投稿日: 2017.2.15

伝統知と科学知の融合、役に立つ菌から始まる国際交流

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こんにちは、名古屋大学工学部二年の川村彩です。

前回は、理工学系の学生における異文化交流、異文化理解の重要性をお伝えしました。


工学部の学生が考える国際交流の重要性 | co-media [コメディア]工学部の学生が考える国際交流の重要性 | co-media [コメディア] 


今回は、理系の技術が世界に持続可能な地域社会を創っていくために貢献することができる例をお伝えしようと思います!

伝統を発展させるのは科学の力?

みなさんは、「伝統知と科学知の融合」という言葉を聞いたことはありますでしょうか。伝統といえば、長年その地域で蓄えられ洗練されてきたもの。一見しただけでは、現代的な科学技術とは無縁に思えてしまいますよね。

実は、世界各地域で元から存在する生存基盤や伝統知と、外部から持ち込まれた現代的な科学知を調和させることが可能なのかということを地球科学、農学、経済学、地理学などさまざまな学問の側面から分析し、それを社会に役立てていけるものにさせていこうという研究をしている人たちがいます。

早速、科学×途上国開発をベースにした具体的な例に移っていきましょう。今回はラオスで行われている農学、生物学的な側面の研究の一つを紹介します。このお話は、私が大学の環境学研究科の授業を聴講しに行ったときに伺ったお話です。

伝統知と科学知の融合、役に立つ菌から始まる国際交流

ラオスのランドマーク タート・ルアン

ラオスのなれずし、魚醤

まず、ラオスという国について簡単に説明します。ラオスは東南アジアの国の一つで、唯一の内陸国でもあります。そんなラオスでは、国内を流れるメコン川の水産資源を生かし、川魚を食べたり、そこで水力発電を行ったりしています。ラオスは東南アジアの国の中でも人口の都市集中率が比較的低く、国内全域にわたる数々の村で農業を生業とした人々が暮らしています。そんな国の食文化で欠かせないのが、「なれずし」と「魚醤」という食品です。

なれずしの一つで、日本の滋賀県で有名なふなずしはご存知でしょうか。ラオスでもこれと似た料理があり、それをラオス語では「ソムパー」といいます。メコン川でとれた淡水魚を塩漬けにし、そのあとにお米とともに発酵させた食品です。魚醤は、魚に塩を漬け込み、それを発酵するだけで作ることができるシンプルな塩辛のような調味料です。ラオスではこれをパーデークと呼びます。たとえばラオス北部でよく食されるパパイヤサラダ「タムマクフーン」によく入れて食べられています。(皆様も、もしラオスに行く機会があればぜひこのラオスの伝統料理を食べてみてくださいね!)

   
伝統知と科学知の融合、役に立つ菌から始まる国際交流

ソムパー http://nori883.jugem.jp/?eid=213

最新の科学の分析によってわかったことは、なれずしと魚醤の栄養価の高さです。発酵された魚は、ペプチド、アミノ酸が増えて消化されやすく、旨みが増します。良質のたんぱく質、脂質、ビタミンBを含んでおり、また生きた乳酸菌を多く含んでいるので整腸作用もあります。発酵させることによって保存食となり、季節性のある魚も一年中衛生的に安心して食べることができます。ラオスでは、広大なメコン川の資源を生かし、貴重なタンパク源として伝統的で安価ななれずしと魚醤が食べられてきました。


また、ラオスでは宗教上の理由により、妊婦さんが食べてはいけない食品がたくさんあるのですが、それによってビタミンなどの栄養不足がおきてしまいがちです。それを免れるためにも、妊婦さんが食べることを許されているなれずしと魚醤の重要性が、この研究によって再認識されました。


ここで、いったん日本について振り返ってみましょう。日本にも納豆、味噌、醤油、といった根強い発酵食品文化があります。日本を含むモンスーンアジア一帯では人々が伝統的な知恵を働かせ、そこの気候を生かして稲作を行い、温暖な中でも腐敗を防げるように多種多様な微生物を生かした発酵食品と身近な暮らしをしていました。意外と日本と東南アジアの食文化は近いものです。

