安定よりも社会のための仕事を。森川亮氏の描く動画メディアの未来。

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モリカワさんアイキャッチ

森川 亮(もりかわ あきら)さん 筑波大学(情報工学専攻)を卒業後、日本テレビ入社。ソニー、ハンゲーム(現LINE)を経て、2007年10月LINE株式会社代表取締役に就任。2015年3月に退任し、同年4月C Channel代表取締役に就任。

アルバイトに明け暮れた学生時代

ーー森川さんは学生時代にジャズ研究会に所属されていて、バイトとサークルであまり勉強していなかったと聞いたことがあるのですが、実際にはどういった学生だったのでしょうか?

筑波の情報工学科の専攻でしたが元々コンピュータに詳しくなかったんです。当時はそういう学科はオタクの人しかいなくて、かなりギャップに苦しみ、友達もできず、学校に行かなくなった、そういう感じなんです。サークルだけ行っていて、加えてアルバイトをしていたという4年間ですね。そうすると卒業が危うくなってしまって、卒論は無理矢理音楽と組み合わせてシンセサイザー(注)の研究をやりましたね。

ーー皿洗いの時給650円のアルバイトされていたそうですが、そういった学生時代の経験は今にも活きていますか?

今に活きてるかなぁ・・・(笑)。筑波って本当に仕事がなかったので何でもやらないといけなかったんですよね。最初にピザ屋で働きまして、その後はそば屋で働いて、ラーメン屋で働いて、カフェで働いて、レストランで働いて…。飲食系だけでも10店舗くらい経験しましたね。しいて学んだことと言えば、「サービス業とは何か」が分かったことと、あとは人間関係です。社会には色んな人がいるなということを知りました。田舎ではありますけどヤクザみたいな人もいれば、おばあちゃんもいれば。学校だけで勉強してるとそういう人に会わないので貴重な経験でした。

ーー本当にたくさんのアルバイトをされてたんですね。印象的だったアルバイトはありますか?

パチンコの宣伝カーのバイトですね。免許を取って1週間でパチンコの宣伝カーを運転したんですけど、田舎の道がわからず、民家に突っ込んじゃったんですよね。それでバイトどころか弁償金がすごくて(笑)。あとはバーテンダーのバイトもしていたんですよ。色んな人たちと交流があって、悩みを聞いてあげたりしたのが懐かしいです。

女性向けのスマホ動画に注目

ーーC Channelさんの事業について具体的におうかがいしたいです。

「女性のための動画ファッション雑誌」ということで、ファッション、ヘアメイク、グルメ、旅行などのテーマに合わせて動画を提供しています。動画はクリッパーと呼ばれるモデルさんやタレントさんたちが、自分でスマートフォンで撮って編集してアップをするという形で、縦長の動画のサービスになっていますね。今は日本以外にニューヨーク、ソウル、台北、シンガポール、バンコク、ドバイ、からも動画が上がってきていますし、日本でも東京以外だと札幌と福岡、大阪からもアップされている状況ですね。「女性だけのスマートフォン通信社」といった感じになりつつあります。今まで通信社というと、記者が取材に行って、写真と記事を起こしてそれを原稿化してたわけですが、それがスマートフォンで動画で送られてくるというイメージですね。

ーー他にも選択肢があったなかで、なぜこの事業を始めようと思われたのでしょうか?

まずはメディアの事業をやろうと思いました。日本を元気にするためにはメディアから発信するメッセージを変えるべきだろうと感じていました。そういった思いでメディアの事業に決めました。メディア業界の変革の波の中で特にテレビと雑誌が変わろうとしています。そうすると動画だなと。動画の市場を見たときに、スマートフォン動画がこれから伸びてくるだろうというのは分かっていました。そしてスマートフォンは縦長だからということで縦にして、スマートフォンで撮って編集することでコストも安く早くものが作れるだろうと考えました。なぜ女性向けかというと、今女性向けのメディアが多いのですが、新しいものに対して女性が敏感だということもあります。また女性向けのファッション雑誌というのは市場がかなり大きくて、それが今変革しつつあるので、テレビの領域と女性向け雑誌の領域、両方掛け合わせることによって大きな市場が取れると思ったんです。

ーー動画を撮影してから編集・公開まではどういった流れなのでしょうか?

