こんにちは、co-media・エンジニアの佐野です! 今回のインタビューは、第2回のインタビュー以来、約1年ぶりに僕が担当させて頂きます!
というのも、今回インタビューするのは僕の高校時代の同級生の女性なんです。彼女の高校時代は、化学部所属で将来の夢は宇宙飛行士とピアニスト、さらにHipHopのダンスが超絶上手いという、いい意味で「普通じゃない」女子高生でした。
そんな彼女が期待通り大学に入ってからも面白そうなことを色々と取り組んでいたので、このインタビューを通してぜひco-media読者の皆さんにご紹介したいと思います!
ーー最初に簡単な自己紹介からお願いします!
大学では化学科を専攻して、「希土類元素と有機化合物のクラスター」っていう卒業研究してた!せっかく東京に出て来たから、初めはサークルも両手で数えるくらい入ってたよ。ダンスもずっと続けてたから学園祭で踊ったり、ヨット部に入って小型船舶免許を取ったり。あとは、シベリア鉄道でロシア横断もしたし、留学生との交流も積極的にやってた。今年の3月に大学を卒業後は、就職はせず、自分でオランダのオーガニックチーズの輸入事業をやっていて、最近はアイルランドのオーガニック海藻にも取り掛かり始めたところだね。
ーーじゃあまずはロシア横断について聞かせてください!
ロシアには2回行ったんだけど、1回目は21歳のときだから2年前ぐらいかな。ダンサーの女の子と2人で行って、シベリア鉄道でウラジオストクからモスクワまでロシアを横断したんだよね。ずっと乗っていれば5日間ぐらいで着くんだけど、イルクーツクってところで一回降りたから、8日間ぐらいで横断したかな。その後モスクワやサンクトペテルブルクえで観光して、全体では2週間ぐらいの旅行だった!2回目は、知り合いのロシア人が旅費を出してくれて、めんどくさいビザ申請とかも全部やってくれて、運良く行けたの(笑)。周りの友人に話したらみんな「ロシア人に旅費出してもらうとか怖くない?私だったら絶対行かない。」って言ってたけど、当時は「え?私は行くよー」みたいなノリだったな。あれが最初で最後だけど、あの時は若かったなと思う(笑)。ロシアでは、観光っぽいことじゃなくて日常のロシアを体験してみたかったから、それを現地で出会った人たちに伝えて色々と教えてもらって、映画を観に行ったり、ちょうどハロウィンの時期で夜のクラブ行ったり、現地の生活や遊びを体験できてすごい面白かった!
ーーそもそも何でロシアを横断しようと思ったの?
高校生の時から本気で宇宙飛行士になりたいと思っていて、大学に入学した時に「NASAがもう有人ロケットを打ち上げない」と聞いてか、「じゃあロシアのソユーズしかない」と思って。それで大学に入ってからは、理系だけどロシア語もちょっと勉強してたね。実は大学院もロシアの宇宙関係の大学院に合格してたんだよね。ロシア語は全然ペラペラじゃなくて大学院なんて行けないぐらいの語学レベルだったけど、受かってから勉強すればいいやぐらいの気持ちでSkype面接を受けたら、意外にも受かっちゃって(笑)。学費も免除で少額だけどボーナスも貰えたんだけど、その頃にはもうチーズの輸入事業を始めていて今はそっちの方がやりたかったし、結婚しようと思ってたから、結局行かなかったんだけどね。
ーーそのロシア旅行中に面白い出来事とかハプニングはあった?
