全社員を対象とした上限日数なしのリモートワークを導入したり、サイバーエージェントと新規事業の立ち上げを行う共同プロジェクト「FUSION」を立ち上げたりと、リクルートグループは働き方の新しい時代の働き方を模索している。
そんな中、リクルートホールディングスが学生から社会人を対象に行ったキャリア観形成イベント「REAL」。「挑戦する人に新たな可能性を」というコンセプトのもと、「海外」「起業」「テクノロジー」「爆発的成長」の4つのテーマに興味を持つ人が集まり語り合う少人数イベントである。リクルートのユニークな現役社員、時にはOB/OGも巻き込み、少人数の学生向けのパネルディスカッションと座談会を行った。本記事では、4つのパネルディスカッションのうち「起業」と「テクノロジー」について紹介する。
リクルートという社名を聞いて、どんな印象を受けるだろうか。多くの人が「起業」というキーワード、もしくはそれに纏わる言葉を思い浮かべると思う。事実、副業が許可されているリクルートでは、自身の会社を持ちながらリクルートで働く社員も存在する。今回の「起業」にまつわるトークセッションに登壇したのは、リクルートライフスタイル所属の前島恵氏、リクルートホールディングス所属の苅谷翔太郎氏、そしてリクルートOBの藤田真裕氏が登壇。ダブルワーク、社内起業、そして独立を選んだ3者がそれぞれのキャリア観と会社について語り合った。
(写真左より)前島恵氏、苅谷翔太郎氏
リクルートライフスタイルでエンジニアとして働きながら、現在「Port Lounge」というアプリを開発している前島恵氏。学生時代にはニュース解説メディア「Credo」を立ち上げ、運営している。前島氏はなぜ大企業で働きながら自分の会社を持つ選択肢を選んだのだろうか。
前島氏:学生時代は、起業してサービスを作ったりという形で何回もバットを振ったけど、なかなかホームランが出せなかった経験があります。バットを振る回数を増やしながら、実力をつけたくて、人材輩出企業として実績のあるリクルートに入社しました。今リクルートでは保険系のサービスの開発責任者をやっていて、期待通り若手の裁量が大きくてものすごく成長できる環境だと感じています。それに加えて、最近はリクルートの同期と、旅行に行った人とこれから行く人が動画を通して交流することができるアプリ「Port Lounge」を開発しています。このアプリは、リクルートで働いているうちに見えてきた、大企業ではどうしてもサービス開発がしにくい領域にフォーカスしたものでもあります。
登壇者の2人目は、リクルートのネット領域に新卒入社し、入社4年目でリクルートの社内起業制度であるNewRING(現RecruitVentures)で準グランプリを獲得。リクルート社内の新規事業組織で事業立ち上げを続けてきた、苅谷翔太郎氏。現在はスマホでテレビが見られるアプリ「エムキャス」を運営している。苅谷氏はいくつも企画を立ち上げ、壊す中で「エムキャス」という答えにたどり着いたという。
苅谷氏:高校生からお金を稼ぐのが好きで、リクルートには副業ができること、事業開発者が多く在籍していること、社会的意義のあることをやっていることが理由で入社しました。今は「エムキャス」というサービスを企画・運営しています。東京オリンピックの開催決定がすごく嬉しくて、2020年に東京オリンピックに携わりたいと思ったのがきっかけです。そして、携わるのならテレビだと。その段階でエムキャスというサービスを思いつきました。数あるコンテンツの中でテレビのコンテンツが一番質が高いと思っているんですけど、それがテレビというデバイスに閉じ込められているがゆえに届いていない。なので、テレビ番組をスマホやタブレットで見られるようにインターネットに開放しようと考えました。東京オリンピックまでには全国のテレビ番組がインターネットで見られるようにと考えています。
( 藤田真裕氏 )
最後に、5年以内の起業を目標にリクルートに入社した藤田真裕氏。リクルート在籍中にいくつか会社を立ち上げるも、入社8年目の2014年に独立。ギフト・プレゼント領域でシンガポールを拠点にサービス展開を始め、グローバル展開を狙っている。なぜ、藤田氏はグローバルを視野に入れ、シンガポールで起業したのだろうか?
