—— 「亀チョク」などで積極的に投資を行っているイメージのある亀山会長ですが、亀山会長にとって投資とは何ですか?
亀山:ビジネスの付き合いはリアルな関係で、本質的なんだよね。投資を通じて誰かと関係をつくるのも利益目的だし、会社と社員の関係も同じで損得があるわけ。人件費を抑えれば会社の利益が上がるし逆なら下がる。その一方で、共通の「会社が潰れたら困る」という連帯もある。この損得と連帯の両方が絡んだ関係の中でこそ、その人の本当の部分が分かるような気がする。
更には、損得を短期的に見るか?長期的な視点で見るか?といったものもある。投資一つとっても、「明日、不動産を買って、来年上がって儲かる」というやり方もあれば、例えば人に投資して、10年後に「あの時はお世話になりました!」と言われる得もあるかもしれない。1年後のリターンか、100年後を見るのかといったことを含めて面白いなと思うんだよね。
—— インターネットに投資された時も、同じようなことを思っていたんですか?
亀山:投資なんて、当たるか当たらないかよくわからないんだよ(笑)。でも、とにかくやれば、将来それが事業の中心になっているかもしれない。
たまたまインターネットの時代になったから、「先見の明がありましたね」とか言われるんだけど、当時インターネットに賭けていた奴らは、みんな半信半疑だったはず。15年〜20年経って「やっていてよかったな」と思うわけじゃない?
当時は経営していたビデオレンタル店が儲かっていたから、その時に将来性のありそうなものに入れたら、たまたま当たったんだよ。
—— 現在はエロが利益の半分を占めていて、基盤となる事業ですよね。今後、伸ばしたい事業はありますか?
亀山:海外展開や、ロボット、スマホの製造あたりが基盤になってくれたらいいなと思う。あと、VRシアターを世界中に作れたら良いなとも思っている。今は横浜に一館しかないんだけれども、それだけじゃ元が取れないから、アメリカやインドとか色々な所に作って、マイケルジャクソンを流せたら、それで採算取れるよね(笑)。
でも、同じようなことはみんな思ってるんじゃない? やるか、やらないかだけなんだよ。やっていてもすぐに未来が見えるわけじゃないから、当たったり、当たらなかったりで。だから色々なものに投資しておくんだよね。
—— アダルト事業について、どのように思っていますか?
亀山:稼げているからやめていないだけで、アダルト自体に別に思い入れはないね。世間体はちょっと悪いけど、実際にやってるんだから隠してもしょうがない。でも、結果としてアダルトの占める割合は年々減ってきているね。
「DMMと他の事業のブランドをわけないんですか?」とよく言われたんだけど、確かにマイナスイメージもある。でも、アダルトのほうで信用があったから、全然知らない会社が何かやりますと言うよりは、「DMMなら大丈夫じゃない?」と思ってもらえることもある。その点でいうと、プラスもマイナスもあって難しい問題だね。
あと、DMMの場合は色々なビジネスを関連付けたりするんだよね。例えば英会話で儲からなくても、英会話で来たお客さんにFXを売ったりとか。DMMというブランドに価値が上がれば、エロもイメージ良くなって、全体に効果が波及するんだよね。横のつながりでシナジーを産めるからこそ、DMMはIoTや3Dプリンタといった5年〜10年先を見た事業もつくれたりするんだよね.
—— 先ほど海外展開のお話がありましたけれど、DMMアフリカではどういうことを仕掛けていく予定ですか?
亀山:それがね、全然ないんだよ。「とりあえず行って、何か考えてこい!」と若いやつらを色々な国に行かせたら、色んなことを若い感性で見つけるじゃない。でもその時に金が無かったりするので、資金を提供する。若いやつらに乗っかって稼ごうとしているわけだ。
—— 他に、co-mediaでインタビューさせていただいた紀里谷和明監督の「ラストナイツ」にも出資されてますよね。そういったクリエイター支援を行っているのは、なぜですか?
亀山:クリエイターの為にやっている訳じゃないよ。クリエイターから搾取しようとしているだけだから(笑)。でも、お互いに得意・不得意があるじゃない? クリエイターは商売下手だし、良いもの作ってもみんなに広めることが得意じゃなかったりする。なのでそこを商売人の俺たちがやるということ。
—— 結局は自分たちが儲かるからクリエイターを支援していると。
亀山:そうそう。「我々はクリエイターの未来を作っています」と言っているけど、未来を作ったら儲かるからやってるだけ(笑)。
今の時代は部屋から一歩も出なくてもクリエイターになれたりするようになったじゃない?それまで出版社に漫画を持ち込んで、編集に認められたり気に入られたり、そんなことができないとクリエイターにもなれなかったわけじゃない?そういう点では、才能だけあれば引っ張り上げられる世界観になったよね。それはインターネットの双方向性がなせる技だなと思う。
—— 社会とクリエイターを繋ぐ機能を果たしているわけですね。「DMM.make AKIBA」も似た発想ですよね。
亀山:そうだね。「DMM.make AKIBA」でやっているのは、大型テレビをつくる、車を作つくるといったように大きな市場を狙うよりは、ニッチをいっぱいまとめたら、ソニー位の規模になるのが理想的なイメージだね。それはやっぱり、色々な国から部品を安く仕入れることができたり、色々な国へインターネットを通じて売ったりすることができるから、すごくニッチなものでも世界規模で売れば、何とかビジネスになる。
実際に1000万円くらいのバイクがアラブに売れたり、サイコパスの変形銃『ドミネーター』をつくったりね。こういったハードウェアのものづくりは、ITのWebサービスに比べるとかなりお金がかかるんだよね。
—— だからそういったハードウェア・スタートアップを支援しているわけですね。
亀山:そう。製造するだけでお金がかかって大変なのに、更にそこからは売らなきゃいけないと。だから、発明品を作るのが好きなクリエイターを支援して、量産したり、売ったりを手伝って、「俺たちが協力するよ!」という顔をしながら、ちょっと上前をはねる魂胆なわけよ(笑)。
—— なるほど。亀山会長が新しいことにチャレンジし続けられる理由はどこにあるのでしょうか?
