萩原 湧人(はぎわら ゆうと)
1993年生まれ。麻布高校卒業後、慶應義塾大学経済学部に入学するが、中退して大阪医科大学に進学。2年次に大阪医科大学を辞めて、東京大学理科2類に在学中。現在はペット専門ウェブメディア「PECO」でエンジニアとして修行中。
―慶應大学を辞めて大阪医科大学に進学した理由を聞かせてください。
慶應に入学後は、いわゆる普通の大学生活を送っていましたが、思い描いていた大学生活は実際とは異なるものでした。周りの人は「寝てない自慢」、や「授業に行っていないか自慢」をするばかり。意識の低さを感じ、ここにいては成長できないと考え環境を変えようと一念発起したんです。医師を目指した原体験にあるのは、祖父の死。慶應大学在学中に、祖父が救急車で運ばれていくのを目の前で見て、何もできなかった自分を不甲斐なく思ったんです。また、親が医者であることも少なからず関係していると思います。
―しかしその後、大阪医科大学も中退されています。理由を教えていただけますか?
特殊な環境だったので、慶應大学に在籍していたとき同様、環境に馴染むことができなかったんです。基本的に大学に入ってしまえばやることがないんですね。体育会に所属して部活動をするのが一般的で、部活に入らなければ居場所がなくなってしまいます。話すことと言えば、卒業への懸念か部活の話。私は臨床医を目指していたわけではなく、研究をしたかったのですが、研究医を目指す人が誰一人いなかったので周囲に温度差を感じていましたね。
―現在は東京大学に在学されています。受験を決めたきっかけは何だったんですか?
高校の同級生が留学や海外インターンを通じて世界を目指して成長していくなかで、自分は何をやってるんだろう、と劣等感を感じたんです。自分がどのような進路を歩めばいいのか模索した結果、「友達が世界を目指すなら、自分は宇宙を目指せばいいじゃん」と思いつきました。医学部に通いつつ、宇宙開発に携われる学生団体に所属したり、JAXAの研究会に参加するなどしていました。そうするうちに宇宙開発が学べる理工系に進学し直したい気持ちが高まり、ついには親に内緒で東大に出願しました。もともと高校時代の第一志望が東大だったので、ほとんど勢いでしたね。
―過去の大学生活では大きな違和感を感じたそうですが、東大ではそういった違和感は感じなかったんですか?
東大では、また違った種類の違和感に遭遇しました。自分の手に届かないレベルの学力をもった人がゴロゴロいるという、ポジティブな違和感です。入学前はアカデミックの分野に進もうと漠然と考えていたのですが、自分のはるか上にいるハイレベルな学生を見て、この分野で勝負しても勝てないなと思いました。
そんなときに、入学式でインタビューをされたことがきっかけで、『バイキング』という番組に『イマドキ東大生』として出演しました。その番組をみて、一緒に起業しないか、と東大OBの方が連絡をくれたんです。とりあえず何でも挑戦したかったので、二つ返事で引き受けて、去年の10月にその方と起業しました。そこで初めて起業やインターンという選択肢を知ったんです。ビジネスが全くわからない状態で事業をすすめていたので、うまくいきませんでした。
その悔しさがバネとなり「ビジネスを学びたい」と思い、色んな長期インターンに挑戦しました。現在はインターン先で週5でフルコミットしながらビジネスのイロハを学ばせてもらっています。
ーインターンではどのようなことをされていますか?
現在の会社ではエンジニアの勉強をしながら、マーケティングに関わっています。将来的にはこれらの経験を活かして、コンサルに就職するか、理系にいくならエンジニアになりたいと考えています。学生のうちは将来の選択肢を広げるために色々なことに挑戦していくつもりです。
―さまざまな経験をされていますが、今が学生生活の中で一番充実していると感じますか?
全く充実はしていないですね。笑
満たされていたらこんなに動いていないです。多分、人生満たされることはないんじゃないですか。自分を動かす原動力は現状に満足しないことです。自分に不満しかないので、できることは何でも頑張ってみようと思います。常に学んでいたい、何かに打ち込んでいたいという気持ちがあります。そうじゃないと自分の中で生きている心地がしないんですよね。
―自分の向上心はどこから湧いてくるのでしょうか。
多分、麻布高校に通っていたからだと思います。自由な校風で、全部自分で考えて自分で決めろと教育されました。麻布生は、それぞれベクトルが違う方向を向いているんですよ。普通の学校だったら、それを一つのベクトルに向くようになおそうとするじゃないですか。麻布はそうじゃなくて、それぞれ思い思いに動いていいよ、って自由にさせてくれるんです。あと、親も放任で自由にさせてくれたので、そのような環境下で過ごした経験が今の自分を作ってくれているんだと思います。
―最後に萩原さんから学生読者にメッセージお願いします。
色々言いましたが、私はとにかく親不孝で、そのことが心残りになっています。だから、学生の皆さんには親に感謝することを忘れないでほしいです。好きなようにやらせてくれたのは、すべて親のおかげ。これからは親に恩返ししていけたらいいなと思っています。