内定者インタビュー第3回目の今回は、外資系製薬メーカー(臨床開発部門)の内定者である、大阪大学 医学系研究科 2年のK.Tさんにお話を伺いました。全国大会レベルのアスリートの実力を持ちながらも、医学の道に転身、そして臨床開発の道へ。彼がいかにして人生の選択をしてきたのか、その核心に迫ります。
ーーまず始めに、予防医学に進むきっかけは何だったのでしょうか?
ある疾患に関する研究をしているのですが、その疾患というのが実は過去に私自身が罹っていたもので、研究の際に自分をサンプルにできれば面白いなと。自分に何か関わりがあることって面白いなと思い、予防診断学に進みました。大学選ぶ時の1つの選択基準というのは、やりがいと面白さでしたね。
ーー色々な活動をされているということですが、どういった価値観で大学生活を過ごされていたのでしょうか?
大まかに3つあるかなと思います。まず1つ目は、自分がやりたいことは何であるかを考えながら学生生活を送っていました。実は、高校まではアスリートを目指していて、全国レベル程度だったんですが、ある日病気にかかってしまって。でもその過程で医学に興味が出て一生懸命に勉強に取り組みました。なので、大学に入ってからも将来何をするかっていうのは全く決まってなかったですね。そこで、どういった仕事に就きたいか考えていくために、できるだけ多くの社会人に会おうと考えました。社会人は当然社会のことを詳しく知っていらっしゃるので。新入社員から社長まで、職業や立場を限定せずに、だいたい800人ぐらいの人と話しましたね。それで最終的に自分のなかで何をやりたいかを見つけ出しました。
2つ目は、自分だけにある優位性は何なのかをずっと考えていましたね。どうやって自分が周囲と差別化をはかれるかっていう所を常に考えていました。3C分析ってあるじゃないですか。就活における商材は自分なので、いかに他の学生と差別化を図れるかを自分の経験から強みを抽出していきましたね。日頃から計画的に目的意識を持って行動していたことが良かったなと思っています。
3つ目がオーナーシップを持つこと。主体性が大事だと思っていて、自分から何らかのアクションを起こして結果に結びつけるということを意識していました。物事の結果ってほとんどがやるかやらないかで決まると思っていて、行動しないと何も始まらないですよね。
ーー高校まではアスリートを目指されていたとのことですが、その辺りのお話をもう少し詳しく聞かせて頂けますか?
中学時代に陸上競技の円盤投げという種目に取り組んでいました。入部当初は体育の顧問にスカウトされて始めたこともあり、そこまで夢中に取り組んでいたわけではありませんでした。しかし、練習した分だけパフォーマンスが向上し、新しい視界が開ける事に快感を覚え、気がつけば練習の虫になっていました(笑)具体的には、朝4時頃から練習し、中学の部活動を終え高校で練習に参加さしてもらい、その後トレーニングジムに通る生活を送っていました。多くの人にサポートしてもらった結果もあり、1年強で県大会で優勝することができましたね。また日本記録保持者が身近にいた事もあり、そういったトップアスリートと自分を照らし合わせ、練習さえすれば好きなスポーツで飯を食っていけるんだ、と根拠なく思っていましたね(笑)
ーー大学生活での話に戻りますが、800人に会うのは並大抵のことではないと思います。どのようにしてそこまでの人脈を作り上げていかれたのでしょうか?
縁ですね。学会、知り合いの紹介、SNS、バー、パーティーなどですね。SNSに関しては高校のOB名簿表作成に携わっていたので、そのネットワークを活用していました。よく働き、よく遊び、色々な人と交流を持った上で何事にも真剣に取り組むことが大事じゃないかと思いますね。
ーー忙しい社会人の方に会うとなると、やはり相手にもメリットがないと会ってもらえないと思うのですが、どういう事を意識して社会人の方と接していたのでしょうか?
