ーー石原さんの自己紹介からお願いします。
青山学院大学の経営学部経営学科4年です。私は1年生の時からウェブメディアが好きだったので、暇さえあればずっとインターネットをいじっていたり、本と雑誌が好きで1年生の冬からマガジンハウスの雑誌『anan(アンアン)』編集部でアルバイトをしていました。また、それと並行して2年生の12月からU-NOTEというウェブメディアを運営する会社でインターンを始めました。U-NOTEにお世話になったのは10ヵ月間で、そのあと3ヶ月ほど、別のウェブマガジンを運営する会社でインターンをしていました。その頃から、とあるご縁でずっと夢だった雑誌での執筆も少しずつできるようになってきたりして、今思い出してもこの時期はとても楽しかったです。書いていたのはメンズファッション誌やグルメ誌がメインで、たまに女性誌や不定期に発行する小冊子などのお手伝いもちらほら。上場IT企業の新卒採用ページのライティングもさせていただいたこともありましたね。現在は雑誌はやや減って、日本テレビ・SENSORSなどのウェブメディアを中心に書いています。
幼稚園くらいの物心ついた時から、吃音という言語障害(?)を持っていたんです。それで人前でしゃべるのが苦手で、小さいころからずっと本を読んでいたんです。両親いわく、私の姿が見えなくなって気づくと部屋の隅っこで本を読んでいたらしくて、それだけ昔から本は身近な存在でした。書き手になりたいと思ったのは大学に入ってからですが、文章は幼稚園から小・中・高とずっと好きでしたね。
ーー思ったことを表現できないことが書く仕事への興味につながったのですか?
そうですね。例えばプレゼンがすごく上手な人ってたくさんいますよね。彼らのように自分の言葉で考えや思っていることを上手く伝えられている人はたくさんいますが、僕は彼らと同じ方法でやってもうまくいかないと思ったんです。だから、自分は言葉を文章に落としこんで書いて、それを読んでもらって考えや思いを伝えた方がいいなと思いました。それが、書く仕事に興味を持った最初の動機です。
ーー大学に入ってから仕事をされたそうですが、『anan』編集部ではどんなことをされていましたか?
編集部では特別な何かをしていたわけではなく、普通のアルバイトでした。内容としては、社員さんがやらないことを全部やるという感じです。例えばゴミを捨てたり、コピーをとったり、郵便物を分けたり、買い物に行ったりなどなど。たまに撮影現場にいったりすると、変な話、芸能人とかにもたまに会えるわけですよ。当時は田舎から出てきたどミーハーだったので、そんな華やかな世界にどんどん惹かれていきました。コピーにせよ買い物にせよ自分が雑誌作りに関わっていると思うとすごく楽しくなったし、雑誌はこんなふうに作られていくんだということも見えたので色々勉強にもなりました。
1年生の頃からずっとインターネットに触れてきていましたし、雑誌の編集部で雑誌作りの現場も知っているし実際に書き手として紙媒体に執筆したこともありました。どれも中途半端かもしれませんが、紙媒体とウェブの両方の良い部分・悪い部分をわかっているつもりなんです。紙かウェブかの議論は既にナンセンスな話題かも知れませんが、自分の身をどちらに置くのかというのは自分の中では非常に重要なトピックスで。人から聞いたり、自分で経験してきたことをもとにものすごく迷って考えた結果、時代的にも、空気的にもウェブのほうが肌にあっているかなと思ったので、ファーストキャリアはウェブに身を置こうと決めました。
ーーU-NOTEさんではどんな業務をされていたんですか?
記事のライティングと編集作業です。自分でこじんまりとブログを書いていたので、書くことに関しては自信はあったのですがただの備忘録に過ぎず、相手に情報を伝えるという観点で書いたことがなかったので、いかに読み手の視点に立って書くことができるかというのが難しかったです。けれど、意欲的になればなるほど仕事の裁量は広がってやれることも多くなってきてすごく楽しく成長もできたので、長期のインターンとして一番最初にお世話になったのがU-NOTEで本当に良かったと思っています。
ーーSENSORSさんの仕事はどんなことをされているのですか?
