頑張っている学生が「意識高い」と笑われる日本は末期症状である。紀里谷和明監督インタビュー

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紀里谷 和明(きりや かずあき)
1968年熊本県生まれ。83年15歳で渡米、マサチューセッツ州ケンブリッジ高校卒業後、パーソンズ大学にて環境デザインを学ぶ。94年写真家としてニューヨークを拠点に活動を開始。数々のアーティストのジャケット撮影やミュージックビデオ、CMの制作を手がける。2004年、映画『CASSHERN』で監督デビュー。2009年には映画『GOEMON』を発表。著書に小説『トラとカラスと絢子の夢』(幻冬舎)がある。2014年4月よりメルマガ「PASSENGER」発行。最近では、三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBEのミュージックビデオ『Unfair World』が話題に。最新作のハリウッド映画『ラスト・ナイツ』が全国公開中。


「既得権益から逃れなければいけない」と思った

ーー紀里谷さんは15歳で渡米されたわけですが、どういうきっかけで渡米を決断したのでしょうか。

紀里谷:既得権益の中にいたら自分がダメになると思った。日本人であるということは、既得権益ですよね。例えばシリアに生まれてしまうと、自由な選択肢もチャンスもない。日本に生まれたことが当たり前で、それが権利であるかのように振る舞う人が多いと思いました。そういった環境の中にある教育や教師を目の当たりにして、「この既得権益から逃れなければいけない」と小学生の頃に思いました。中2でアメリカに行かせてもらったんですが、その時は、留学というよりは移住のつもりでした。父親に「帰ってくるところはないと思え」と言われていたので。

ーー小学生ながら、そういったことを考えていたなんて驚きです。

紀里谷:「既得権益」という言葉は知らなかったけれど、そういった感覚はありました。上級生・下級生という概念がある中で、上級生というのは既得権益じゃないですか。それが幾重にも積み重ねられていて、日本は封建制度を未だにやっている。そこに違和感を覚えたし、嫌悪していました。

ーーアメリカで受けた教育をどう感じられましたか?

紀里谷:皆さんは、教育を教育機関で行われることだと誤解している。学ぶということは学校の中だけではなく、むしろ学校の外で学ぶことのほうが多いんです。学校の中で学ぶことは知識でしかない。そして、知識ほど曖昧なものはない。歴史にしても事実として教えられたことが、教科書が改訂されるたびにころころ変わる。10年前に正しいと言われた情報も変わることがある。良い例が、天動説と地動説ですよね。なので、僕は知識に重きを置きたくない。知らなければいけないことは知ったほうがいいけれども、それを信じていない。学校の外で学ぶ本質的なことにしか、僕は興味がないです。

ーーそういった背景から大学を中退された?

紀里谷:僕が「大学を中退した」ということ、それすら知識であり、情報です。そんなこと、どうでもいいと思う。経歴、年齢、どこの会社に入る、どんな仕事をしたのかも無意味だと思います。その人がどのように感じて、どのように行動したのか。そしてまた、どう感じたのか。そこしか信用しない。

肩書きではなく、その裏にある「欲求」を考えよう

ーーその後、デザイン会社を20歳の頃に設立されたんですよね。会社を若い頃につくるのは、なかなかチャレンジングなことですよね。

紀里谷:人からなんと言われようが、やる人はやるんですよね。外的要因で、人の行動原理が変わるなんてことあるのかなって思う。リスクを感じている人は、勝手に感じていればいいと思う。なんで起業しようとするのか。根源はどこにあるのか。自由になりたい、モテたい、もっと有名になりたい、人から認められたいとかね。そこに正直にならないと、すり替わっちゃう。「人のため」と言っていても、それって結局エゴだからね。

ーー自分のエゴを認めることで何がうまれるんですか。

紀里谷:まず正直になれますよね。正直にならないと、何のためにそれをやっているのか、わからなくなってしまう。「こんなに人のために頑張っているのに」と思ってしまうんですよね。

ーーそれでも「人のため」と思い込まないと、会社やサービスってうまくいかないのかなと思います。

紀里谷:思い込むというよりは、人が喜んでくれれば自分も嬉しい。それでいいんじゃないですか。僕は自分が撮りたい作品を撮る。それを人が見てくれて、良かった・面白かったと喜んでくれたら、僕も嬉しい。かといって、自分にエゴがないかというと、ありますよ。だから映画をつくる。そこをきちんと整理しないと、混乱が起きるような気がするんです。

若い頃に会社を起業して失敗したなんて、どうでもいいことになってしまう。失敗したって、もう一回やればいい。失敗するのが当たり前の話です。「紀里谷が20歳の頃に失敗したから、僕も大丈夫」というように記事にしたいのかもしれませんが、それ以前の話ですよね。自分はどうしたいのか、どういう人間でありたいのかが重要。そこがわからない人たちが多い。皆が起業しているから、僕もしなきゃいけないのかなとか、かっこいいからとか、今ブームだからとか。会社を登記さえすれば、社長には誰だってなれる。だから形の話になってしまうんですよね。社長という肩書き、会社という形、起業という形、そこだけを考えるから変になってしまう。その裏にある哲学を追わないといけない。

きっかけは与えられても、答えは与えられない

ーーまわりの評価を気にせずに、自らを貫き通す原動力はどこから来ているのですか?

紀里谷:「貫き通さなかったらどうなるんだろうか?」と考えてみてください。人から何か言われて、やりたいことをやめようとか、言うのをやめようとか、そうするとどうなりますか?