亀山:本質的な人間関係の中にいることが、面白いんだよね。あと、色々な人間と出会うと、色々な話を聞ける。その話をもとに何かをやろうと思うと、新しい勉強をしないといけない。歴史を勉強したり、科学を勉強したり、色々と学問が広がっていくね。頭に新しい情報が入ってきて・・だからボケ防止のためかな?(笑)
—— 亀山さんにとってDMMはどういう存在ですか?
亀山:会社自体は、単なる箱。ただのDMM社員の集まり。「何かやろうぜ!」と思って集まった、すごくゆるい集団かな。
—— DMMを今後どう発展させたいと思っていますか?
亀山:ぐちゃぐちゃになっててほしい(笑)。俺が「右を向け!」と言ったら、右を向く奴もいたり、もたもたとしている奴もいたり、「左の方に逃げちゃおうか」という奴もいたり。誰かに委ねるよりも「俺はこう思うんだよね」と言って、迷いながらウゴウゴやっていって欲しいね。
—— 引退は考えているんですか?
亀山:そうだね。引退する時は、幹部を一緒に引き連れて辞めるね。今は「亀山敬司と愉快な仲間たち」でやっていて、愉快な仲間たちだけが残ると、あんまり愉快じゃなくなるんだよね(笑)。今は俺が一緒にやりやすい奴で固めているわけよ。でも、新しいリーダーにとって、その古参の「やりやすい奴」が最適のメンバーかというと、多分違うよね。なので、「新しいリーダーとその仲間たち」といった引き継ぎ方になる。
—— 次の質問なのですが、亀山さんがずっと顔を隠し続けるのはなぜですか?
亀山:もともと、「人前に出てうんちくを語るようになったら、おしまいかな」と思ってたんだよ(笑)。
表現者よりも実行者でありたいと思っていたんだよね。若い頃に大人の集まりに行って、一生懸命話してたこともあったんだけど、そういう所に参加しても「何も持ってない俺」はまともに相手にされない。
結局、どんなパーティーに行こうが、どんな場所に行こうが、「自分がこうやりました」と言えないと、その人たちには響かないよね。今は会社のイメージアップや採用のために、仕方なく語るようにはなったけど、顔を出す必要はないよね。芸能人じゃないんだし。だってイヤじゃない、道歩いてて知らない人に指さされるのは。
—— では、亀山さんがawabarに行く理由というのは?
亀山:偉そうに語るというよりも、どちらかというと若い人に勉強させてもらっている(笑)。「今こういうのが流行っていますよ」とか「僕らこういう想いがあるんですよ」という話を若いやつから聞くと、今の若いやつらはこういう事を考えているんだと勉強になるし、アンテナ力になる。年寄りは感性が鋭くないわけよ。
だから今のことはあんまりわかっていないんだけど、色んな若い人に会っていると役に立つ。一方で俺から「なに格好つけてんだよ」とか「もっとやれよ」という本当の説教もする。だから、ジジイと若者の接点としていいんじゃない?
記事後編 「"上司の首をはねる"活きのいい新卒が欲しい」DMM亀山会長×松栄社長スペシャル対談 では、DMM松栄社長から見た、亀山会長の魅力。そして「学校をつくりたい」と語る、亀山会長の野望に迫ります。
DMMグループ会長。石川県のレンタルビデオ店からアダルト、IT業界の大物まで登り詰めた成り上がり実業家。現在は、動画配信、FX、英会話、ゲーム、太陽光発電、3Dプリンタ、IOT、ロボット、VRシアターと多岐にわたる事業を展開している。
石川県金沢市生まれ。石川県立金沢二水高等学校を経て、1989年明治大学商学部卒業。1998年、当時多数のアダルトビデオ制作会社を傘下に持っていた北都の通販用サイト会社「デジタルメディアマート」を創立。最近では角川書店との協力によるソーシャルゲーム「艦隊これくしょん」の大ヒットや、まだ無名だったころのAKB48の劇場公演の配信など、FX事業、太陽光発電事業、3Dプリンターなど、さまざまな分野に進出している。