藤田氏:学生時代も起業は経験していましたが、そこで感じた「とにかく力をつけたい」という思いから事業をやらせてもらえるリクルートに入社しました。リクルート時代にはグローバル企業と会う機会が多くて、グローバル企業はとにかく伸びているし、影響範囲も広くて面白いなと感じて、日本ではなく、シンガポールでの起業を選びました。僕がシンガポールで起業しているのを見て、面白いなと思ってくれる人が出てくれば……と思ったからです。「他の人と違うことをしなきゃいけない」とは常に感じています。
続いて取り上げるトークセッションは「テクノロジー」。一昔前までは営業の会社というイメージが強かったリクルートだが、現在はIT人材の採用を強化し、営業とITの力で、世の中にある「負の解決」に取り組んでいる。登壇したのは、リクルートライフスタイル所属の渡瀬丈弘氏、リクルートライフスタイル所属の佐橘一旗氏、リクルート住まいカンパニー所属の片山雄介氏。
(写真左より、片山雄介氏、渡瀬丈弘氏)
大学時代に複数社でのエンジニアインターンを経験し、2013年にリクルートに入社した片山雄介氏。現在はリクルート住まいカンパニーにてUXエンジニアとして、UXデザインを軸に時にはエンジニアとして手を動かし、「世界初」の取り組みを日々追求している。片山氏はエンジニアリングのみにこだわらず、企画やUI/UXにも取り組む理由をこう語った。
片山氏:学生時代エンジニアをやっていて、モノを作ることはできるようになっていたのですが、それに加えて「良い」サービスを作りたいとずっと思っていたんですよね。意外と、エンジニアとして活躍できても、カスタマーのことも一緒に考えられる人は少ない気がしていて。そこの人材になるためのキャリアを積みたいと思いました。
今そういうキャリアを積めているのはリクルートならではだと思っています。「こういうキャリアを歩んでください」ではなくて「こういうキャリアを歩みたいんで、こういうことやらせてください」という会社なので、自分のやりたいことがあれば、会社はそれに対してかなり支援してくれていると思います。
( 佐橘一旗氏 )
続いて、片山氏と同じく2013年に新卒入社した佐橘一旗氏も事業・組織・システムのアーキテクト・エンジニアを目指し、エンジニア以外にも組織開発に取り組んでいる。佐橘氏は、エンジニア以外に取り組み理由についてこう語る。
佐橘氏:いかに使われるものを作るかに興味があるんです。作ったものを使ってもらうためには、作るプロセスを改善しなくてはいけない。そのために、すそ野を広げています。また、チームビルディングとエンジニアは同じものだと思っていて、エンジニアの延長線上でチームビルディングもやっているんです。
続いて佐橘氏はリクルートのイメージについて「入社当初はリクルートにITのイメージはなく、イケてない会社でした(笑)」と指摘。では、リクルートの良いところ・悪いところについてはどう捉えているのだろうか。
佐橘氏:「リクルートは営業の会社」と昔から言われていますけど、それが強みだと思います。toBのコミュニケーションポイントを持っていることが本当に強い。あとはホットペッパーやじゃらんなど、知名度のあるメディアを持っていることですね。相手から「一緒に組みませんか」と言ってもらえますから。一方で、イケてないと思うのは、既存のシステムが足かせになっている部分です。守る・破る・離れると書いて「しゅはり」っていうのが今社内の動きであるんですけど、中のシステムを一気にコンパクトに作り直そうとしている真っ最中です。
最後に、新卒で広告代理店のシステム開発会社に入社、システム開発やコンサルティングに従事していた渡瀬丈弘氏。「自分の手でサービスを生み出し、それを事業として動かしてみたい」という気持ちが強まり、入社4年目の2011年7月にリクルートライフスタイルに転職したという。リクルート入社3年目に、受付管理アプリ「Airウェイト」を企画立案。現在はプロデューサーとしてサービスの成長に従事している。コンサルからリクルートへ、大きく社風が違う会社へ転職した渡瀬氏はリクルートの良さについてこう語った。
渡瀬氏:リクルートは課題をそもそもを設定するところ、つまりは「こういう世界を実現したいんだ」というところから始まるんです。実現したいものが決まっている人には面白いはずだと思っていますね。僕は事業を進めたいという思いで事業会社に来たので企画・起案をしまくっていて、もともとロケーションソーシャルのサービスもやっていたんですけど、今Airウェイトのプロデューサーもしていて、さらに社内コンテストで新しく検討を進めている案件もあります。考え抜く機会と、人もアセットもある珍しい会社だなと思っています。
残り2つのトークセッションでも「リクルートの良いところ・悪いところ」について社員が本音で語り合う場面が見られた。良いところについては「裁量権が大きい」や「良きライバルが多い」という点が挙げられていたが、その反面、悪いところは「全社員にエビ反り成長を求める」という指摘も。リクルート特有の企業文化が反映された、メリット/デメリットとも言える。