ーー悔しいけれど、どこか安心する気持ちがあります。

紀里谷:答えが出ていますよ。貴方が決めることですよね?

ーーでも、自分を貫き通したいんです。どうやったらそれができるのか知りたいです。

紀里谷:僕が言ったところで、それはできないですよ。あなたがやるしかない。僕と貴方は根本的に違うから。じゃあ、貴方が死ぬ間際に自分の人生を振り返ります。誰かの言うことを聞いてしまって自分のやりたいことができませんでした。どうですか?

ーーやっぱり悔しいです。

紀里谷:でも、安心はあったんですよね? 僕はそうしないし、そう思わない。自分のことが好きになれないもの。自分のことが好きか嫌いかだと思うんですね。でも、僕はその人が納得をして幸せであれば、いろんな生き方があっていいと思う。安全な道でいいと思う。しかし、文句を言ってはいけない。「本当はこれをやりたかったけど、あなたが生まれてきたから夢を捨てたのよ」と、親が言ったりするけど、それは、良くないですよね。

参考書なんてないんですよ、この世界に。きっかけは教えてもらえるかもしれないけれど、その通りにやったら、うまくいくのかって話ですよね。そういうふうに考える人は「あなたが言ったからこうやったのに、うまくいかなかった」と言うわけ。また人のせいになる。どこまでいっても人のせいになっちゃう。だからその場で自分が決めるしかない。どういうふうに生きるのか、どういう選択をするのか。人は他人のことなんて、全然気にしていないから。

ーー自分自身をどうやったら強くできますか?

紀里谷:どうすればいいと思いますか? あなたは弱いんですか?

ーー僕は強いほうだと思っています。

紀里谷:それだったら聞く必要ないですよね。「記事を読んでいる人たちに対して」と言うのかもしれないけれど、それこそ想像でしかない。きっかけは与えられても、答えは与えられない。マラソンだったら、自分が走らないといけない。「どうやったら勝てるんですか?」と言われても、「それは練習するしかないだろ」としか言いようがないですよね。自分がそこに向かって行かないとさ。

ひとりで何かする、ひとりでいることには人は不安を持つ。けれども、所詮そういうものですよね。泣いても笑っても、それは肯定するべきだと思う。そんな簡単なことじゃないんだから。人生だってそうですよ。日本国に生まれたからだいぶ楽な人生を送れているんですよね。シリアやコンゴに生まれたとしたら、物凄い困難が待ち構えている。それが人生だと思う。

学生が「意識高い(笑)」と笑われる日本は、末期症状である

ーー命かけてやっている学生が「意識高い(笑)」と言われる。なぜ日本はこうなってしまったのか?

紀里谷:楽だから。バカにしたって、生きていけるから。日本が何にも食べるものがない社会だったら、みんな必死になって食べ物を探すと思いますよ。食べ物を探しているやつに「お前意識高いな」と言いますか? 沈没しそうな船から脱出しようとしているやつに「お前意識高いな」と言いますか?

そういったことが言えるのは、平和の証だから良いことかもしれない。ただ、そうしているうちに船が沈んでいることをわかっていない。だから僕はそういった人たちと関わらないようにしていますし、そういった人たちはその船と一緒に沈めばいいと思う。僕は「船の外に出たい」という人と一緒に何かしたいし、性別・年齢・国籍に関係なくそういう人とつながっていって、船を出てもっと素晴らしい何かをつくることもできるんじゃないですか。ただ言わせてもらうと、その「意識高いね」という感覚は、末期的症状だと思う。

ーー学生の中でも、やるやつはやる。起業するやつはするし、しないやつはしない。それは外的要因ではなく、根源的には生まれ持った特性なんですか?

紀里谷:生まれ持った特性と、環境・状況を見る力。行動を起こさない人は、状況が見えないわけですよ。船が沈んでいる事実に目が行かない。「全然大丈夫、浮かんでるじゃん」と言っている。「でも、これ穴あいてませんか?」と言われても気づけない。

穴があいていないと言う人に「穴があいている」と言っても、彼らは穴を見てもその事実を認めないと思う。今の社会を見ていてそう思いませんか? 環境問題が顕在化して久しいけれど、そんなのないと思っているし、これだけ日本に借金があっても、ないって言うし。

自分に物理的に害が及ばない限り、どんな事実を見せつけても「ない」と言う。そういう人に限って、女子供が乗るべきだった船を横取りして、自分が乗ろうとするわけですよ。一緒に沈んだほうがいいと思います。

ーー最後に学生に対してメッセージをお願いします。

紀里谷:ハウトゥーなんて意味ないですよ。本屋に行ったらハウトゥー本がいっぱいありますよね。楽をして痩せる方法、楽をして大学突破、楽をしてお金持ちになる方法。それが機能していたら、ダイエットできるし、大学にも入れるし、みなさんお金持ちになれますよね。そもそも本当に痩せたいんですか。なんで痩せたいんですか。なんでお金持ちになりたいんですか。いくら必要なんですか。「金はないよりあったほうがいい」ではだめなんです。

だから、20代の時はなんとなく起業してうまくいかなかった。そうじゃなくて「やる」。やらなくても、自分を好きになれるかどうかですよね。みんな人から認められることによって、自分を肯定できるかもしれないと思っている。認められた、有名になった、お金持ちになった自分を見て「俺イケてるじゃん」と言いたいだけなんですよ。そんなことよりも、鏡に映っている自分はなんなのか。それがどういうものなのか、考えていかないと。どんなにお金持ちでも、自分のことが嫌いな人はいっぱいいますよ。そうじゃなくて自分を好きにならなければいけないんですよね。


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