日本テレビの番組で、土曜日深夜に放送されているSENSORSという番組があるのですが、そこのウェブメディアで記事を書かせて頂いています。エンターテイメント×テクノロジーをメインテーマとして扱っているメディアで、そこでは編集会議で上がってきた企画をもとに取材へ行ったり、自分でやりたい企画を提案して通ればそれをそのまま記事にすることもできます。ライゾマティクスの真鍋大度さんやサカナクションの山口一郎さんなど、個人的にずっと好きだった業界を代表するようなクリエイターの方々に直接インタビューをしたことはすごく良い経験になりましたし、SENSORSでの仕事を通じて将来やりたいことも少し明確になりました。学生中にこのような素晴らしいメディアに関わらせてもらって、本当に感謝しています。
ーーリアルとWEBを経験して、以前と現在でどのように価値観が変わりましたか?
メディアに関わり始めたばかりのときは、ライターとして書くことを専門としてやっていきたいと思っていました。でも仕事やプライベートで色んなメディア関係者に会う過程で、ライターではなく、編集者になりたいと思うようになりました。編集者というと文章の構成をしたり企画を立てたりということを想像すると思いますが、僕の中の編集者はもっと広義なものなんです。それは、今まで結びつかなかったもの同士を繋ぎあわせて新しい価値を生み出す人、というもの。例えば、最近話題になっているメディアアートという分野。メディアアートは、テクノロジーとアートが上手く結びついたものですよね。アートで何かを表現する際にテクノロジーを活用することによって、その表現の幅をぐんと広げて新しい価値をどんどん生み出し続けている。それって、立派な編集の仕事だと思うんです。
これからの時代の優秀な編集者は、特にウェブでは、既存の価値同士を結びつけて新しい価値を世の中に生み出すという雑誌的な編集能力が求められていきます。確実に紙からウェブへの時代が来ているのにも関わらずその人材が足りていない、つまり自分がその人材になればこれからのメディアのあり方を担っていけるのではないかと考えています。そうなればすごく面白いなあと思いますね。
『anan』でのアルバイトやライターとして雑誌に関わっている中で、雑誌編集をどうしてもしたいという気持ちが芽生え、ずっと雑誌の編集者になりたいと思っていました。すこし前後しますが、雑誌編集者はとても狭き門なので、ライターの仕事を通じて編集部の人たちと関わりを持っていたほうがいいのではないかと思ってライターをしていた時期もあったんですね。
けれど、色んな先輩の編集者さんやライターさんの話を聞く中で、なにか違和感を感じたんです。「雑誌で文章を書きたい!」という想いで初めて関わった雑誌は男性ファッション誌だったのですが、そこにいる先輩方は「ファッションがとにかく超好き」っていう人達ばっかりだったんです。ライターとして活躍してる人たちは、まずその分野にどれだけ精通しているかが求められていたので、ここは自分の分野ではないなと感じました。好きこそものの上手なれという言葉の通り、ファッションの知識は勉強すればある程度身に付くとは思うのですが、やはりある程度、でしかなくて好きの度合いが全く違う。ずっとファッションが好きで、ファッション業界で生きている人たちには敵うはずがないと思いました。
あと、お酒がめちゃめちゃ飲めたり、話がすごく面白かったりなどの人物面がすごく重視される世界だったので、なにか不毛な戦いに足を踏み入れるような感覚だったんです。もちろんそういう部分は大切なのですが、そこで踏ん張りきれなかったということはその業界にそこまで熱量がなかったのかな、合っていなかったのかなということだと思います。
ーーそれでWEBの業界でやっていこうと思ったのですか?
周知の通り、出版業界はいま全体的にすごく厳しい状況下にあります。規模も小さくなっているし、社員の給与も年々下がり続けている。そんな中で、ファーストキャリアとして出版社を選ぶのはどうかなという思いがあったんです。これから先、出版物の編集は伝統芸能のようなものに昇華していく気がしていて、その業界のナレッジやスキルがその中でしか通用しない、いわゆるガラパゴス化するんじゃないかなと。いま雑誌の編集者として働くと、雑誌の編集しかできなくなるんじゃないかという危機感がありました。私は雑誌や本が大好きなので出版社は大好きですが、出版社の社内状況や業界の趨勢的など色々見聞きして考えた結果、今の状況では自分が出版社の中に入っても変えることは難しいだろうという結論に至りました。じゃあどうするか、中から変えられないなら外から変えようじゃないかということで、IT企業でメディアを持っているところを探し始めたんです。
ーーどういう背景でDeNAに興味を持たれたのですか?
