早稲田大学卒業後、新卒1年目にして独立、株式会社ライボを立ち上げた小川裕太さん。運営するキャリアに特化型Q&Aサービス「JobQ」は、開始から約5ヶ月で質問数1,000問を突破し、好評を博している。大学時代のサークル創設に始まり、「ないなら自分で作る」をモットーに生きてきた小川さんに聞く、同年代の「さとり世代」に対するメッセージとは。
2. ついに起業。でもパートナーに逃げられて……。
3. 「やりたいことが無い」と言う人は、自分に言い訳しているだけ
———まず早稲田大学に入学して、1年生にしてサッカーサークルを設立されましたよね。早稲田には他にもサッカーサークルはいくつかあったと思うのですが、新しく作ろうと思ったきっかけは何だったんですか?
小川さん:当時、早稲田のサッカーサークルには2つの傾向があって、真剣に活動しているところと遊びのところに分かれていました。私は高校まで真剣にサッカーをしていたので、その真面目で強いところに入部しようと思ったのですが、そこは朝練があったんですよ。でも1年生は1限に必修があるので、朝練には出られない。だから、試合に出してもらえない状況だったんです。スポーツをやっている人なら誰しも試合に出たいはずで、もちろん私もそうでした。けれども、他のサークルでチャラチャラやるのも嫌だった。なので「ないんだったら作ってしまおう」と思ったわけです。
———「なかったから自分で作ろう」という、アントプレナーシップが当時からあったのですね。小川さんが設立したサークルは、100名規模まで成長したんですよね?
小川さん:今思えばそうかもしれないですね。当時1年生なのに、新歓で勧誘されるのではなくて、勧誘してまわるという(笑)。「やろう、やろう」と声をかけまくりました。先輩方にばれないようにこっそり勧誘していたのですが、ばれてたら追い出されていましたねきっと(笑)。結果、立ち上げた時には25人ものメンバーが集まりました。でも1年間で9人に減ってしまって、サッカーサークルなのにサッカーができない人数になってしまったんです(笑)。今では笑えますが当時は笑えなかったですね。
その後、リーグへの参入や新入生の勧誘に必死でした。そして何より自分の中でリーダーとしてのあり方を考えたんです。みんなが楽しんでくれる、サークルに来てもらうにはどうしたらいいか考えました。リーダーとして、部員に仕事を任せることの重要性をこの時知りましたね。
こうして徐々に増やしていき、最終的には100名弱くらいになっていました。
———3年目で100人はすごいですよね。体育会系の人がIT系に就職するイメージがないのですが、どう就活をされたんですか?
小川さん:早稲田にはベンチャー起業家養成基礎講座という授業があるのですが、私たちの年にゲスト講演してくれたのが、ディー・エヌ・エー創業者の南場智子さんだったんです。話を聞いて、「南場さんみたいになりたい」と思いました。3年生の春だったのですが、その時点で就職活動中に受ける業界はコンサルかベンチャーに決まりました。今考えるとその時期にしか触れることのできない会社や業界ってたくさんあるのでもっと幅広く見ておくべきだったかなとも思いますが…
———そこから決済サービスのネットプロテクションズを選んで入社したのはなぜですか?
小川さん:コンサルが選択肢として消えたのが、4年生に上がる直前のタイミングでした。私たちの年はまだ12月の就活解禁だったので、まさに真っ只中の時期でしたね。とある小さなコンサルティングファームのインターンシップに参加した時に、「小川さんはコンサルに向いてないよ。トライ&エラーを繰り返せる事業会社の方が向いてるよ」と言われて、納得してしまいました。
そこでITベンチャーの中から選ぼうと思い、数社比較してネットプロテクションズを選びました。決め手は2つあります。1つ目は人ですね。ありがちですけれど、人とか社内の雰囲気が一番大事だと思っていました。同期も含めて面白い人が多かったですね。
2つ目は事業に紐づく社内の雰囲気です。1つの事業を軸に社会にインパクトを出すというところに、サッカーと同じような感覚を覚えました。みんなでゴールを目指すというところですね。
———サッカー関係の仕事に就こうとは思わなかったんですか?
小川さん:思わなかったです。コーチになるくらいなら独立してサッカーチームを買った方がおもしろいと思いました。
——— 起業思考ですね、本当に!