ケースバイケースなのですが、内容によってはこちらで撮る場合もありますし、向こうから送られてくる場合もあります。ですが、一番楽なパターンはクリッパーさんごとに撮って自分で編集して送ってきたものをチェックしてすぐアップするという感じですね。そうでない場合、広告などはこちらで撮っていますね。撮りにいって編集をして配信する日を決めて、そのスケジュールに合わせて公開するという流れです。

ーーケースバイケースでユーザーさんが上げる場合もあれば、クリエイティブで作ってアップするパターンも存在するというわけですね。

基本的には最後はこちらで今は上げています。最終的な確認です。ただ今後はすぐに上げられるような形に変えようと思っています。どうしてもメディアの最初というのはブランディングが大事なので、なんでもかんでもということになると他と変わらなくなってしまうので、僕達なりのセレクションを行っていますね。

ーー撮影するクリエイターさんの質が重要になってくると思うのですが、応募がある中でセレクションして選ばれていらっしゃるのですか?

どうしても撮られることに慣れている方が多いので、自分で撮って編集もして文章も書いてって結構大変なんですよね。ですのでまじめな人じゃないと長続きしないかなという印象はありますね。

動画の図書館を築き上げる

ーー実際に起業されて半年ほど経って、いま実現したい世界に徐々に近づいてきているというイメージはありますか?

ちょうど今年の9月で月間300万回再生いきまして。とてもいい感じです。理想は、世界をつなぐ女性向け動画メディアのイメージでして、世界中からほぼリアルタイムで色んなものが上がってきて、それを世界中の人が楽しめる、そんな形になるといいなと思いますね。

ーー実際にその世界を実現するとどういったことが起こると考えていらっしゃいますか?

まずは雑誌を買う必要がなくなりますよね。位置情報と連携すれば、どこか旅行に行ったときにその近くにある情報をC CHANNELで探して見ることができます。近くにおいしいレストランがないかを探してすぐに見つけられます。海外の人が日本に来たときにそうやって近くのレストランを探すこともできます。買い物にも役立つと思いますね。今後は一般の人もどんどん参加して動画の山ができるイメージです。動画の図書館を一緒に作るような、そういう形にもなると思います。

ーーC Channelさんの中でスターを生み出したいとおっしゃっていたと思うのですが、実際にクリッパーさん、クリエイターさんの中で、有名になってきていると方は出てきているのでしょうか?

例えば勝俣さんという女の子は今度ローソンさんのCMに出ることにもなっています。彼女はつい最近まで大学生だったんですが卒業してここに入ってクリッパー兼運営担当です。クリッパーさんがCMに出るなどのチャンスがある環境にはなってきていますね。

ーー森川さん自身はどんな方と一緒に働きたいと思われますか?

言われたことしかやらない人ではなく、言わなくても予見できる人だといいですよね。特に立ち上がったばかりの会社はスピードが大事ですから、誰かの指示を待っているとスピードが遅くなりますよね。勝手にみんな動き始めて、逆に僕がいなくてもみんな回るような、そういうのが一番理想ですね。そこから次に新しいものが生まれてきて、色んな学生さんが入ってきて、その中で新しい価値を見出して一緒に成長を実感できるので、そういうのも魅力ですね。

ーー具体的に学生が行っているのはどんな業務なのでしょうか?モリカワさん5例えば中国人の女の子で中国語の翻訳をやっている人もいますし、画像のアップや文章やタイトルのチェックをしている人もいますね。動画に出ちゃった人もいますしね、踊ったりとか。(笑) 柔軟にその場その場で業務が決まるので、正直なところ多岐にわたっていますね。

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プライドなんて持っていても意味がない

ーー今、日本発で世界に広がっているサービスは、まだほとんどないのが現状だと思うのですが、森川さんはどのように考えていらっしゃいますか?