実はその年のDeNAのサマーインターンで、最終で落ちていたんですね。自分的には手応えはあったのでナニクソという気持ちがあり、本選考では絶対通ってやるというのがまずはじめの動機でした。(笑) けどDeNAのエントリーが始まる1ヶ月ほど前に、DeNAがかなりの高額でMERYとiemoを買収したんです。そんなに大きい金額でキュレーションメディアを買ってどうするんだと思う一方、キュレーションプラットフォーム構想に純粋に興味を持ちました。すごくタイミングが良くて、すぐにエントリーをしました。
ーーDeNAの内定をとった後、ヤフーなどの大手IT企業は受けなかったのですか?
受けなかったです。DeNAの志望動機は、あくまでもキュレーションプラットフォーム事業に関わることだったので。社員の方と面談をしていて、「入社後の配属はもしかしたらゲームに行くかもしれないし、営業になる可能性もゼロじゃない。行きたいところに行けない可能性があるけど、それでいいの?」と言われました。それを言われた時には「嫌です。」ときっぱりいったのですが(笑)、その後色々な社員をアサインされて話すなかで、どの社員の方もすごく尊敬できる方ばかりで、かっこ良く映ったんです。
最初はキュレーション事業にしか興味がなかったのですが、選考のプロセスで次第に「もしかするとゲームや営業になるかもしれないけど、この人達の中で揉まれて鍛えられればものすごく成長できるんじゃないか。」と思うようになったんです。DeNAはモバゲーのイメージが強くゲーム会社だと思われがちですが、遺伝子や自動車、動画配信やキュレーションメディアなど事業領域も幅広い。私の目指している編集者というのは、色々な引き出しや幅を持っていないとできないので、ビジネス的な観点からすごく成長できるんじゃないかと思ったのが決め手となり、入社を決めました。
ーーチャンスがたくさんありそうなのがDeNAだということですね。
はい。早い段階である分野の専門家になる必要はないと考えています。例えば30歳くらいまで色々な事業を経験して、そこから専門を絞っていく方法のほうが加速度的な伸びはあるのかなあって。そこそこ良い結果を残すのは学生中まででよくて、社会人になってもずっと同じ業界に身をおいて変に慣れてしまうより、新しい環境で一度ぼろぼろになる経験をしないと、なんとなく仕事をこなしているだけで理想の自分に近づくことはできないし、パッとしないまま人生が終わっちゃう気がして。
自分なんかが偉そうに言える立場ではないのを承知で言いますが、インターンにせよ就活にせよ「周りがやってるからしよう」というのは一番無駄です。自分の意思が無い判断はすごく時間の無駄だし、往々にして失敗します。問題なのはどこにゴールを置くかなんじゃないなかと。全てを就活に結びつけて考えるのをやめて、今その瞬間にやりたいことを徹底してやり抜くべき。遊ぶならぶっ倒れるまで遊び抜けばいいし、ファッションが好きなら全財産使い果たすくらいファッションに没頭すべき。その時にしたいことを勇気を持ってやり抜くということが重要だと思います。自分の周りを見ても、就活で自分の行きたかったところに行っている人は、やっぱりやりたかったことを馬鹿みたいに頑張ってた人です。ましてや今は就職だけが選択肢じゃない時代。就職しなくても、自分のやりたいことをやって活躍している友人達はすごく格好いいですよ。
大学一年次よりスタートアップに興味を持ちアプリ開発/ベンチャーでのインターンシップを経験。 現在、学生の視野を広げるco-mediaとインターンシップから築く新しい就職の形InfrAを運営する株式会社Traimmuの代表。 サッカー観戦とジム通いが趣味。