そうですね。例えば、SONYの社員さんと話すことなった時に自分の知りたい事をいかに聞きだせるかが重要になると思うんですよね。そのために、あらかじめ業界に関連するホットな話題について調べて、シナリオを作っていました。社会人の方からしたら、貴重な数時間を自分のために割いてくれているわけで、快くまた会いたいと思ってもらえるように話す事を心がけていましたね。あとは自分の意見を全力でぶつけることですね。
ーーこの人は話してみて凄かったなど、今まで会ってきた中で一番衝撃を受けた人はいますか?
どうでしょう(笑)「凄い」の定義によると思うのですが、自分のやりたい事をされている方はどの人もすごい輝いて見えました。逆に自分のポジションー会社のポジションっていうのはある目的を達成するためのツールだと思っているのですが、そのツールに酔っている人、そういう人にはなりたくないなと感じましたね。
僕なんかまだまだで、(株)じげん平尾さんは、学生時代に数万人にあったとかお聞きしたことがあります(笑)
ーー多くの社会人に会ったり、普段からオーナーシップを持って生活していたことが、どのように就職活動に役立ったのでしょうか?
自分の強みとして、例えば好奇心とか行動力とか色々あると思うのですが、面接って数十分しかないですよね。その数十分で相手が何を見たいのかを考えた時に、内容に一貫性を持って話さないと、結局どれが強みか分からなくなってしまうと思います。
自分の場合は、何かに取り組もうとした時にどれだけ並はずれたコミット力を発揮できるかを、中高、大学と大学院で分けていました。それぞれ全国大会に出場したこと、専門分野に取り組む一方で、自分で仕事を経験して、語学学校やビジネススクールに通って、成果を上げた経験があったので、常に前を向いている自分の生き方が、自己アピールで非常に役に立ちましたね。
ーーインターンに行くのが面倒だから本選考だけでいいという人が割と多いのですが、K.Tさんから見て、インターンいくメリット・デメリットは何でしょうか?
メリットは2つあると思っていて、1つ目は会社の中身が分かる事。自分がどういう軸で会社選びをしているのかというファクト集めの場になる。社員の方と話し、生のデータをとる良い機会だと思いますね。大手のインターンだと、やっぱり関西の枠って少なくて、関東勢が8割で、関西勢が2割という感じでしたね。
2つ目はインターンで知り合った優秀な人達と情報交換ができることです。データの精度が大事だと思っていて、インターネットには情報が氾濫してるけど、ホントに欲しい情報ってなかなかないんですよね。自分が中心に受けていた製薬メーカーの臨床開発って、ネットの情報だけだとホントに表面的な事しかわからないんですよ。そこでみんなと情報交換できたのは良かったのかなと。まとめると、情報の質やレベルの高い学生と交流をする事ができるということですね。
デメリットとしては、そこで結果ださなかったら早期に切られますよってこと。また、本来希望している職種の異なるインターンで結果を出すと、希望職種の適正を疑われる可能性があるので注意しないといけないと思います。軽い気持ちで手当たり次第インターンに申し込むのもどうかなと思います。しっかり考えてから申し込むことが重要ですね。
ーー内定先が製薬メーカー臨床開発部門とのことですが、一般の人からするとイメージしにくい職種なのですが、分かり易く言うとどういった仕事内容なのでしょうか?
臨床開発部門の仕事は業務が多岐にわたるのですが、ざっくり言うと、研究者が作り出した薬のタネがヒトに対して安全に使うことができて、病気を予防したり治したりする効果が本当にあるかを確認するために、臨床試験を企画します。またその試験を実施する病院で、定められた規則に従って試験が行われているかを進捗管理し、その薬の候補品を医療現場へ送り出すための仕事です。
ーーでは、今の企業に内定を決めた理由は何ですか?
会社の雰囲気、直感、すぐに内々定を出してくれたことですね。大手の会社が、選考を通して得た限られた情報の中ですぐに内々定を出せるっていうのは、会社の意思決定のスピードが早いのかなと思っていて、入社しても自分が早いサイクルで仕事ができると考えたからです。
内定を決める前には、自分が重要視している制度がちゃんとあるのか等を実際に社員に会って聞いたりしました。また、会社の窓口と折衝する外資の転職エージェントを見つけて、そこから情報を得たりもしていましたね。
ーー転職エージェントというのはヘッドハンターみたいな方ですか?新卒の時にも使えるんですか?