───ネットプロテクションズには何年間いらっしゃったんですか。
小川さん:丸1年です。もともと起業したいなと思っていて、「一緒にやろう」と話していた人がいたのですが、彼が会社をやめたのが1年たった頃だったんです。私は当初3年くらいはネットプロテクションズにいようと思っていたのですが、起業の言い出しっぺは自分だし、彼と同じタイミングでやめました。でも、その彼が逃げてしまったんです。どこかに行ってしまいました(笑)。
———そうなんですね。新卒採用ツール「Colabo」を始めている途中に逃げてしまったんですか?
小川さん:始めるずっと前です。社内の人や当時のお客様にも退職の旨は伝えていて、「3月にいよいよリリースするぞ」という段階で、音信不通になりました。今も理由は分からないままなんです。でも「まあ、いいか」と。人って難しいですよね。今となってはいい経験です(笑)。
———社会人1年目で起業することのリスクは考えなかったんですか?
小川さん:少しは考えました。でも、「死にはしないだろう」と思って。自分の中で、「独立してから丸1年やって成功しなければやめる」というリミットも決めていたんです。
———なるほど。Colaboという新卒の領域に踏み込んだきっかけは何ですか?
小川さん:今も変わらないですけど、ミスマッチを減らしたいんです。とにかく少しでも楽しく働く人を増やしたいと思っていますし、働くことについて考える、そのための材料が手に入る場所を作りたいという気持ちがありました。
———その後、キャリアや転職に特化した匿名相談Q&Aサービス「JobQ」には、どうつながっていったんですか?
小川さん:現在ライボの取締役をしている小谷がソーシャルリクルーティング(現:ポート株式会社)出身だったので、Colabo立ち上げの時に定期的にコンタクトをとっていたんです。Colaboをやりつつ新卒採用の市場調査をしていたのですが、新卒採用の領域をやるのはインパクトないなと。
小谷は退職後にバックパックをしていたのですが、彼が帰ってきた段階で、転職の領域で新しくサービスやりたいなと思って提案したら、彼も同じような思いを持っていることが分かったんです。なので、一緒に立ち上げることになり、今に至ります。
———小谷さんと一緒にやると決めた理由は?
小川さん:小谷とは、最初に人材のマーケットに対する考え方をディスカッションして、ビジョンを共有しました。そこでわかり合えたところは大きいですね。その後は家庭に関してなど、プライベートなところまで話したこともあります。彼は、とにかくいいやつなんです(笑)
———JobQが目指す世界観とは? どんな課題があると思いますか?。
小川さん:まず、ミスマッチを減らしたい。原因としては情報がネット上に落ちていないんですよね。やっぱり人が持っている情報には価値があるじゃないですか。私たちはそれを、JobQでシェアして、コミュニケーションができるようにしたい。人材の領域は、定量的に計れないことが多い分、人口知能では絶対に解決不可能だと思っています。だから、時代に逆行して「人」を重視しましたね。
———なるほど。最後に、「何かしたいけど行動に移せない」という学生が多くいるのですが、そういう読者に向けて、小川さんからアドバイスがあればぜひお願いします。
小川さん:「何かしたいけど」って、何がしたいんですかね。
———それが見つかっていない人が結構多いです。
小川さん:まず、何がしたいかというのは、大小はあってもみんなが持っていると思いますよ。言い訳して、実行に移せないだけじゃないでしょうか。
私はサッカーがしたくてサークルを立ち上げたし、起業したかったのでベンチャーに入りました。読者の方も、多分やりたいことは決まっていると思います。それをまず言葉にすることから初めてみたらいい。言葉にしたら、やるべきことが見えてくると思うんです。そうしたら、行動すればいいと。
リスクもありますが、やりたいことを目指している人は魅力的に見えるので、応援してくれる人が絶対にいます。だから、言葉にして人に伝えることから、始めてみればいいんじゃないかな。やりたいこと、絶対あると思いますよ。それは彼女といちゃいちゃすることかもしれないし、ビジネスすることかもしれないし。なんでもいいと思うんですよね。幸せは人それぞれですし。
———それを恥ずかしいと思って隠すのではなくて、どんどん言葉にして、行動したら、実現するかもしれませんもんね。
小川さん:そうですね。私もJobQを成功させてみせます。みんなが「働く」に関する情報を取得できる場所、「働く」を考えるきっかけを提供できる場所を作りたいですね。
早稲田大学商学部卒業後、株式会社ネットプロテクションズに入社。新規代理店の開拓やシステム連携交渉など、アライアンス営業に従事する。その後同社を退職し就職支援サービスColaboをリリースするとともに、学生の就職活動をサポート。外部企業との合同イベントの企画、運営や大学にてキャリア講義を行う。2015年2月、株式会社ライボを創業し、代表取締役CEO就任。