グロービス代表・ 堀 義人さんのカバン持ちに参加してくれた光長 裕紀さん。1日密着した中で、とても面白い経験をされていたことが分かったので、カバン持ちインターン後に取材をさせていただきました。
夏インターンでも超人気企業を含む10社に合格、先日のG1カレッジにも参加した彼の、大学生活での挑戦とは…。
━前回、光長さんには、グロービス堀義人社長のカバン持ちインターンを取材させて頂きました。その際に、光長さんが大学時代にFMラジオ番組制作に挑戦されていたという事をお聞きしたので、今回は、社会経験もお金も乏しかった大学生が、社会にいかに挑んでいったかをお聞きしたいと思います。
その節はお世話になりました。ラジオ番組制作では、コミュニティラジオ局の番組プロデューサーとして構成とMCを担当しました。担当番組の視聴数を最大150倍にして、局内視聴数で120位から1位にすることができました。
━番組の制作をするようになったきっかけを教えて頂けますか?
大学の先輩の紹介で番組の手伝いをしていた際に、自分で番組の企画を作って多くの人に聞いてもらえるイメージが半年先まで描けたので、大学1年生の冬に広告主の方にお願いして挑戦させて頂きました。あの時、何も持たなかった私にチャンスを与えて頂いた事には、本当に感謝しきれません。大学受験の苦労を乗り越える中で、支えてくれた両親やお世話になった人達に、大学生活で成長することで恩返しをしようと強く持っていた決意が背景にありました。
━具体的にはどんな仕事内容で、どんな苦労をしましたか?
大きく分けると課題は2点あって、1つ目は限られた予算でいかに視聴数を上げられるワクワクする企画を作るかという課題です。これに対しては、課題の本質を抽出する事で乗り越える事を意識しました。
番組を制作するにおいては、「ゲスト」、共演者やADなど現場の「パフォーマー」、予算を提供して頂く「スポンサー様」、それぞれが求めることの合意を形成する必要があります。僕は頭文字をとって「GPS探知」と呼んでいます。スポンサーとパフォーマーの要望は固定なので、ゲストの要望や意図によって企画や演出が変わるわけですね。
ゲストの要望は打ち合わせで抽出するのですが、この時、同時にゲストの人柄や個性を知ることで出演料以外に提供できる対価を把握します。そうすることで出演料を下げることができ、コストダウンすることができます。
例えば、お笑い芸人のロバート秋山さんの御兄弟にイベントの告知を兼ねてご出演して頂く事になった際には、番組のリスナー層を分解する事で、要望の本質を抽出しました。 告知するのは「GWに地元の門司港レトロ(福岡県の観光地)一帯を占拠する大型イベント」だったのですが、秋山さんのご実家のレストランがこのイベントにも出店するということだったので、イベント自体に加えて秋山家のレストランをPRすることが対価になります。
視聴者層を分解した結果、PRの本質は赤い矢印で示した、①門司港に来てもらう、②イベントに参加してもらう、③秋山家のレストランに来てもらう、という3点だと抽出できたので企画の構成に盛り込みます。この3段階の要望に応えられることがコストの削減に繋がるわけです。ゲストの要望の本質を見つけた瞬間は、本当に快感です。
2点目の苦労は、社会的な信用の獲得です。これは、挑戦初期の私にとって最大のハードルでした。発言しても聞く耳を持って貰えなかったり、やんわりと断られたりが続いて、提案が思うようにいきませんでした。
自分に自信を持って社会人と向き合う事が出来まず、社会人にとって、社会経験や礼儀作法に乏しい学生は信用できないのだということを痛感しました。
ラジオ聞いてくださる方の“ワクワク”は、現場の 仕事人の“ワクワク”によって創られると考えているので、企画を動かす時は番組制作に関わる人全員の“ワクワク”を何よりも大切にしています。台本も制作に携わる1人1人にあったものを個別に全部作っていましたし、必ず事前に打ち合わせて1人1人と楽しい妄想を共有する様にしていました。
このようなコミュニケーションをするためにも信用してもらうことが前提なので、当時の私は、仕事で信用を獲得することが1番の課題だと思って取り組みました。
心がけたのは3つです。
1つ目は、泥臭く熱意を伝え続けること。言葉だけではなく、信用を得たい相手の仕事に帯同して実際に学んで、働くなど、行動で伝える事が大事です。
2つ目は、徹底的に情報収集をすること。インターネットに転がっている情報は抜かりなく調べます。相手の周辺の人達に聞きこみを行うこともあります。そうすることで、ツボを押さえた話や意図のある質問ができる様になります。
3つ目は、やっとのことで信用を得られた時に備えて、すぐに収録に臨める状況にしておくことです。 最終的には、企画を任せて頂くだけではなく、「この若者はやってくれるかもしれないぞ・・!」と期待してもらうことを目標にしてこの3点を地道に徹底していくことで、協力してくれる方が段々と増えていきました。
━最後に、大学生活で心がけている事を教えてください。
大学1年生の時に自分で考えた大学生の特権3箇条は常に意識しています。
両親の膨大な投資(養育の費用、時間、労力)のおかげで今があるという自覚があります。地元に戻れば、肉体労働で生計を立てる旧友や、看護師の専門学校で必死に頑張っている女の子がいます。大学生として学べる自分がいかに恵まれているかを受け止めて、するべき事を考えた結果、これらの学生の特権をフル活用して、自分なりの物語を紡がなければならないと思いました。
やるかどうか悩むよりも先に挑戦し、その後に血肉に落とし込んでいく事も大切なことだと感じていますね。例えば、元日本代表サッカー監督の岡田武史さんに夢について語るために直談判したこと、またバラエティ番組の作り方を学ぶためにFM他局の社長をイベントで待ち構えていた事もあります。
要するに、学生のうちは特権を最大限に活用して、志の探求、能力開発、同志のネットワーク構築の3点に投資する事で、新たな信用を積み上げていく事を心掛けています。
━信用の積み重ねが、学生が社会で仕事やお金を生み出すような本当の意味での貯蓄になっていくという発想ですね。光長さん、ありがとうございました。