シベリア鉄道って寝台列車のように車両ごとに部屋みたいになっていて、一部屋が4人の相部屋形式だったんだけど、「アジアっぽい顔の女の子がいる」って車内で話題になって、他の車両のロシア人が見に来たりしてて。他の車両の人が「飲もうぜ、飲もうぜ!」といった感じで集まってくるのが乗車中ずっと続いて、ほぼ毎日ビールとウォッカをタダで分けてもらって飲んでた。その中でも、金歯のロシアのマフィアみたいな2人組はかなり危なかった(笑)。「ジェーニギ(ロシア語で「お金」のこと)」と言われてお金で買われそうになったり、私と一緒に行った友達はかなりクレイジーで、誘われると簡単について行っちゃったりするんだけど、私ともう一人のロシア人が部屋を出た時に、金歯のロシア人が鍵を閉めちゃって、部屋の中に友達とロシア人2人きりの状態になっちゃって。それで係員の人に頼んでやっとドアが開いた時には案の定ロシア人がズボン下ろしてて(笑)。ギリギリセーフだったから良かったけどね。でもそんな恐ろしい状況でも、その友達は普通に笑ってた!そんな危険なことも何回かあったけど、せっかくだからNoとか言わずに色々なことを経験しようと思って旅行してたかな。
ーー両親にはこの旅行やハプニングの話はしてるの?かなり心配されるんじゃない?
全部話してるよ。最初の頃はめっちゃ心配されて「絶対に誰かと複数人で行きなさい」と言われたけど、今は全然一人でも行かせてもらえるかな。たぶん慣れだと思うんだよね。お母さんが厳しくて海外旅行なかなか行かせてくれないって女の子は多いかもしれないけど、とりあえず1回行って、そのときの楽しいエピソードとかを話しているうちに、親の感覚もだんだん鈍ってきて、普通に行かせてくれるようになると思う。私の親もそうだったし。そういえば、この旅行中にはハプニングも含めて貴重な体験をたくさんしたから、本にしたら面白いかもと思って、「21才じゃぽんガールのロシア横断記」っていう本も書いてるよ!
ーーその本についてもう少し詳しく教えてください!
このロシアの旅行記はAmazonのKindle版で出していて、最初はブログぐらいの気持ちで書いていたから無料でもいいやぐらいの気持ちで100円とかで販売してたんだけど、色々試してみたら、500円ぐらいまでは値上げしても売れる冊数は変わらないんだよね。100円でも500円でも買ってくれるのは物好きな人だけだから、多少の値上げは影響しないっぽくて(笑)。今でも月に2,3冊は売れているかな。実は、今もう一冊出版しようとしてるんだよね。今オーガニック海藻っていうものを日本に輸入する事業を始めてるんだけど、日本にオーガニック海藻の情報って全然ないんだよね。だから、私自身が海藻を売る際にも参考にさせてもらってるアイルランドの女医さんが書いたオーガニック海藻の辞典のような本を日本語に翻訳させてもらって出版する予定で、最近は家ではずっと翻訳してる(笑)。いくつか出版社とコネクションがあるから、そこに営業をかけて出してもらえるようにするつもりで、出版会社からOKが出なかったら自費で出そうかなと。今は出版社もいいネタを待っているから、いけるんじゃないかなって思ってる。製本って実は1冊4,000円ぐらいでオーダーすると5分ぐらいでできちゃうんだよね。だから、欲しい人にだけその方法で印刷してもいいかなと思っているけど、流通に乗せるためにもやっぱり営業はトライするかな。
ーー1人で海外行ったり翻訳したりしてるってことは、もう英語は普通に話せるの?留学とかしてた?
英語は結構話せるよ。「留学行ってたでしょ」とかよく言われるけど、行っていないんだよね。でも、やっぱり外国人と話さないといくら勉強しても話せるようにならないなとは思ってたから、留学生に日本の文化を紹介したり、観光地に連れて行ったり、寮で日本の料理を作ったりする団体の代表をしてた時期があった。実は申請すれば皇居の中とかも無料で入れたりするんだよね。まあこの活動をやってたのは、私自身が東京の観光地を色々見たかったっていうのもあるんだけど(笑)。それをやっているうちに、英語は結構得意になったかな。これは留学行った人がよく言うと思うんだけど、外国の人は自分の国のことをしっかり語れるけど、やっぱり日本人は全然語れないんだよね。私も最初は全然語れなくて、それはこの活動を通して痛感したかな。
ーー海外旅行や留学生との交流が、今やってるチーズと海藻の輸入ビジネスにもつながってるのかな?