この研究をされている教授は、もともと日本の麹菌について、「役に立つ菌」という発想を広めていきたいという思いで研究をされていました。そこで同じ発酵食品文化を持つ東南アジアの国と、日本の共通点を見出しラオスの「役に立つ菌」も科学しようと考えたそうです。教授はもともと異文化交流というものをあまり意識していなかったのですが、「役に立つ菌」が好きでラオスまで行き、ラオス国立大学農学部での新しい研究を立ち上げてしまったそうです。これはまさに、科学のスケールにおける異文化交流。国際交流に興味がある工学部の学生としてはとても心が踊らされることです。

伝統知と科学知の融合、役に立つ菌から始まる国際交流

ラオス国立大学 http://www.panoramio.com/user/2643755

科学的に人々の栄養管理に大いに貢献できると実証された伝統食、なれずしと魚醤ですが、ラオスの経済発展により大量の外国産の海産魚の流入や、淡水魚の乱獲のために、市場における値段の高騰が危惧されています。


しかし、発展や近隣国からの影響は、もはや避けきれないことです。ですから、この世界情勢に対応するために食文化を完全に保持することは難しいし、必ず保持しなくてはならないと断言できるものでもありません。


また、なれずしと魚醤は生の魚を用いるため、これをそのまま食べることによって寄生虫の感染がおこることが恐れられていましたが、発展によってラオスでの衛生面が向上し、これらの伝統食を安全に食べることができるようになったという良い面もあります。めまぐるしい変化が起きている世界の中で、ラオスでは発展と、なれずしや魚醤という食文化の存続を上手に組み合わせていくための研究が科学面、文化面双方から行われています。

伝統知と科学知の融合、役に立つ菌から始まる国際交流

中国によりすすむラオスの乱開発(ラオス語よりも中国語の表示のほうが大きい)http://28038.p28.justsv.com/?p=97

科学が持つ「本来の力」に注目してみよう!

最新の科学は、アメリカや日本といった科学技術が発達している国においてのみ研究が行われ、そこで適応されていくというイメージが強いと感じられますが、今回はラオスというあまり科学が浸透していない国の地域づくりにおいて科学技術が役に立っているという例を紹介いたしました。この研究によってラオスのような国々での理工系の研究が浸透していくことも期待できますね。


周りにいる理系の学生さんたちを見渡してみると、専門的な知識の探求に凝り固まってしまい、元来の目的であった「どのような技術が未来の地球上での生活に役に立つのか」というヒト個人個人に寄り添った考え方を見失っている人が多く感じられます。


特に理系の学生さんは、専門的な知識も大事なのですが、自分はその専門知識によってどのような人を助けたいのか。また、その人々を助けるためにはどういった方法が無理なく持続可能であるのかを考え続けることを忘れないようにしてください。そのために時間がある大学生生活のうちに国内外の伝統文化、生活事情を見聞きしようとするということはとても大事なことなのではないのでしょうか。

伝統知と科学知の融合、役に立つ菌から始まる国際交流

筆者が体験したラオスでのホームステイでの伝統儀式


参考文献

淡水魚のなれずし文化

http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010832632.pdfラオスにおける伝統的な淡水魚

食品の加工方法
https://iccae.agr.nagoya-u.ac.jp/jpn/journal/pdf/26-Takagi.pdf

外務省HP アジアの魚醤

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/j_mekong_k/koryu_ak2.html


この記事を書いた学生ライター

Aya Kawamura
Aya Kawamura
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1997年生まれ。中学生の頃に3年間アメリカに滞在する。名古屋大学工学部在中。内閣府の国際交流事業に参加し、途上国開発に興味を持つ。また最先端の科学技術にも興味があります。かけだしライターですが、理系の学生さんに国際交流に興味を持ってもらえるような記事を配信していきたいです!

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