東大・京大の書籍部で1位! 現役東大生が、書籍『進め‼︎東大ブラック企業探偵団』に込めた思い

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昨年クラウドファンディングで資金調達し、米国メディアの現状を知るためにニューヨークへ向かった大熊将八さん。出発直前には、「クラウドファンディングで資金調達しニューヨークに直撃取材!メディア業界の最先端に飛び込む」というタイトルでco-mediaにも寄稿してもらった。そんな大熊さんが2月23日、初の書籍となる『進め!!東大ブラック企業探偵団』を出版。大熊さんがNewsPicksでインターンをしていた際の連載がもとになっており、そこから大幅加筆・修正を経て紙の書籍という形で発売された。東大と京大の書籍部でもベストセラーになり、話題の一冊。本稿では書籍にまつわるエピソードを中心に、大熊さんの思いに迫っていく。

『進め!!東大ブラック企業探偵団』制作秘話

ーーどのようにして、『進め!!東大ブラック企業探偵団』の企画ははじまったのですか?

大熊さんインタビュー

大熊:僕はもともと瀧本ゼミという、京都大学客員准教授でエンジェル投資家もしている瀧本哲史先生に指導を仰ぐインカレサークルに所属していたんですが、そこでまさにブラック企業探偵団のような活動をしていたんですね。財務諸表などの、企業が公開している情報に基づき、リサーチを進めていくと、実は地味な会社がすごく儲かっていたり、有名な企業が弱点を抱えていたりといった意外な真実が浮かび上がる。世界的に有名な投資家のピーター・ティールのいう「隠れた真実」を探求していくのが、ゼミでのテーマでした。

ーーまさしく、ジャーナリズムですね。

大熊:そうなんですよね。瀧本先生が編集者の方とつないでくれて、学生が企業の実態を暴くような本を書いたら面白いんじゃないかという話になり、本というアウトプットにすることを目指した企画なんです。ちょうどその頃NewsPicksでインターンをすることになって、編集長の佐々木さんに「NewsPicksで連載させてもらえないか」と提案し、実現したんですね。

ーーNewsPicksで連載してみて、良かったことは何ですか?

大熊:コメントを頂き、そのフィードバックから改善ができることですね。書籍作りのフローに、テストマーケティングのフェーズを入れることができるんです。まさに、クラウドファンディングに近いやり方です。例えば外食産業について書くと実際に外食産業で働いている人からコメントを貰えたり、どういう層が反応するのかがわかったり、そのフィードバックをもとに原稿の書き直しができると。これが外食、メディア、電機、銀行の各業界の人が間違っているところを指摘してくれたり、裏話を教えてくれたり、すごくありがたかっったです。

ーーでは、書籍化にあたって、かなり書き直しもされたんですね。

大熊:ほとんど全部直しましたね。すごいいい経験です。良い編集者の方にみっちりと指導してもらえて、ネットでウケる書き方と、紙の情報にまとめる書き方の根本的な違いがよくわかりました。内容にもかなり手を加えていて、例えば導入は完全に書き下ろしの部分も各話変更して追加います。導入部分では「なぜその活動をしているのか?」という問題提起の部分をストーリー仕立てにして描き、「なぜ日本企業がどんどんブラック企業化していくのか」を論じています。ブラック化とは何かというと、例えば労働時間が長くなっても賃金が低い、出世できない、すぐに首を切られることです。それがなぜ起こっているのかを、統計データなどのファクトを示しながら説明することによって、こういう企業は生き残る、こういう人になれば生き残れるということを本で示し、伝えたいと考えています。

ーーもともと本を書きたいという意向はあったんですか?

大熊さんインタビュー

大熊:ありましたけど、どうせ無理だろうと思ってました。、小学生くらいの時から小説を書いてはいました。一緒に書いている友だちもいて、ふたりで切磋琢磨しながらつくっていたんですけれど、そういうことをしている小学生はなかなかいないじゃないですか。なので、「俺ら結構面白いことしているな」と当時は思っていました。中学・高校になっても本を読むのは相変わらず好きでしたが、賞とかをとって作家になるのはどうせ難しいんじゃないかと考えていたんですね。

大学に入ってからも何となくの諦めがそこにはあって、頑張って勉強して東大に入ったし、将来はコンサルや商社に行ってサラリーマンになるのかなと思っていました。もちろんコンサルや商社に行きたくて行く人は良いと思うんですけれど、当時の自分は消去法でありがちな進路しか考えられない「つまんないやつ」だったんです。そこに書籍出版というすごいチャンスが舞い込んできて。思うように執筆が進まないこともありましたが、すごく充実感があるし、やっぱり自分はこれがやりたかったんだなと思いました。

自分の意志で自分の人生を決める人を徹底的に良く描く

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ーー続いて、書籍の具体的な内容について伺いたいと思います。ノンフィクションのルポタージュなどではなく、東大ブラック探偵団が調査していくフィクションの作品に仕上げたのはなぜですか?