そうですね。外資系は中長期で転職する人が結構たくさんいるので、転職エージェントとしては、新卒から人材を確保しておきたいのかなと思います。そこで、今協力するから転職する時はうちを使ってくださいみたいな、Win-Winの関係を作っていました。その他にもLinkedInというサービスを使ったりもしていました。
ーー就職活動をして良かったと感じたことはありますか?
就職活動ってフィードバックされる機会が非常に多いんですよね。自分が普段過ごしている環境って、やっぱり自分と似たような属性・考え方の人と過ごしていることが多いと思うんです。就職活動では、ポテンシャルも価値観も違う多様な人の集まりの中で、自分がどういった存在で、何を生み出せるのか。その中で、自分のバリュー的なところを、他人に評価してもらえる機会が多いのが良かったです。大学生のうちは自己評価をする機会が圧倒的に多いですが、社会にでると他己評価が基準になりますから。そういう意味で就職活動を通して他人から評価してもらえる環境はありがたく、自分を客観的にみれたので良かったです。
ーーでは、就職活動を通して感じた問題点はありましたか?
問題点として、自分の考えを持っていない人は、どの会社にも受からない時代になのかなと思っています。また、就職活動の本とか出てますよね。そういう本って、就職活動を一般化して、学生に正しい就職活動ってこういうもんですよ、っていう内容が多いのですが、それをそのまま鵜呑みにする人たちの多くは、あまり受かっていないんじゃないかなと思うんです。
あと気になったのは、よく1年生からスーツを着て就職活動の対策とかしている人もいますが、外をどれだけ固めたところで、中身がしっかりしていないとすぐにボロが出る。就活のテクニックを身につけるよりも、自分の考えを持てるようになる方がよっぽど生産性はいいと思います。いつから自分の考え方がしっかり固定されて、なお且つどれだけそれが蓄積されているか。それが自分の個性になっていくと思うので。
ーー今度は少し俯瞰して見て、現在の日本の就活の形、いわゆる一斉就活に最近では疑問の声が挙がっています。それに関してはどのようにお考えですか?
海外、例えばフランスだと、大学やレベルの高い専門学校などで専門教育も力を入れることで棲み分けができている。現在、日本には色んな私立大学があると思うんですが、そんなに大学の数って必要ないと思うし、社会的に評価される大学って限られてるなと就活を通して実感しました。とりあえず大学に入れたらいいかっていう階層の人たちが、将来社会に出て何か貢献できるかっていうとそれは難しいと思うんです。そういう人たちが、何かやりたいことをもっと追求できるよう、より高度な専門性につけるような仕組み作りをする必要があると思っています。
また、今の学習塾などでは、どれだけ良い成績を取ってどれだけ良い大学に入れるかっていうのを考えていると思うんですが、ただ単に偏差値の高い国立に行きたいとかよりも、ピンポイントで自分のやりたいことが定まっていたら、自分の将来やりたいこと、それに特化した大学に行くべきです。そのように学生を誘導できるシステムとかサービスとかって今あまりないですよね。そういったシステムやサービスが必要だと思います。
ーー最後になりましたが、読者にこれだけは伝えたいというメッセージはありますか?
FacebookのCEOのMark Zuckerbergが、あるインタビューで話していて、僕のお気に入りなんですが、
“Making mistakes is ok. At the end of the day the goal of building something is to build something, not to not make mistakes. (間違っても大丈夫。結局のところ何かを作りあげることの目的は、あくまで何かを作り上げることが目的であって、間違いを犯さないということではない。)”
という言葉があります。就職活動も同じことで、自分の人生のゴールのために失敗を恐れずに挑戦してみてください。新たな自分の可能性が発見できるかもしれません。
大学一年次よりスタートアップに興味を持ちアプリ開発/ベンチャーでのインターンシップを経験。 現在、学生の視野を広げるco-mediaとインターンシップから築く新しい就職の形InfrAを運営する株式会社Traimmuの代表。 サッカー観戦とジム通いが趣味。