そうだね。大学で仲良くなったオランダ人の留学生がいるんだけど、その子と一緒にオランダに遊びに行った時に、両親が経営する牧場を案内してもらったんだよね。ウサギとかシカとか、自然があふれているところだった。今日本に輸入しているチーズは、その牧場で作られた”オーガニック”のチーズなのね。野菜のオーガニックだと、農薬を使わずに育てた、とか大体みんな想像がつくと思うんだけど、チーズのオーガニックってどういうことか分かる?
ーーいや、チーズのオーガニックは聞いたことないね。添加物を入れないとか・・・?
もちろん製造過程中に添加物は入れない。それに加えて、チーズの元になるヤギ1匹に対して2m×2m以上のスペースを確保しなければいけない、抗生物質は一生に2回まで、除草剤は撒かない、草だけじゃなくて20%以上はタンパク質の食事を与える、などいくつかの厳しい条件をクリアしているミルクで作ったチーズだけがオーガニック認証を受けられるんだよね。私が行った牧場のチーズはオランダとヨーロッパからその認証を受けていて、チーズの味はもちろんだけど、このオーガニックの発想に感銘を受けて。こういう考え方を日本にも伝えたいと思ったのが輸入に踏み切った理由かな。実際にオーガニックのチーズを取り扱っている輸入業者は日本ではほとんどないんだよね。あと、日本の”オーガニック”は、健康のことを考えた”自分のための”オーガニックが主流になってるけど、ヨーロッパでは、例えば小さい男の子が「僕がこのオーガニックシャンプーを使っているのは、これが土に還ったときに地球が汚れないからだよ。」って言うのね。そういった「環境のため」「動物のため」っていう考え方ができていて、その教育がすごいなと感じて、それも全部日本に取り入れたいと思ってる。滝川クリステルさんも取り組んでるんだけど、最近のヨーロッパでは動物を大切にしようっていう動きが活発なんだよね。だから、単純に商品を輸入するだけじゃなくて、その文化や発想を日本にも届けたいな。
ーーそのオランダの牧場から輸入したチーズは、どこで販売してるの?
都内では大使館周りの外国人向けのスーパーでの取り扱いが多いかな。普通の日本のスーパーだと、どうしても高いって言われたり、ヤギのチーズは少しクセがあるから大衆受けはしにくくて、一般向けのスーパーより高級スーパーになっちゃうね。あとはワインバーや料理屋さんに直接卸したり。チーズ業界で難しいなと感じたのが、フランスやイタリア料理店ではオランダのチーズはなかなか取り扱ってくれないっていうところ。コックさんの自国愛がかなり強いから、美味しいとは言ってくれるけれど、他国のチーズは入れてくれないところが多くて。とはいっても、オランダは鎖国の時代から日本とつながりがあるから、オランダ料理店も少なからずあったりして、そこで取り扱ってもらったりとか。あと、販売だけじゃなくて文化も届けたいっていう想いがあるから、セミナーを開いたり、チーズ界やワイン界の色んな人とセッションしたりもしてるよ。
ーー取り扱い店舗の開拓は、全部一人で営業に回ってるの? そうだね。最初はサンプルを持って行ってひたすら飛び込み営業(笑)。最初の頃の営業は実績もないし結構大変だったけど、徐々にコネクションができてきて紹介も増えてきたし、一度取り扱ってくれてファンになってもらえれば取引は結構長く続くかな。あとは経営者の方で個人で買ってくれる人が、意外とまとまった量を買ってくれたりするね。
ーー加納さんは企業に就職するっていう選択肢は考えなかったの?