日本だけでも利益が出るから、あえて海外に出る必要がないというのも正直あると思います。ただ未来を考えたときに、日本はどんどん人口も減り、そうなると経済規模も小さくなるわけですから、世界である程度成功しないと競争に勝てないということになると思うんですよね。一方で、日本の場合島国ですから、海を渡るだけで大変だというイメージがあると思います。ですが、他の国が地続きでバスで簡単に外国に行ける状況であるように、それにならって気軽に海外でもやってみたらいいんじゃないかと思います。我々も中国語と英語を年内に開始するんですけど、サクっと始める感覚なんですよね。「やっちゃいました!」という感じで始めて、結果見てからまた判断すればいいと思います。難しく考えてやらないよりは、まずやって数字見ながら判断した方がいいと感じています。

ーーインターネットの発展などでメディアの変革期にあると思うのですが、森川さんはどう捉えていらっしゃいますか?

インターネットの普及で様々なメディアが出てくると「メディアとはそもそも何なのか」という話があるじゃないですか。だからなかなかそこまで議論する余裕がなかったりしますよね。どちらかというと生き残るためには売り上げを上げなければならない、という必死な状況だと思います。一方でメディアって公共性もあるじゃないですか。だから単純に刺激的なものをばんばん流して、広告の売り上げが上がったからといって、それでいいのかというとそういうものでもないと思います。我々はその両方が実現できるような会社にしたいですね。インターネットメディアはどちらかというと作るよりも集めてきて編成して出すのが一般的じゃないですか。そうするとどうしても刺激的な記事を集めてきて大きく見せるスタイルになっちゃいますよね。僕らの場合はちゃんとコンテンツを一から作って、それを配信するという姿勢でやっています。

ーー新たに会社を設立されて、今までと打って変わって泥臭いこともやらないといけなかったと思うのですが、プライドが邪魔したりというのは無かったのですか?

元々そんなにプライドがないものですから。プライドって意味がないですよね。プライドを持っていて何かいいことがあるんだったらいくらでも持ちますけどね。マイナス要素しかないですから。そういうものは早く捨てた方がいいと思っています。例えば料理の世界で言うと高級レストランのシェフからバーベキューを始めたみたいな感覚だと思うで、そういうのは気楽ではありますよね。色んなルールやしきたりがないので自由です。僕の場合は辞めてちょっと気が楽になって、自由にやらせてもらっていますね。

ーー今の方が自分の好きなことができている感覚があるのでしょうか?

少ない人数の方が気持ちは通じやすいです。何千人もいるとなかなか気持ちを通じ合うだけでも大変ですし、様々な問題も出てきますから。間違いなくスピードは早いです。例えば電車の運転手とスポーツカーの運転手だと、スポーツカーの運転手の方が自分の好きな道を走れるじゃないですか。変化が早いですよね。電車は決まったレールの上をぐるぐる回るだけです。大きなものを運転してるというプライドもあるかもしれないですが、脱線してどこかに行きたいと思っても脱線できないですからね。ものは考えようです。僕なんかはパイロットだとしたら、ジェット機を運転しても結局同じところを行ったり来たりするだけだから、セスナで行きたいところへ行った方がいいと考えるタイプですね。

ーーLINEの社長を辞められてから、安定した道を歩むこともできたと思うのですが、なぜ社会のために起業しようと思われたのですか?

そういうのが好きだってことです。世の中のために何かするのが好きなんだと思います。それはラーメンとカレーどっちが好きですか?っていうのと一緒で、好きだからやってることです。なぜ好きなのかは分からないですね。でもやっぱり嫌いじゃ続けられないですよね。

ーー森川さんにとって起業のモチベーションとはなんでしょうか?

