こんにちは。イタリア・ミラノの今井克哉です。
もう私の大学では期末テストが終わり、皆夏のバカンスを楽しんでいます! 私も最近深夜バスを使ってパリまで一人旅に行ってきました!しかしその日はちょうど150年に一度の大洪水の日でルーブル美術館が閉まっているなど散々でした。
しかもパリの街並みが美しすぎてひたすら散歩をしていたら一日で46kmも歩いていました。帰りの深夜バスの中、筋肉痛とバスの揺れのせいで気分が最悪だったのはいい思い出です。(笑)
全く話は変わりますが、今回は今年で55周年を迎えるミラノサローネについて書いていきたいと思います。
皆さんは「ミラノサローネ」って知っていますか?私は恥ずかしながらどっかで聞いたことがあるなぁくらいの認識でした…
ミラノサローネとは毎年4月にミラノで開催される世界最大規模の国際家具見本市のことです。なぜそんなことをするようになったのか。起源は1961年に遡ります。イタリアの家具やインテリアの輸出を促進するために誕生し、当時はあまり国際的な色は持ち合わせていませんでした。次第にメディアで取り上げられるにつれて、その評判が世界に広まり、1967年より国際家具見本市となりました。現在は各企業のビジネスチャンスとしての役割、若手デザイナーの登竜門的な役割、また世界各国から観光客が集まるためミラノに大きな経済効果をもたらす役割を担っているそうです。
とは言っても、実は私は正直デザインにあまり関心がなく、別に行かなくていいかなと思っていました。あとでニュースとかの写真で見ればいいかなと。しかしシンガポール人の友達の言葉を聞いて、行ってみたいと思うようになりました。
「ミラノサローネもう行ったかい?あの日本人デザイナーすごい人気だったね!!俺の一番のお気に入りはそのデザイナーのマンガチェアーだな!!」
私は返す言葉が見つかりませんでした。ただただ日本人としてそれを知らない羞恥心、それを知っておかなければいけないという使命感、そしてマンガチェアーが一体どんなものであるのかという好奇心でいっぱいでした。なんとしても行かなくてはと思い、授業の合間を縫って行くことを決めました。
実際にミラノサローネに行く前に調べてみると、私はその日本人デザイナーの名前に聞き覚えがありました。
その方は佐藤オオキさんという方で、元サッカー日本代表の中田英寿さんとコラボして日本酒ワイナリーを作ろうとしていると何かの記事で紹介されていた方でした。佐藤オオキさんはデザインオフィス「nendo」を立ち上げ、日本、ミラノ、シンガポールを拠点に活躍しており、またnewsweek誌の「世界が尊敬する日本人100人」「世界が注目する中小企業100社」にも選ばれた凄い人です。ということで佐藤さんの作品を見るべく私はミラノサローネに足を運びました。
実際に行ってみるといつもとは違う街の雰囲気に驚かされました。ほとんどの店で展示会をしており、シャンパンを無料で配っていたり、各国からビジネスや観光で更に多くの人々が訪れ、普段にも増してInternationalな街になっていました。私の想像を遥かに超える盛り上がりを見せていたのです。55年間も続くこの伝統がデザインの街ミラノを形成してきたのだと実感しました。
そしてしばらく歩いていると、ひときわ長い長蛇の列を発見しました。恐らく私がミラノサローネで見た中で一番長い列といっても過言ではありあせん。私はどのデザイナーの展示場か分かりませんでしたが、とりあえず並んでみることにしました。
入り口が近づいてくるに連れて何かイスを使った作品であることがわかりました。あれっ、ひょっとするとこれはあのシンガポール人の友達が言っていた佐藤オオキさんの展示場ではないか!!??