大熊:2つあります。ひとつは、ぜんぶ実名にしたら訴訟のリスクがあると思ったことです(笑)。もうひとつは、フィクションのほうが伝わるだろうと思ったんですね。僕は高校の時に「これからどう生きるべきか」みたいな小難しい哲学的なテーマでずっとブログを書いていて、自分の思想を全世界に広めたかったんですけど、残念ながら10人くらいのファンはいるけれども全然読まれないという(笑)。

その反省から、本を書こうと思った時に「より多くの人に伝わってほしい」と考えたんです。どんなに良いことを言っていても、伝わらない・広がらないのなら意味がないじゃないですか。そう考えるようになったのには、大学に入ってから採点競技である「競技ダンス」を始めたのも関係しているかもしれません。今回は企業分析がテーマなので、「有価証券報告書」という言葉を使うだけで、多くの学生が「難しそう」と尻込みするかもしれない。でも、ライトノベルっぽく女の子が出てきて、面白おかしい活劇の形で伝えれば、「こんなにも簡単に企業分析のやり方がわかるんだ」と受け入れてもらえると考えました。なので、フィクションという形にしました。

ーーNewsPicksの連載では外食チェーン、家電メーカー、テレビ、そして銀行の4つの業界を選んでいましたが、そこを選んだ理由というのは?

大熊:外食は今もそうだと思うんですけど、いわゆるブラック企業の象徴のように捉えられることが多いですよね。他の業界は、就活生に限らずミーハー的な人気があるので、そういった企業の実態がどうなっているのか、多くの人が関心があるところなのではないかと思って選びました。

ーー周りの就活生の反応はいかがでしたか?

大熊:「面白い」と言ってくれる人もいるし、1番感激したのが、「この本を読んで、企業の見方や就活における価値観が変わった」と言ってくれた人がいたことです。。

ーーこの本を、どういう方に読んでもらいたいですか?

大熊:一見就活生向けの本に思われがちですが、その層に限らず多くの人に読んでいただきたいです。僕はいま大学5年目で、部活やゼミの同期の多くはもう社会人として働いているんですけれど、いざ会社に入ってみて「思ってたのと、全然違う」という人がかなりいるんです。つまり、就活生の時は企業の実態が見えていなかったわけです。その企業でどう生きていくのか、ひょっとしたら転職するのか、といったキャリアについて、考えるのが凄く大事ですよね。なので若手社会人の人にもこの本を読んでもらいたいですね。

ーー書籍を通じて、大熊さんが一番伝えたいことはなんですか?

大熊:本の中では、自分の意志で自分の人生を決めている人を徹底的に良く描いてますし、逆に他人の意見を鵜呑みにしてしまう人を徹底的に悪く描いているんですね。僕は、皆が平均的に幸せになれる時代ではもうないと思っています。例えば、国民的なアニメのクレヨンしんちゃんやサザエさんの家庭って「普通の家庭」として描かれていますよね。20年前までは確かにありふれた「普通の家庭」だったと思います。でも、、ローンだけど一軒家を持っていて、車を持っていて、子どもも2人いる。今の日本ではそうそうない幸せぶりですよね。これからはますます、普通になることが難しくなるんじゃないですか。僕は1992年生まれで、「失われた20年」をずっと生きてきたわけですが、これから国全体の調子が右肩上がりになるイメージは描けないです。

でも、その一方でチャンスだと思うんですよね。自分で考えて動ける人には、無限のチャンスが広がってると思っています。周りには、僕よりぜんぜん年下でもそのチャンスをつかんですでに世界を舞台に活躍している人もいます。僕自身も彼らに負けないように、チャンスを掴んでいきたいです。そのために必要な考え方を、この本を通して多少なりとも伝えられるんじゃないかなと思っています。

「冒険こそ冒険の報酬だ」

ーー大熊さんがそういった考えを持つようになったきっかけは?

大熊さんインタビュー

大熊:僕の親が離婚しているんです。母は高卒ですし、普通にいくとワーキングプアの母子家庭なんですよ。ただ、たまたま僕のおじいちゃんが幼い時に交通事故で亡くなったので、賠償金が家にあったんです。そのお金を使って、子どもの教育に投資しようと親は考えて、僕を私立中学に入れてくれたんですね。

その頃から、たまたま投資を受けられたからこそ勉強できているんだなと無意識のうちに感じていました。だから大学に入ってからも、受けた投資以上の何かをできないかと考え、常に動き続けていろいろな人に出会ってきました。

そうしているうちに気づいたことがあります世の中で高く評価されている「凄い人」に出会っても、IQがありえないくらい高いとか、育ちが良いとも限らない。。たまたまいいチャンスを掴んで、それをうまくモノにできた人が多い。求めればチャンスはいくらでも転がっていると思うんですよね。僕も「何かあるはずだ」と動き続けることによって、、いろんなチャンスと巡りあうことができました。

ーー最後に、大熊さんの将来の目標を教えてください。

大熊さんインタビュー

大熊:もし本がものすごく売れてドラマになるなら、その脚本を自分で書きたいですし、漫画になるならその原作を書きたいです。そんな風に新しいチャンスをどんどん見出し、掴んでいけたらと思っています。僕の根本的な欲求は、知的好奇心。とにかくおもしろいことを知って、体験したい。そしてそれを人に伝えたい。そうすることで、目立ちたい。自分が目立つことで他人の世界観に影響を与えていきたいと思っています。それを実現するにあたって前提となるのは、いい投資を受け続けられること。「神話の力」という本に、「冒険こそ冒険の報酬だ」という言葉があります。それを僕は、いい投資を受けて面白いことにチャレンジし、それに対して結果を出すことでさらに面白いことにチャレンジする機会が与えられるのだ、という意味だと解釈しています。もっともっと、冒険を求めて、貪欲に生きていきたいです。

この記事を書いた学生ライター

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