家庭環境や経済的な困難によって進路の選択肢が狭まってしまっている人にとって“頼みの綱”である奨学金。本来は教育機会の不公平さを無くし、進学を望む誰もが教育への投資によって人生を豊かにするもの。しかし、この奨学金が卒業後“借金”として首を絞めている現実があります。
『BLOGOS』のある記事 (
http://blogos.com/outline/226852/?utm_content=buffer676b5&utm_medium=social&utm_source=twitter.com&utm_campaign=buffer)では、奨学金によって総額800万円の“借金”を抱えた22歳の社会人の壮絶な苦悩が綴られています。手取り18万円で一人暮らしをしているこの方は、毎月約3万円の返済を20年間続けてやっと返済が終わるといいます。
そもそも、日本の大学は海外の大学と比べると学費が高い傾向にあります。日本の国立大学は入学金・授業料で81万7800円、私立大学の入学金・授業料は全国平均で112万5473円に施設設備費が加わります。(http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/__icsFiles/afieldfile/2015/12/25/1365662_03.pdfより)
一方で、海外の大学に目を向けてみると、フランスの国立大学は入学金や授業料は無料。ドイツで有名な州立ボン大学も入学金・授業料は無料となっています。ノルウェー・フィンランド・オーストリアなどのヨーロッパ諸国も国公立大学の授業料は原則無料で、手数料がかかることもありますが日本と比べると非常に安い費用で大学の教育を受けることが可能です。
さらに、海外の大学における奨学金制度は給付型が基本。留学生に対しての給付型奨学金も導入しています。OECD加盟34カ国で、給付型奨学金が存在していないのはアイスランドと日本だけ。そのアイスランドも国立大学の授業料はかかりません。
日本が、どれだけ教育に対してお金を使っていないかが一目瞭然です。あまりにも、“学ぶ者”に対して優しくない国です。
最近は奨学金貸与を受けた人の苦悩がメディアで取り上げられることも多く、議論が巻き起こっていました。政府も2016年6月に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」(
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ichiokusoukatsuyaku/pdf/plan1.pdf)
で、貸与型の奨学金が学生を苦しめている現状を指摘。その影響で学生が奨学金の借り入れを躊躇しているとしていました。
給付型奨学金についても言及し、様々な理由で教育を受ける機会が不公平になってしまっている現状や、国の財源などの課題を踏まえて給付型奨学金の創設に向けて動きだすといった趣旨の内容が明記されました。
2017年5月19日、政府は卒業後の返還が不要な“給付型奨学金”を新設することを発表しました。2017年度の先行対象者は特に経済的に厳しい「実家を離れて私立大学に通う学生」と「児童養護施設等を退所した学生」。
給付額は、私立自宅外学生が月額4万円。児童養護施設等を退所した学生は月額国公立3万円、私立4万円の給付の他に、入学金相当額(24万円)が追加で給付されます。
給付の評価基準は、学習意欲や世帯収入など。
児童養護施設等を退所した学生には学習意欲や進学後に良好な成績が見込めること、私立自宅外生には世帯年収が200万円程度の住民税非課税世帯であることや高い成績を収めていることが基準になっています。
2018年度からは対象者を広げ、高校3年次に各学校が定める基準に基づき推薦された者に給付される予定だということです。
学ぶ意欲がないけれど、“とりあえず”大学に通う若者。一方で本人が操作することができない様々な要因によって、学びたくても学べない若者。このあまりにも矛盾した状況にようやく風穴があいたのではないでしょうか。
1996年生まれ 上智大学在学中 潔癖性にも関わらず東南アジアの自由さと陽気さの虜に 文章で人に何らかの影響を与えることが出来るよう鍛錬中