一切考えなかったね。就活のイベントも一度も行ったことないから、何してるのかいまいち良く分かってない(笑)。元々はさっき言ったロシアの大学院に行こうと思っていたんだけど、チーズ事業に出会って「あ、こっちに行こう」ってパッと決めた感じかな。チーズ事業に出会ってなかったとしても、就活はせずに、何か面白いことをやっている人の下で働かせてもらえばいいやと思ってた。
ーーじゃあ一流の大企業に就職する憧れも一切ないんだ?
私の通っていた慶應大学だったら、周りの子は大手商社や一流企業に行くから、それが当たり前ですごいことじゃないって思えてきて。「〇〇商事と✕✕銀行の内定もらった」みたいな人は結構たくさんいるし、そういう大企業から内定もらうことは別に誰でもできるし面白くないなって思っちゃったんだよね。やっぱり面白いことをしたいし、就職することで自分の時間が取られるのが一番嫌だった。日本は世界の中でも労働時間が長いことで有名だけど、ロシアはそれとは正反対で、一番休みが長い国なのね。そのロシアに何度か行ってたこともあって、大企業で長時間労働とかしてたら負けだな、みたいな(笑)。あとは新しいことをやりたいっていう欲があるかな。今やっている輸入事業も、別に自分でやらなくても食品系の商社に入ればできることなんだけど、オーガニックのチーズが日本にほとんどなくて、新しいことだったからやりたいって感じたから力を注げていると思う。やっぱり何するにしても新鮮さがないと面白くないよね。
ーー大半の学生はやりたいことがあって起業したいと思ってても結局就職してしまうのが現実だよね。一方で、加納さんは行動に移して実際に自分でビジネスをやっているよね。その違いはどこにあると思う?
私もやりたいなと思ってすぐやるわけじゃなくて、ちゃんとお金はどれくらい入るかなどは計算したし、見通しは考えたよ。だから計画を考えることは大事だし必要だと思う。でも、落ちることを恐れちゃいけないよね。例えば、ホームレス経験がある人って意外といて、私の友達で今は歯科医をやっていてオランダ人と結婚した男の子がいるんだけど、その人も昔ホームレス経験があるんだよね。でも彼は今では幸せに暮らしてる。芸能人で言えば、オネエタレントのIVANさんはパリコレに出るまで上り詰めたけれど、色々あって一回ホームレスになったって最近テレビでやってたし。私が今やっている事業は全然大きくはないけど、こうなるっていう見通しと希望があるからやっていて、私は希望が少しでも見い出せたらチャレンジするかな。名言に「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」っていう言葉があるように、自分の想像で希望が見出せたなら、ためらわずにGoすべきだと思ってる。それに私みたいに適当な人間でも一応ビジネスとして形になってるんだから、学生のみなさんもきっと挑戦すれば実現できるんじゃないかと思います。
ーーじゃあ最後に、今後のビジョン、実現したいことを教えてください!
チーズ事業に関しては、実は仕入先の牧場の後継者が見つかっていなくて、もしかしたらこれはあと少しで終わりを迎えて、幻のチーズになるかもしれない。ただ、輸入事業で言えば、オーガニック海藻はこれから本格的に輸入に動き出していくよ。あと、実は主人の両親が桃の農家をやっていて、最近はそれの手伝いもしてる。桃をオーガニックにするのってすごく難しくて普通は農薬をバンバンかけるものなんだけど、主人の両親がすごく頑張っていて、現状では農薬を8割減ぐらいにしてて。オーガニックの桃はヨーロッパの気候では成功例があるんだけど、日本ではまだ実現していないんだよね。だから、私の大学の専攻が化学系っていうのもあるし、その知識も活かしながら実験を繰り返して、オーガニックの桃を実現したいなとも思ってる。この桃に関してはまだ明確にやるって定まっているわけじゃないけど、今後も「食」を軸にして活動していくのはブレないところかな。
ーーちなみに、宇宙飛行士になるという夢はまだ諦めてない?
もちろん!今はまだ実際に行動には移せてないけど永遠の憧れやね。そのうち再チャレンジしようと思ってるし、いつかは地球を飛び出すよ(笑)。