もうワクワクは止まりません。「マンガチェアー」とはどんなものなのかを考える時間がとても楽しかったのを覚えています。すっかりデザインの虜になっていたのです。
ついに展示場の中へ。すると目の前には異様な光景が広がっていました。多くの独特な形をした椅子が所狭しと並んでいるのです。
一見するとなんでマンガチェアーというのかわかりませんでしたが、それぞれをじっくり見るとわかってきました。一つ一つが今にも動き出しそうな形をし、マンガに出てきそうという想像力を掻き立てます。
どうやってこのような発想に至ったのかなどいろいろ考えて、その場で10分程ぼーっとしてしまいました。はっと我に返り、周りを見渡すとみんな同じような顔をしてぼーっとしていました。
では他のデザイナーの作品も紹介していきたいと思います。言葉では限界があると思うので写真をご覧ください。(笑)
もちろんこれらの作品にも多くの人が訪れていたのですが、佐藤オオキさんの展示場は一番混んでいたように思います。。(日本人バイアスが多少かかっているかと思いますが…)日本人がミラノで賞賛されているということを肌で感じ、とても幸せな気分になりました。
ミラノサローネのおかげで、私はデザインが単なる飾りなのではなく、人々の想像力を掻き立て、さらには問題解決の手法として用いられていることに気づきました。
まず人々の想像力を掻き立てるということですが、一つのデザインから何にも縛られることなく自由自在に想像することができます。自由に妄想することで日々の悩みを忘れることができ、この時間は至福のひと時でした。また自分で考えるだけではなくデザイナーのデザインから刺激を受ける楽しみもあります。いわゆる、脳のアハ体験です。このようにデザインには想像力を掻き立てることで、人々に安らぎを与え、創造力を鍛えてくれるものだと思います。
ちなみに個人的に気になっているのですが、デザインと安らぎには、なにか深い関係性がありそうです。それはイタリアでは日本よりデザインが重要視されていて、かつイタリア人が日本人よりもストレスフリーにみえるからです。、日本はイタリアからデザインの重要性を学ぶべきかもしれません。(実体験から強くそう思います。)
そして問題解決としてのデザインですが、これはミラノ・サローネ後に読んだ、佐藤オオキさん著の『問題解決ラボ』に書かれていました。面白いと思った本の一部を紹介させていただきます。
デザイナーの本分は企業が抱える様々な課題を解決することですが、飲食店やブティックの内装設計に始まり、企業ロゴや工業製品、化粧品や食品のパッケージなど、こんなに課題を抱えている人たちが世の中にいたのか、と驚かされます。
新技術や新素材を開発している企業から「何かに使えないか」という依頼もあれば、「輸送中の果物に傷がつかない梱包材」や「患者さんが不安にならない待合室」「邪魔にならない傘用カバー」など、かなり具体的な相談まで千差万別です。.....(中略).......
こういった様々な課題を解決するにあたって重要なのが、その課題を正直にそのまま受け入れないこと。そもそもなぜその課題に至ったのか、「事の発端」を共有することで、糸口がいろいろと見えてくるからです。
たとえば「壁が汚れたから白く塗ってほしい」という課題があった場合、ハイハイ、と白く塗り直しても「真の解決」とは呼べません。そもそも汚れた原因は何なのか。なぜ塗り直したいと思ったのか。今後は「汚れにくい」ほうがいいのか、あるいは「汚れが目立ちにくい」でもいいのか。そういったことを知れば、ひょっとしたら「さらに汚すことで汚れが目立たなくなり、今後もメンテナンスしやすくなる」という選択肢も出てくるかもしれません。
(問題解決ラボ 著 佐藤オオキ 第3章 より引用)
この本が新しいものの見方、発想力を与えてくれるかもしれません。是非興味を持たれた方は読んでみてください。
最後に、このミラノサローネに参加したことで、何事も経験してみないと良し悪しはわからないのだから興味がないことにも挑戦してみるべきだと改めて思いました。そのきっかけを作ってくれたシンガポール人の友達には感謝しています。
特に留学にはそのような機会が溢れていると思うので、自分の興味の限界を設定せずに色々なことに挑戦していこうと思います。
イタリア、ミラノにあるボッコーニ大学に交換留学中の一橋大学三年生。国際的なビジネス、特にマーケティング、コンサルティング、マネジメント、とイタリア語を勉強中。