが、中国でいくらか調べてみたら、200円くらいで売っていると聞きました。そういうところから仕入れて、友達に売ってみることから初めてみてもいいかもしれませんね。ビジネスの基本は安く買って、高く売ることなので。学生だと、まずはそういうところから初めてみたらいいのではないでしょうか。
主には二つあると思います。
一つ目は単純に人とお話するのが好きなんですよね。そうした時に、自己紹介で自分が何をしているか話せないと面白くないなと思っていたんです。インターンシップなどに参加して人と会う時のために色んな話せるネタを持っておかないといけないなと思っていた点ですね。
二つ目は、何かに取り組んで効果が出るときですね。自分がコミットした事が結果として表れると充実感を得られるんです。
ーー痛部屋としてのこれからのビジョンをお聞かせ下さい。
痛部屋のビジョンとしては、人々の生活環境を変えることですね。
例えば、自分の部屋の環境を自由に好きに作れるということです。今日はこの壁紙にして、明日はこの壁紙にしようという変化を作れるような部屋環境にしたいですね。クリエイティブな環境を作りたいんです。風景であったり、モノであったり、人のライフスタイルまではいかなくても生活環境を変えたいです。
pixivさんのオフィスとかは面白いですよね。オフィスの環境や生活環境が変わると生産性も上がると思いますし、毎日がすごく楽しくなると思うんですよね。そういう意味で生活環境を変えたいですね。
ーー王さんの将来のビジョンを教えて下さい。
まだ決まってないんです。僕はものづくりが好きなので、ロボットなどのハード系の物を作って人のライフスタイルを変えたいと思っています。人の生活環境から、ライフスタイルまでクリエイティブにしていけたらいいなと思います。
大学一年次よりスタートアップに興味を持ちアプリ開発/ベンチャーでのインターンシップを経験。 現在、学生の視野を広げるco-mediaとインターンシップから築く新しい就職の形InfrAを運営する株式会社Traimmuの代表。 サッカー観戦とジム通いが趣味。