生きてる実感じゃないですかね。例えば大きい会社だとどうしても社員1人が部品のようになったり、自分がまっすぐ行きたいと言ってもぐるぐる回り続けなきゃいけないというケースもあります。自分らしい道を歩めば一番生きてる実感がわくような気がします。仮にそれが規模が小さいとしても、です。また、成長することも大事なんです。常に今日よりも明日の方が素晴らしくなるというのをずっと続けるのって素敵じゃないですか。資産が100億円あっても楽しくない人もいます。日々、誰かがお金を盗りにきているんじゃないかとびくびくしながら、人を疑いながら生きている人もいますからね。いずれにしろ、幸せというのは、個人個人の気持ちの問題ですから。自分がいいと思うものをやるのが一番幸せだと思います。

考えるだけでは幸せにはなれない

unnamed-1ーーよく学生の間では、進路において「ベンチャー」か「大企業」か、それとも「起業」かという話が上がるのですが、すべてを経験された森川さんにとって、3つのうちどれが一番楽しかったですか?

起業している今が一番楽しいです。人それぞれなのですが、成功体験がないと人生を斜めに捉えがちになってしまいます。「頑張ってもどうせいいことないんだろう」とか、「世の中ってこんなもんだ」とか、「これが大人なんだよ」、といった感じで悲観的になってしまうと思うんです。そう思ってしまうと未来も暗いですし、やりがいも感じられませんから、頑張って成功したという体験を少しでも多く経験できるのが重要だと思いますね。そういう意味ですと、どんどん沈んでいく業界にいるよりは、どんどん伸びてく業界にいた方が成功は実感できます。地盤沈下がある土地でいくら身長が伸びてもどんどん下がって、目線が下がってしまいますよね。

ーーどういった会社が理想だとお考えですか?

会社の規模に関わらず頑張った結果がきちんと出る環境がいいですよね。それが努力のやりがいじゃないですか。やってもやらなくても変わらない、もしくはいくらやってもダメという環境にいると、すべてがネガティブになってしまいますからね。社員の人の表情を見たり、受付に来ている人の数を見ると、だいたいその会社が伸びてる会社かそうじゃないかわかります。例えば6時定時になってわーっと社員出てきて待っているお客さんも全然いないような会社はやっぱり未来がない会社が多いですよね。みんな早く帰りたくてしょうがないわけじゃないですか。そんな場所で成長はなかなかしないです。

ーー様々な成功者の方と接してきた森川さんから見て、本当の意味で成功を収められている方にはどんな特徴がありますか?

自分でどう思うかだと思います。資産は全く関係なく、自分が思う人生を歩んでいるのか歩んでないのかだけです。歩んでいれば成功じゃないですか。歩んでいなければ成功とは言えないですよね。あとは、行動するかしないかです。自分の人生ですから、幸せになろうと思ったら、自分の思う通りに生きるしかないです。人の言う通り生きて幸せになるとは思えないですからね。考えるのは簡単です。考えるだけでは幸せにならないので。やっぱり行動が大事です。

ーー留学だったり起業だったり何かチャレンジしたいと思うものの行動できていない学生は少なくないと思うもですが、どうすれば一歩を踏み出せるでしょうか?

きっとそこまでやりたくないってことだと思います。何かにチャレンジするより飲み会に行った方が楽しいってことですよね。それはそれで幸せでいいんじゃないですか。別に挑戦したくない人はする必要はないですよね。おそらく本当にそうしたいと思ったら行動に起こすと思います。きっとそこまではしたくないってことだと思いますね。

ーー最近は学生起業家が増えてきています。最後に、学生起業家の方々に対して森川さんからアドバイスがあればぜひいただきたいと思います。

小さくまとまらないで欲しいと思うんです。学生起業家の方の大半は売却することばかり考えてしまう傾向にあるので、いくらでどこに売れるといった情報を交換していると寂しいです。もちろんそれを元手でまた事業を始めるというのはわかるのですが寂しい気持ちはありますね。そもそも何のためにやるのかというと、お金のためにやるということを意味しますから。社会的な意義や使命を考えて行動してほしいなと思います。

森川さんが代表取締役を務めるC Channel株式会社は、若い女性向けに動画ファッションメディアを提供しています。インターン生を募集しておりますので、ご興味のある方は是非こちら↓から応募してみて下さい!C Channel・インターン募集

この記事を書いた学生ライター

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